RallyCross2019/06/18

波乱続出ノルウェーRX、グロンホルムが初優勝

(c)FIAWorldRallycross.com

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 アントン・マルクルンドとGCコンペティションは世界ラリークロス選手権第5戦のノルウェーRXで初優勝を飾ったかに見えたが、レース後の車検で車両規定が見つかったために失格処分となり、ニクラス・グロンホルム(ヒュンダイi20)が父マーカス・グロンホルムが運営するGRXチームで初めて勝利を飾ることになった。

 虫垂炎の手術によって第3戦ベルギーと第4戦グレートブリテンを欠場することになったグロンホルムは、予選のQ1、Q2そしてQ4を制して復帰戦とは思えないほどの完璧な速さを見せて、セミファイナルも順当に勝ち進んでファイナルのポールポジションを獲得することになった。

 しかし、ファイナルはスタート直前に降ったゲリラ豪雨によって、それぞれのドライバーがそれまでスリックタイヤを温存してきた戦略は完全に無駄になり全車ともレインタイヤでグリッドに付くことになり、ウェットコンディションの路面で誰もが予想していなかった波乱の展開となる。

 グロンホルムが雨で滑りやすくなった不利なグリッドから出遅れるなか、フロントグリッドからスタートしたリアム・ドーラン(アウディS1)がリードを奪うことになったが、彼はマルクルンドを背後に従えていきなりジョーカーラップへと真っ直ぐ突き進み、初めての世界ラリークロス選手権にもかかわらず2列目から好スタートを切った元WRCドライバーのケヴィン・アッブリング(シュコダ・ファビア)が1コーナーでリードを奪うことになった。

 グロンホルムはアッブリングをピタリとマークして横並びになって抜きにかかったが、グラベルからターマックに路面が変わったコーナーでワイドになってしまい、アッブリングのリードを許しただけでなくケヴィン・ハンセン(プジョー208)にも抜かれてしまうことになる。

 トップで2周目に入ったアッブリングはけっしていいペースで周回をこなしているわけではないが、後続のハンセンとグロンホルムがバトルを演じているため、3周目以降、じょじょに引き離しにかかることになる。いっぽう、1周目にジョーカーを選んだドーラン、マルクルンド、ヤニス・バウマニス(フォード・フィエスタ)がハイペースをみせてじわじわとグロンホルムの背後に迫っている。グロンホルムはなんとかこのスタックした状況から逃れるべく、ペースが上がらないハンセンに背後からプレッシャーを掛け続けるものの、抜くまでには至らない。

 レースは5周目に首位のアッブリングがジョーカーを選ぶも、彼はドーラン、マルクルンドにリードを譲り、3番手につけることになる。押し合いながら激しい接戦を演じてきたハンセンとグロンホルムは完全に後続の集団に追いつかれるが、ドーランはメカニカルトラブルで失速、マルクルンドがハンセンとグロンホルムの後方にピタリと続くことになる。

 ハンセンとグロンホルムは最終ラップになってジョーカーラップを選ぶことになったが、もちろんコースに戻ったときにはマルクルンドの先行を許すことになり、そのままマルクルンドが雨で難しくなったレースをトップでチェッカーフラッグを受けることになり、ハンセンが2位、1.3秒差でグロンホルムが3位でフィニッシュラインを越えることになる。

 しかし、レース後スチュワードはハンセンがグロンホルムをプッシュしたとして1秒のペナルティを科すことを決定、グロンホルムにも接触の行為への懲戒はあったものの彼が2位へと繰り上がることになる。だが、さらなる波乱がレースの車両検査によって発覚する。GCコンペティションのルノー・メガーヌのフロントバンパー内に備えるクロスメンバーのマウントのパイプ径が規定より厚みがあることが見つかり、レーススチュワードはマルクルンドをレース全体から失格とすることを決定することになった。

 昨年から世界ラリークロス選手権に参戦したGCコンペティションのルノー・メガーヌRSにとっての記念すべき初勝利、2度のヨーロッパ・ラリークロス王者に輝いたマルクルンドにとっても初の優勝は幻と消え、レースを3位でフィニッシュしたグロンホルムがまさかの優勝を飾ることとなった。

「勝ったことはうれしいことだが、これは僕らが期待した方法での勝利ではなかった。スタートは悪く、僕はケヴィン(・ハンセン)を激しくプッシュして抜こうとした。おそらく彼のリヤバンパーはかなりへこんでいると思う。クルマは調子が良かった、我々は間違いなく勝てる速さを持っていたが、スタートでのホイールスピンだけががっかりだった」とグロンホルムはレースをふりかえっている。