WRC2019/04/01

勝利目前でエヴァンス不運、ヌーヴィルが劇的優勝

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 2019年FIA世界ラリー選手権(WRC)第4戦ツール・ド・コルスは、ヒュンダイ・モータースポーツのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)がスリリングな最終ステージのドラマのすえに今季初勝利を飾り、ドライバー選手権のトップに立つことになった。

 ラリー最終日は、オウ・デ・ジリア(31.85km)のあとパワーステージとして行われるカルヴィ(19.34km)のわずか2ステージ。ヌーヴィルは、土曜日のラリー最長ステージ、カステニッシア(47.18km)でエヴァンスに16秒という信じられない大差をつけて逆転に成功、4.5秒差をリードして最終日を迎えているが、前日までの二人のタイムはどちらが勝ってもおかしくないことを示しており、勝負の行方はまったく見えない状況だ。

 対決に注目が集まったオープニングSSのオウ・デ・ジリアでいきなり目が覚めるような速さをみせたのはエヴァンスだ。エヴァンスは最初のスプリットですでにヌーヴィルを7.6秒上回ってリーダーボードのトップに返り咲くことを大きく期待させる速さをみせるや、さらにミドルポイントではその差を12.5秒へと広げ、最終的にはヌーヴィルを16秒上回ってフィニッシュ、前夜のロングステージで失ったタイムを完全に帳消しにしてみせた。

 11.5秒差をつけてふたたびラリーをリードすることになったエヴァンスは、「OKだ。いいステージだった、ビッグプッシュだったよ。ティエリーからタイムを奪い返すためにね。すべてが完璧ではなかったが、まあまあ良かった」と、ほっとした表情を見せることになった。

 エヴァンスとヌーヴィルによる優勝争いは2017年のアルゼンチン以来だが、このときもエヴァンスは奇しくも11.5秒をリードして最終日を迎えたが、パワーステージでヌーヴィルに逆転を許し、0.7秒差という歴史的な僅差で勝利を失った苦い経験をもっている。

 ステージをゴールしたヌーヴィルは、エヴァンスより16秒遅れのタイムだったという事実に気づき、驚いたように笑みをみせる。「(何があったのか?)分からないよ。クルマのフィーリングは問題ないが、かなり動きがフレるようになっている。これ以上は速く走れなかった」

 このあとに残されたのは19.34kmのカルヴィ・ステージのみ。10秒以上のタイム差をひっくり返すには残された距離は短すぎる。選手権リーダーのオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)は前日のパンクによって6位につけているだけに、ヌーヴィルはここでリスクを冒してすべてを台無しにするより、選手権のために着実に2位を守る必要があると語った。

「これほど多くの時間を失ったことはがっかりだが、僕らはフェアでなければならない。彼はそこで素晴らしい仕事をした。そして、僕らはもう抵抗できない。明らかに僕らはここのバンピーなセクションで多くのタイムを失った。ラリーはまだ終わっていないが、僕らは着実なポイントをカウントする必要がある」

 1995年以来、久々にWRCに帰ってきたカルヴィのステージは、島西北部のラ・ルヴェラタ半島を望む、海沿いの崖っぷちのリスキーなコーナーが連続、一歩間違えば数百メートルも崖下に転落するリスキーなステージだ。ヌーヴィルはこのパワーステージをクリーンに走りきって4番手タイム。だが、その後方ではこのラリー最大の失望のドラマが起こっていた。なんとエヴァンスが右フロントタイヤをパンク、タイヤが吹き飛んだホイールでどうにかゴールを目指すも1分29.9秒をロス、彼は総合3位に転落することになった。ステージエンドで彼は首を横にふったあと、静かにうな垂れた。

「受け入れることは難しいが、起きてしまった。何かの破片か石を踏んで、即座にパンクしたと感じた。全く予期していなかった。タイムロスを最低限にできないか試みたが、フィニッシュまであと6kmの地点でタイヤはどんどん裂けてきてしまった。僕たちは表彰台を獲得したが、望んでいたのはこの順位じゃない」とエヴァンスはくやしさをにじまている。

 思ってもみなかった勝利によって、ヌーヴィルはドライバーズ選手権においてトップに浮上することになった。「エルフィンは本当に良い仕事をしていたのでとても残念だが、僕たちもこの勝利に値すると思う。僕たちはプッシュし続け、決して諦めなかったからね!」

 40.3秒差の2位でフィニッシュしたセバスチャン・オジエ(シトロエンC3 WRC)は、最後まで思うようにならないマシンでパワーステージのボーナスも1ポイントにとどまったが、それでも選手権ではヌーヴィルから2ポイント差で2位をキープすることになった。

 ダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)はオジエから5.1秒差で最終日を迎えたもののブレーキに問題を抱えてペースダウン、どうにか4位を守り切っており、ヒュンダイはマニュファクチャラー選手権トップを奪還している。

 その後方、6.2秒差で続くのはテーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)。彼もタナクからの猛追をしのいでどうにか15.4秒差で逃げ切って6位でフィニッシュ、タナクはパワーステージを制したクリス・ミーク(トヨタ・ヤリスWRC)に続いて2番手タイムでフィニッシュ、ボーナスポイント4ポイントを獲得したものの、総合6位に終わったことで選手権リーダーを陥落、3位へと後退することになった。それでもトップのヌーヴィルから彼まではわずか5ポイント差と大接戦だ。

 7位にはエサペッカ・ラッピ(シトロエンC3 WRC)、8位にはセバスチャン・ローブ(ヒュンダイi20クーペWRC)が続いている。また、速さを見せながらもホイールの破損に悩まされたミークとヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)は9-10位に沈み、トヨタはマニュファクチャラー選手権で3位へと後退することになった。

 次戦は南米に舞台を移して4月25〜28日に行われるラリー・アルゼンチンとなる。