WRC2019/05/14

勝田、「目標は選手権に勝つことではない」

(c)Toyota

(c)Toyota

(c)Toyota

 ラリー・チリで併催されたFIA WRC2選手権で優勝を飾った勝田貴元は、タイトル戦線でも2位へと勇躍することになったが、彼は選手権に勝つことが目標ではなく、もっと大きく成長するための経験を積むことが目標だときっぱり言い切った。

 ラリー・チリは、道幅が広くスピードが乗る森林地帯のステージや狭くツイスティなステージをもち、さらに降雨や夜露で湿り非常に滑りやすく、深い霧に包まれたステージもあって難易度がいっそう高くなった。

 レッキではペースノートをゼロから作る必要があったほか、コンディション変化が激しい路面でのタイヤ選択など、純粋なドライビング以外の能力も求められる困難な一戦で、勝田はWRC2優勝経験もある地元のトップドライバーたちと序盤から激しい首位争いを繰り広げ、昨年2月のラリー・スウェーデン以来となる、WRC 2優勝を果たすことになった。

「ラリー・チリのWRC 2で優勝することができて嬉しいよ。この週末は誰にとっても非常に困難なラリーになり、毎日ステージの特徴が大きく変わり、コンディションも違ったからね」と勝田はふり返った。

「いくつかのステージでは深い霧が立ち込めていたし、レッキを行なった時も霧が出ていて、そのためペースノートが不完全な状態だった。金曜日の午後は、路面に合っていないハードコンパウンドのタイヤを選んでしまい、大きく遅れをとったが、土曜日は良いフィーリングで走れたこともあり、遅れを取り戻すことができた。ラリーが終わって、また目標に向かうことができたので、とても満足だよ」

 勝田は、アルベルト・ヘラーとの長く息詰まる戦いのなかでタイヤチョイスのミスから遅れをとる場面もあったが、気持ちを乱すことなくペースをふたたび取りかえしてヘラーを抜き去ってみせた。

「もちろん、ここは彼のホームイベントなので彼はプッシュしてくることはわかっていたよ。でも、僕は勝ちたいと思って最善を尽くした。彼がリタイアしたのは残念だった。彼はとても速かったし、最後の最後までいいバトルができることを願っていたんだ」

 ラリー・チャレンジプログラムのスーパーバイザーを務めるトミ・マキネンは、チリが難易度の高いラリーだったからこそ、そこでの経験と自信が今後へのバネになると語った。

「非常に良いドライビングだった。チリのトリッキーかつ難しいステージで、タカモトは経験値を高め、ドライビングに関するミスを全くしなかった。本当に良くやったと思う。ステージはとても難易度が高いコンディションだったが、彼はこの週末で多くを学んだはずだ。今回のラリーでの経験と自信が、きっと次のラリーに活かされるだろう」

 勝田は、今回の勝利でオーレ・クリスチャン・ヴェイビーを抜いてWRC2選手権の2位に浮上することになったが、選手権に勝つことが目標ではないときっぱり言い切った。

「正直なところ、チャンピオンシップは僕の目標ではない。僕の目標は将来のための経験を積むことだからね。良い結果を得ることがいい時もあるし、将来的にはそうするつもりだけどね」と、勝田は付け加えた。

「今回もラリーを通してミスのないクリーンな走りを心がけ、その過程で様々な改善方法を学べたのは大きな収穫になった。今後も努力を続ければ、将来はより速く、そして力強く走れるようになると信じている」

 勝田の次戦は、5月24〜25日にかけて開催されるフィンランド・ラリー選手権第4戦リーヒマキ・ラリーとなり、今年3月に出場し優勝した同選手権第3戦のイタ・ラリー以来となるトヨタ・ヤリスWRCでの参戦となる。前回はスノーラリーだったが、今回はグラベルラリーとなり、勝田にとっては新たな挑戦となる。

 また、勝田はその翌週に行われるWRC第7戦ラリー・デ・ポルトガルには、ふたたびフォード・フィエスタR5でWRC2に挑む予定となっている。