WRC2022/06/28

勝田貴元、2年連続で伝統のサファリ表彰台に

(c)Toyota

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 TOYOTA GAZOO Racing WRC NG(ニュージェネレーション)からWRCに参戦している勝田貴元は、先週末に開催されたサファリ・ラリー・ケニアにハイブリッドラリーカー、GRヤリスRally1で参戦して総合3位でフィニッシュ、昨年に続いて2度目のWRC表彰台を達成した。

 今年のサファリ・ラリーは、19年ぶりにWRCのカレンダーに復帰した昨年よりもさらに過酷なコンディションとなり、クルマとドライバーに大きな試練を与えることになった。「フェシュフェシュ」と呼ばれる、目の細かいパウダー状のグラベルが路面に厚く堆積し、多くのドライバーがスタックや視界不良に悩まされたほか、大きな石が転がり、バンピーで深い穴がある荒れた路面も多い。スピードだけを追求して走るとクルマが大きなダメージを受けるため、攻めるべきところと抑えるべきところのバランスをとるのが非常に難しいラリーとなった。

 一日に6つのステージが行われたフルデイ初日の金曜日、勝田は2番手タイムを3回、3番手タイムを1回刻むなど速さを発揮、昨年の勝者であるチームメイトのセバスチャン・オジエと8.6秒差の総合2位で最終ステージを迎えている。その最終ステージでは、オジエがパンクのために2分をロスして大きく後退、勝田がトップに立つチャンスが到来したかに見えた。

 だが、勝田はトラブルでスロー走行していたクレイグ・ブリーンのダストで視界を奪われ、大幅にタイムをロス、ブリーンはその後、サスペンションを壊してマシンを止めることになり、勝田はアクシデントの位置で状況を確認するためにスローダウンすることになる。だが、ラリーのスチュワードは前走車のダストで遅れたタイムの救済については認めず、アクシデントの現場に近づく際にペースを落としたことについては12秒のタイムを救済、彼は14.6秒差の2位で金曜日を終えることになった。

 翌日の25日土曜日、勝田はオープニングステージでチームメイトのエルフィン・エヴァンスに抜かれ、総合3位に後退。さらに、大きな石が多く転がる荒れた路面のSS10でタイヤにダメージを受けてタイムを失うことにもなった。午後のリピートステージでは、終盤の2ステージで強い雨が降り路面は泥状になり、大きな水溜まりも多くでき、タイヤがグリップせずクルマのコントロールが困難な状況となった。勝田もまたSS13で再度タイヤを痛めたものの、それでも難局を切り抜け総合3位を堅守した。

 最終日、26日の日曜日は、総合2位のエヴァンス、総合4位のオジエともタイム差が大きく開いていたため、勝田は確実性の高い走りに徹し、総合3位でフィニッシュ。昨年の総合2位に続く、伝統のサファリ・ラリーでキャリア2回目となる表彰台を達成、コドライバーのアーロン・ジョンストンはWRC初ポディウムを獲得することになった。

 勝田が総合3位に入ったことにより、トヨタは1993年のサファリ・ラリー以来となる1-2-3-4フィニッシュを達成。勝田は偉業達成においても重要な役割を果たして2度目のサファリ・ラリーを戦い終え、ドライバー選手権で3位にポジションアップすることになった。

 勝田は、次のようにラリーをふり返っている。

「本当に大変なラリーウィークでした。避けなければならない大きな石が多くあり、そのために問題が起きたりもしましたが、クルマがとても強かったので、このようないい結果を出すことができました。素晴らしい仕事でクルマを開発してくれたチームに、本当に感謝しています」

「土曜日の午後のステージは、悪天候のせいで信じられないくらい難しいコンディションになり、泥に覆われた路面でどこがグリップするのか分からないような状況でしたが、何とか切り抜けることができました」

「トヨタのために、このような結果を残すことができて自分としても嬉しいですし、アーロンが初めて表彰台を獲得したことも本当に良かったです。彼からは大きなサポートを受けているので、感謝しています」

 勝田のインストラクターを務めるユホ・ハンニネンは、コンディション変化に対する勝田のアプローチはとても成熟したものだったと評している。

「昨年と同じように、貴元は今回もケニアでもとてもいい戦いをした。土曜日にタイヤにダメージを受けたのはアンラッキーだったが、コンディション変化に対する彼のアプローチはとても成熟したものだった。荒れている路面は着実に走破し、コンディションが良くなったところでプッシュする。それが、このラリーで良い成績を残す上で重要なことなのだ。2戦前のラリー・デ・ポルトガルでは、あと一歩のところで表彰台を逃していたので、貴元が再び表彰台に立つ姿を見て嬉しく思ったし、いい結果を得る上で重要な役割を果たしたアーロンが、初めて表彰台に立ったのも本当に嬉しかったよ」