ERC2021/08/29

新星ツアイス、雨のERCチェコをリード

(c)ERC

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 ヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第4戦のバルム・チェコ・ラリー・ズリーンのレグ1が、28日土曜日に競技を再開、チェコの新星エリック・ツアイス(フォード・フィエスタRally2)が雨のなかで強烈な速さをみせてアグロテック・シュコダ・チームのヤン・コペツキ(シュコダ・ファビアRally2エボ)を逆転、2.1秒差をつけてトップに立っている。

 50回目を迎えるチェコ・ラリー・ズリーンは、金曜日の夜にズリーン市で行われたスーパーSSで開幕、アンドレアス・ミケルセン(シュコダ・ファビアRally2エボ)に0.2秒差をつけてリードを奪ったコペツキのペースは土曜日も揺るがない。このイベントで過去9度の優勝経験をもつ彼は、この日の朝の最初のステージのSS2でもミケルセンに1秒差をつけるベストタイム、その差を1.2秒へとじわりと広げている。

 予選トップのミケルセンは、雨になることを期待して一番手のロードポジションを選択したものの、曇り空の朝を迎えたこの日、木陰の下は湿ったダートがあるものの、ほとんどのターマックはドライとなっており、細かいダストがレイヤーとなっている路面はミケルセンにとってはやや不利な条件だ。SS3で連続してベストタイムを奪ったコペツキはミケルセンに対するリードを一気に8秒差へと広げている。

 ミケルセンはサービスのあとのSS4で初めてのベストタイムを奪って、反撃をみせるが、コペツキとの差はなかなか縮まらない。さらに後方からは予選2番手と速さをみせた22歳のツアイスが連続して2番手タイムを奪い、ミケルセンの後方4.2秒差まで追い上げてきた。

 続くSS5 はチェコ・ラリー・ズリーンを象徴するピンドゥーラ・ステージだ。コペツキは勝負の鍵を握るのはいつもどおりこのステージになると語っていたが、まだ雨も降ってなかったこのステージの森のなかは3番手でステージを走行するコペツキのときにはすでにかき出された泥でひどく汚れており、彼はたまらずペースダウン、一番手で走行するミケルセンが0.2秒後方に迫ることになった。

 さらに、前夜のオープニングSSではハーフスピンから6番手にとどまったツアイスがここでキャリア初のERCでのベストタイムを叩きだし、一気に首位のコペツキの2.7秒後方まで迫ってきた。

 そこからはコペツキとツアイスの新旧スターによるバトルとなり、SS6でこの日3つめのベストタイムを奪ったコペツキを逃がさないように、ツアイスは小雨が降り始めたSS7で2つめのベストタイムを奪ってミケルセンを抜き去り、コペツキに0.8秒差まで近づくことになった。

 だが、ウェットとなったSS8ではコペツキがツアイスを5秒も引き離す素晴らしいタイムで圧倒、そのまま逃げ切るかに見えたが、激しい雨によって誰もが最悪のコンディションだったと口を揃えることになった暗闇のピンドゥーラ・ステージの2回目の走行ではツアイスが信じられない速さをみせる。なんとコペツキに7.9秒もの差をつけて逆転、2.1秒差をつけて首位でレグ1を終えることになった。

「地獄、天国、それともジェットコースター? 信じられないステージだったよ」とツアイスは興奮を隠せない。「僕がこれまでドライブした中で最高のステージだよ! 今日は信じられないほどきてくれたファンの皆さんに感謝している。そして父にもだ。父も今日のことを誇りに思っているだろう」

 コペツキは、ツアイスのタイムをステージエンドで知って、自分にはそこまでリスクを負えなかったと信じられないような表情を浮かべていた。「こういうコンディションでは ベストタイムを出すためには、少しクレイジーな運転をして、多少のリスクを負わなければならない。僕はリスクを負いたくなかった。でも20年前の僕なら同じことをしていただろう。明日はまた長い一日になるが、頑張っていきたい」

 ミケルセンは最終ステージだけで12.5秒を失い、首位のツアイスからは16.6秒遅れの3位でレグ1を終えることになった。「このステージは本当に難しかった。グリップレベルがまったく予測ができなかったし、もっとも難しいステージだった」

 ミケルセンから40秒近く遅れた4位にはオーストリアのシモン・ヴァグナー(シュコダ・ファビアRally2エボ)、2019年のERC1ジュニア王者のフィリップ・マレシュ(シュコダ・ファビアRally2エボ)は初日のTCへの遅着によって14位で土曜日をスタートしたが、ここでの2番手タイムなど速さをみせて5位まで追い上げてきた。

 2.4秒差の6位にはハンガリーのノルベルト・ヘルツィグ(シュコダ・ファビアRally2エボ)が続き、最終ステージのミスでマレシュとヘルツィグにポジションを譲って8位となったORLENチームのミコワイ・マルツィック(シュコダ・ファビアRally2エボ)も「ここは僕には難しすぎた」とため息まじりだ。

 また、チームMRFタイヤからの初戦となったヤリ・フットゥネン(ヒュンダイi20 R5)は8位で迎えたSS7でクラッシュ、左リヤサスペンションを壊してリタイアとなっている。

 ERCジュニアは、2位につけていたオスカー・ソルベルグ(フォード・フィエスタRally3)がSS2でクラッシュ、ただ一台だけの生き残りとなったケン・トルン(フォード・フィエスタRally3)が首位となっている。

 ERC3ジュニアは、初日2位につけたサミ・パヤリ(フォード・フィエスタRally4)は3連続トップタイムでラリーをリードしたが、SS5のあとメカニカルトラブルでマシンを止め、ルーマニアのノルベルト・マイオール(プジョー208 Rally4)が首位となっている。初日をリードしたジャン-バティスト・フランセスキ(フォード・フィエスタRally4)はTCへの早着のため4位にとどまっている。