WRC2019/08/03

ラトバラが母国戦リード、トップ4が2.6秒差の接戦

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 2019年世界ラリー選手権(WRC)第9戦ラリー・フィンランドは金曜日のレグ1を終えて、トヨタGAZOOレーシングWRTのヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)が6つのベストタイムを奪って首位に立っているが、トップの4台がわずか2.6秒差にひしめく大接戦となっている。

 木曜夕方にユヴァスキュラ市街地で行われたハルユ・ステージで興奮のなかで開幕したラリー・フィンランドは、金曜日から本格的なフォレスト・ステージへ戦いの舞台を移す。オープニングステージのSS2オイッティラ(19.34km)でベストタイムを奪ったのはラトバラ。8番手というスタートポジションにも恵まれて、母国ラウンドで素晴らしいスタートを切ることになった。しかし、それ以上に目を惹いたのは、一番手ポジションでコースに臨んだ選手権リーダーのオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)の速さだ。

 いつにも増してステージの表層にはやわらかいグラベルがレイヤーとなって覆っており、2番手のポジションでスタートしたセバスチャン・オジエ(シトロエンC3 WRC)が3.9秒差の5位と出遅れ、3番手からスタートしたティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)に至っては初日のリードを守るどころか10.2秒遅れの9位という苦しいスタートとなっていたにもかかわらず、タナクは見事にここで首位に立つことになる。

 そして、0.4秒差の2位にはクリス・ミーク(トヨタ・ヤリスWRC)、0.8秒差の3位にはラトバラが続き、僅差ではあるものの早くもトヨタが1-2-3態勢を築くことになるが、このステージでのトップ4のタイムはわずか0.9秒差となっており、激しいバトルとなる初日を予感させるかのようなスタートとなった。

 続くSS3モクシ(20.04km)では今度はミークがベストタイム、ここでもトヨタ勢がステージのトップ3を占め、2番手タイムのタナクが首位をキープしてみせる。タナクは易々とこの驚異的なペースをみせているかにも見えるが、コースオープナーはそれほど簡単ではないと認めている。「難しいよ、大変な仕事だ。一生懸命努力しているが、それほど簡単ではない。僕たちは本当に限界ギリギリなんだ」

 それでもタナクはSS5アッサマキ(12.33km)では初のベストタイムを刻んで首位をキープしてみせた。2位ミークと3位ラトバラがともに左リヤタイヤをスローパンクに見舞われてヒヤリとするもポジションをキープ、ミークはタナクから4.2秒差の2位、ラトバラは5.9秒差の3位に続いており、0.1秒差の4位に連続して3番手タイムを並べたエサペッカ・ラッピ(シトロエンC3 WRC)が迫っている。

 続くSS6アーネコスキ(7.80km)ではラトバラがこの日3つめのベストタイム、ミークを抜いて2位に浮上したが、タナクは5.4秒をリードして朝のループを終えることになった。「もちろんこの結果は期待してなかったよ、スタート順が最初だからね。かなりのルースグラベルがあって滑りやすかったが、幸いなことに、僕たちは最初から良いフィーリングがあった。もちろんいつも限界だったけどね!」

 2位のラトバラの0.4秒後方にはミーク、トヨタはトップ3をキープするも1.1秒後方にはラッピが続き、さらにスポットでヒュンダイから参戦したクレイグ・ブリーン(ヒュンダイi20クーペWRC)が8カ月ぶりのWRC復帰だったにもかかわらず3ステージ連続で2番手タイムを叩き出してラッピの後方2.2秒に迫っている。ブリーンはステージエンドで「どんどんいい走りになっていくよ。近づいているね。金曜日の朝にフィンランドの森林で、おそらく僕が今までに運転した中で最高のマシンだよ」と語り、本当にうれしそうな笑顔をみせている。

 いっぽう、朝のループを6位で終えたオジエは「いいループだった」としながらも、いつもより柔らかいグラベルが表面を覆ったステージを一番手で走りながらも首位を守ったタナクの速さについては「信じられないペースだ」と首を横に振る。午後になっていっそう路面がクリーンになったときにどれだけ食らいついて行けるのか想像したくないことだが、「あきらめたわけではない」と自らを奮い立たすよう語っていた。

 だが、彼の予想とは裏腹に午後のループになるとタナクのスピードは鈍りはじめる。SS7モクシを思ったほど伸びないタイムでフィニッシュした彼は、「(コンディションが)悪くなっている。非常に悪いラインがあり、そのラインから外れるのが難しい」とステージエンドで訴える。1回目の走行のあと、後続の2輪駆動のマシンが走ったため、ストレートですらWR カーとはトレッド巾と異なるラインが生まれ、タイトなターンではいっそう深く刻まれたわだちに進撃を阻まれてしまう。

 このコンディションのなかでタイムを伸ばしたのは後方からスタートしているドライバーたちだ。ラトバラがベストタイム、6番手タイムに終わったタナクを0.4秒差で抜いてトップに立つことになった。さらにタナクの後方0.1秒差には2番手タイムのミークが迫り、ラッピもミークと同タイムで1.1秒後方の4位にぴたりと続いている。

 またラッピの2.2秒後方の5位につけていたブリーンはボンネットが外れかかる問題で6.3秒を失い、順位こそ5位をキープしているが、ラッピに8.4秒差をつけられてしまった。

 SS8ウッリアでもわだちに苦しむタナクに後続のドライバーたちが襲いかかる。4位につけていたラッピが2番手タイム、3位のミークも4番手タイムを叩きだし、なんと二人はタナクに同タイムで追いつくことになり、首位ラトバラから0.6秒差の2位に3人が並ぶことになる。

 なかでも初日の9位から追い上げてきたラッピは「午後のラフなコンディションのためにセットアップを見直してきたが、それがうまく作用したので自信をもって走れている」と語っており、SS9アッサマキではさらに切れた走りをみせることになる。

 ラッピは、狭いコースの路肩ぎりぎりに迫るバンクにフェンダーをすりつけながら高速のローラーコースターを駆け抜け、バンプに乗り上げて2輪走行になりながらミークを0.9秒上回り、さらにタナクを1.1秒上回って単独2位へと浮上、この日の朝から続いてきたトヨタ1-2-3の牙城をついに切り崩してみせた。
 
 それでもこのSS9ではこの日、5つめのベストタイムを奪ったラトバラがリードを1.1秒に広げて首位をキープ、4位に落ちたとはいえタナクもまだ首位から2.1秒遅れにしかすぎない。

 SS10アーネコスキではラトバラとともにベストタイムを奪ったミークがラッピを0.5秒差でかわして2位へと浮上したが、相変わらず4位のタナクまで3.1秒差というデッドヒートだ。このステージでもトップ7が1秒差にひしめいているほど速さは拮抗している。

 ユヴァスキュラに帰ってきたラリーカーはこの日最後のステージとしてふたたびハルユ・ステージ(2.31km)をラトバラが首位をキープも、彼はシケインでフロントのカナードを破損したためにわずかにタイムをロス、後続との差はいっそう縮まることになった。2位のミークは首位から1.2秒差、さらに1.2秒差で3位のラッピ、0.2秒差で4位のタナクが続き、トップ4はわずか2.6秒差にひしめいている。

「ここでの僕のタイムには少しがっかりしているが、良い一日だった。ここはスピードにコミットしてマキシマムでコースに挑まなければならない。それでも、これほど接戦で明日に続くことは驚くべきことだ。わかると思うけど、全員がマキシマムの一日だった」とラトバラは語っている。

 首位から14.3秒遅れの5位には久しぶりのWRCで印象的な走りをみせてヒュンダイ勢のトップにつけたブリーンが続き、SS8でこの日初めてトヨタ勢を破ってベストタイムを奪ったアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)がオジエを抜いてブリーンに0.4秒差に迫ってきた。オジエは初日を7位で終えることになったが、首位のラトバラとはそれでも15.3秒差にすぎない。

 ハルユの市街地ステージで昨夜に続いてふたたびトップタイムを奪ったヌーヴィルは首位から23.9秒差の8位。彼は新しいダンパーのセッティングに苦労したことを認めたが、明日にむけてポジティブなコメントを残している。「さまざまなことを試してみた。まだ完璧に決ってはいないが、まだラリーは先が長い。タイムはゆっくりと良くなってきているよ」

 テーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)はエアロを破損したことの影響もあって9位に沈んでおり、エルフィン・エヴァンスの代役としてフォード・フィエスタWRCでの2戦目を迎えたガス・グリーンスミス(フォード・フィエスタWRC)はSS5アッサマキで大きなスピンに見舞われながらも10位でこの日を終えている。