WRC2019/06/04

勝田貴元、印象的な速さで成長を証明

(c)Toyota

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 トヨタGAZOOレーシング・ラリーチャレンジプログラムの勝田貴元が、世界ラリー選手権(WRC)第7戦ラリー・デ・ポルトガルのWRC2選手権に出場、序盤優勝争いに加わるも、ホイール破損等のトラブルで大きく遅れて13位でラリーを終えることになったが、最終日には5ステージのうち4ステージでベストタイムを奪うなど印象的な速さを世界に見せつけた。

 前戦ラリー・チリでWRC 2今季初優勝を飾った勝田は、その翌々週に開催されたフィンランド・ラリー選手権リーヒマキ・ラリーに、WRカーのヤリスWRCで参戦。ヤリスWRCでのグラベルラリー出場は初めてとなったが、勝田はやはりWRカーで出場した地元のライバル、ヤリ・フットゥネンを抑え、優勝を飾っている。

 リーヒマキ・ラリーの翌週スタートを迎えたラリー・デ・ポルトガルに、勝田はこれまでWRC2でドライブしてきたフォード・フィエスタ R5で出場、ハンドリングを改善するため、駆動系を始めとするセッティングを今までと大きく変えてラリー本番に臨むことになった。

 ポルトガルのグラベルステージは全体的にスピード域が高く、なおかつテクニカルなセクションも多く含まれるため、多面的なドライビングテクニックが求められる。路面は砂のような目の細かいグラベルが多く、多くのラリーカーが走行すると掘れて地中から石がかき出されパンクの危険性が高くなり、特に今年は気温が高く完全なドライコンディションだったため、路面は例年以上に荒れてドライバーたちを苦しめることになった。

 勝田にとっては今回が3度目のポルトガルとなるため、目標を優勝に定めてラリーをスタート。SS3アルガニルでベストタイムを刻み、首位と0.6秒差の2位に順位を上げた後も勝田は十分優勝を狙える位置につけていたが、SS6のアルガニルの2回目の走行でタイヤの空気が抜けてしまい5位に順位を落とすことになった。

 それでも彼は首位から40秒近い遅れで迎えたデイ2でふたたびトップに迫るタイムを刻み、ライバルの脱落もあって2位まで順位を回復、優勝を争うチャンスを再び手にすることになった。だが、勝田はSS12カベセイラス・デ・バストで突然ホイールのディッシュが破損して走行不能となり、デイリタイアを余儀なくされてしまう。

 多くのペナルティタイムを課せられ、勝田は14位で最終日のデイ3に再出走、オープニングステージでセカンドベストタイムを刻んで発進したあと、残り4つのステージのすべてでベストタイムを刻む圧巻の走りを披露、とくに最終ステージでは、WRカー勢に続く総合8番手タイムを記録し、ポジティブな形でラリーを締めくくることになった。

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 勝田は、石を絶対に踏まないように注意をして走っていたにもかかわらずホイールが破損した時は本当にショックだったと明かしたものの、この週末の自身のスピードに成長への手応えを感じている。

「今週末の自分のスピードには満足しています。昨年このラリーに出場した時と比べると、かなり成長できたのではないかと思う」と勝田。

「必要以上に激しく攻めることはせず、とにかくミスをしないようにクリーンな走りを心がけた。大きな石を絶対に踏まないように、細心の注意を払って走り続けたので、ホイールが破損した時は本当にショックだったし、なぜそうなってしまったのか正直分かりません。とはいえ、ポジティブに思えることも多くあった。最終日は良いリズムを保って走れ、好タイムを並べることができたので、それに関しては満足している。引き続き、自分の運転を進化させようと努力していますので、将来的にはさらに速く走れるようになると確信している」

 インストラクターを務めるヤルッコ・ミエッティネンは、いまや勝田のドライビングとWRCイベントに臨む姿勢はかなり高いレベルにあると評価している。

「タカとダン(=ダニエル・バリット)は、この週末を力強く戦った。彼らにはラリー開始直後から競争力があり、週末を通してミスもしなかった。今回の我々の目標は優勝だったが、ホイールが破損してリタイアするまで、そのチャンスは十分あったはずだ。今や、タカのドライビングとWRCイベントに臨む姿勢は、かなり高いレベルにある。今年の春、我々はドライビングテクニックに関して細かな改善作業を行なったが、その成果が現れたのか、今回のタカのドライビングはとても良かったと思う」

 勝田の次戦は、6月13日から16日にかけて開催される、WRC第8戦ラリー・イタリア・サルディニアとなる。サルディニア島北部を舞台とするこのグラベルイベントに、勝田は今回と同じくフィエスタR5でWRC2カテゴリーに挑む。