WRC2019/10/26

ローブがスペイン初日をリード、ヒュンダイ1-2-3

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 2019年世界ラリー選手権(WRC)第13戦ラリー・デ・エスパーニャのレグ1が金曜日に行われ、ディフェンディングウィナーのセバスチャン・ローブ(ヒュンダイi20クーペWRC)がラリーをリード、チームメイトのティエリー・ヌーヴィルが1.7秒差、ダニエル・ソルドが7.6秒差の3位で続き、ヒュンダイ勢が1-2-3態勢を築くことになった。

 ミックスサーフェスで行われる最後のスペイン、初日の金曜日はタラゴーナ地域の山岳地帯のグラベルステージが舞台となる。ガンデーザ(7.00km)、オルタ〜ボット(19.00km)、ラ・ファタレリャ〜ヴィラルバ(38.85km)の3ステージをポルト・アヴェンツーラのサービスをはさんで2回ループする一日だ。

 オープニングSSのガンデーザは、火曜日の激しい雷雨の影響でまだ日陰には湿ってマディになったところがあるとはいえ、陽が当たる路面は急速に乾きはじめている。一番手でスタートしたタナクがルースな路面に手を焼きながら5番手タイムでスタートするなか、セバスチャン・オジエ(シトロエンC3 WRC)がトップタイムで駆け抜けてラリーをリードすることになった。これに地元スペイン出身のソルドが0.7秒差の2番手、ダスティなステージでリヤがスライドしたと不満を述べながらもヌーヴィルがオジエから1秒遅れの3番手タイムで続く。

 選手権リーダーのタナクから28ポイントの差でこのスペインを迎えているオジエにとって、タナクの後塵を拝したままフィニッシュすればその時点で選手権はエンディングを迎えることになる。7度目のタイトルをたぐり寄せるためにも優勝がほしいところだが、なんと彼はSS2オルタ〜ボットのスタート直後からペースダウン、ステージ中盤から明らかになにか深刻なトラブルを抱えたかのようにタイムをロスしてしまう。44.6秒を失ってステージをフィニッシュしたオジエは悲壮な笑みをみせ、「パワーステアリングだ。すぐに行ってチェックしなければ」と言い残して走り去る。

 オジエはロードセクションでチームと電話で話しながら修理を試みるが、油圧系に問題があるためお手上げだ。続くSS3ラ・ファタレリャ〜ヴィラルバはラリー最長の38.85km。オジエはパワーステアリングを失っただけでなくパドルシフトも使えず、やがてデファレンシャルにも問題が生じてしまい、重いステアリングを必死にプッシュし、バンプでのキックバックに叫び声を上げて耐えながらゴールをめざす。

 30分にわたって壮絶な格闘を続けたオジエは、このステージだけで取り返しがつかない2分51秒をロス、タフな試練から解放されたことに安堵したかのようにステージエンドで大きなため息をつくことになった。手のひらにできた巨大なみずぶくれはすでに破れて血がにじんでおり、彼は「パワーステアリングを失ってキックバックに耐えなければならなかった。目標は最後まで戦うことだったし、このように失うのは残念だが、いまはほぼ終わったも同然だと言えるよ。これ以上、僕に何ができるだろうか」と、選手権のチャンスが手のひらから逃げてしまったことを悟っているように語った。

 オジエが遅れたSS2でベストタイムを奪ったヌーヴィルが首位に浮上するも、ミディアムタイヤを選択した彼はかなり路面がドライになったSS3ではタイヤの摩耗に苦しみわずかにペースダウン、終盤で左リヤタイヤのパンクに見舞われながらも2番手タイムを奪ったチームメイトのソルドが、わずか1秒差ながらも首位へと浮上、ヒュンダイ勢が1-2体制で朝のループを終えることになった。

「道路の真ん中にあった石をリヤで踏んでしまったんだ。タイヤをリムから外さないように走らなければならなかったが、ゴールまでに5kmしかなかったので幸運だったよ。 僕らはこのあともうまく走りきって、チームのためにポイントをもち帰ることが重要になる」と、ソルドは明るい表情で素晴らしい朝をふり返った。

 首位のソルドから1.8秒差の3位にはタナクが続いている。選手権のライバルはトラブルを抱えてしまったが、タナクはいつものように冷静な表情で自分の仕事をこなすだけだと語っている。「朝のステージはコンディションも難しかった。セブは技術的な問題があったが、ティエリーとの戦いは続く。まだ3ステージしか走ってないし、今日もあと3ステージが残っている。このようなことは他の誰にも起こらないとは言えないので、僕はいつものように仕事を続けるだけだ」

 タナクから3.4秒差の4位にはSS2でスピンに見舞われながらもエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)、5位にはオープニングSSのバンプでリヤのグリップを失ってオフしそうになったクリス・ミーク(トヨタ・ヤリスWRC)が続き、ただ一人朝のループにむけてハード5本をチョイスしたセバスチャン・ローブ(ヒュンダイi20クーペWRC)がクリーンな路面となったSS3のベストタイムで9位から一気に6位まで浮上してきた。また、ヤリスWRCでの2戦目のラリーを迎えたトヨタGAZOOレーシング・ラリーチャレンジプログラムの勝田貴元も10番手で続いている。

 デイサービスの時点では気温も23度まで上昇、全ドライバーがハード5本をチョイスして午後のループにむかうことになった。午後のステージでも速さをみせたのはヒュンダイ勢だ。SS4ガンデーザでは首位のソルドがこの日初のベストタイムを奪って2位につけるヌーヴィルとの差を4.2秒へと広げるが、いまや完全に乾き、クリーンになった路面を9番手というもっとも有利な走行ポジションで走るローブがミークを抜いて4位へと浮上、タナクの3秒差へとピタリと迫ってきた。

 タナクとしてもチームの選手権のためにもトップ3の牙城を守りたいところだが、スリッパリーなSS5オルタ〜ボットを走り終えたあと、「必死にプッシュしている。限界ギリギリまでプッシュしているので、これ以上はどうにもできない」と厳しい表情を浮かべることになる。

 ローブはここでこの日2つめとなるベストタイムを奪ってあっさりとタナクをパスして3位へと浮上、2番手タイムでリードを4.6秒差に広げたソルドを筆頭に、ヌーヴィル、ローブが続き、ヒュンダイ勢が1-2-3態勢を築くことになる。

 ローブはこの日の最後のステージとなるSS6ラ・ファタレリャ〜ヴィラルバでの連続してベストタイム、首位のソルドとヌーヴィルを抜いて1.7秒のギャップを築いて首位に立つことになった。彼は最後のステージでは限界を超えそうだったと認めた。

「本当に限界までプッシュした。グリップは非常に良く、スタートから最後まで攻めたよ。ヒュンダイの3台がトップ3を占めているのは信じられないほど素晴らしい。このラリーをスタートした時には信じられなかったことだ。もちろん、まだターマックの2日間が残っているので、何が起きるかは分からない」

 夕方の低い日射しに視界を遮られながらもヌーヴィルもまたペースが上がらなかったソルドを抜き、ソルドはローブに21秒もの差をつけられたことに首をひねりながらも二人のチームメイトにポジションを譲って7.6秒差の3位で初日を終えることになった。

 初日を1-2-3で終えたヒュンダイに対して、マニュファクチャラー選手権を争うトヨタにとってはきびしい展開となっている。最終ステージで2番手タイムを奪ったミークがタナクを抜いて4位、アンダーステアに苦しんでペースを上げられなかったヤリ-マティ・ラトバラが6位で続き、トヨタは4-5-6位で金曜日を終えることになった。

 Mスポーツ・フォード勢は、エアヴァンスが午後のループではアンダーステアに苦戦、最終ステージのミスファイアでポジションを1つ落として7位となっており、SS4で2番手タイムを奪ったテーム・スニネンが8位となっており、勝田も初参戦のスペインでSS6でパンクに見舞われながらも随所で光る走りをみせて9位で初日を終えている。

 完璧な準備をしたはずだったシトロエンにとって厳しい週末になってしまった。エサペッカ・ラッピ(シトロエンC3 WRC )は7位につけていたが、SS5でメカニカルトラブルのためにマシンをストップ。彼のC3はサービスに戻されてチェックをしたことろエンジンに問題があることが発覚、土曜日のリスタートを断念している。また、朝のループの油圧系トラブル28位まで転落したオジエは17位まで挽回したが、ポイント圏内でのフィニッシュは厳しい状況となっている。

 スペインはこの日の夜に設けられた75分間のサービスでグラベル仕様からターマック仕様へとセットアップを変更、明日からはターマックへと舞台を移して争われる。