WRC2019/10/06

熱戦ラリーGB、タナクがレグ2も首位堅持

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 2019年世界ラリー選手権第12戦のウェールズ・ラリーGBは土曜日のレグ2を迎え、この日も不安定な天候のなかで息詰まる接戦が繰り広げられ、トヨタGAZOOレーシング・ワールドラリーチームのオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)が首位をキープ、ヒュンダイ・モータースポーツのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)に11秒差をつけることになった。

 ラリーGBの土曜日は、ダイフィ(25.86km)、ミヘリン(22.91km)、スウィートラム・ハフレン(25.65km)の3つのロングステージを走ったあとニュータウンのタイヤフィッティングゾーンのタイヤ交換を挟んで朝とは異なり、ミヘリン、スウィート・ラム・ハフレン、ダイフィに順で2回目の走行を行ったあと、ライトフィッティングゾーンでナイトポッドを装着して新しいコルウィン・ベイ(2.40km)のターマックステージが行われる。

 スノードニア山の陰に位置するオープニングSS のダイフィはウェールズを象徴する伝統的なステージの一つだ。昨夜はそれほど雨が降らなかったとはいえ路面はウェット。ここでベストタイムを奪ってスタートしたのは地元のエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)だ。2番手には初日をリードして終えたタナクが続き、3番手タイムのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)は早くもここでクリス・ミーク(トヨタ・ヤリスWRC)に追いついて3位で並ぶことになる。

 霧雨が降り始めたSS12ミヘリンでは6位につけていたクレイグ・ブリーン(ヒュンダイi20クーペWRC)が高速の左コーナーでスライドしてコースオフ草原で4回転してマシンを止めることになった。幸いにも走行に影響のあるダメージはなかったため彼はコースに戻ることができたが、5分20秒近い遅れを喫して9位までポジションを落とすことになった。

 ここでもベストタイムを奪ったのはエヴァンスだ。前日のサスペンション破損で12位まで順位を落とした彼はこの日を8位でスタートしたが、ここでチームメイトのテーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)を抜くとともに6位まで順位を上げてきた。

 リバースの走行順で走るこの日は、湿ったグラベルを走る下位のマシンのほうがいいタイムを並べることになり、それほど雨が降っているわけではないため走るたびにラインがタイヤで磨かれて滑りやすくなり、トップグループが走るころには一台走るたびにステージは難易度を上げることになる。ブリーンのアクシデントは改めてこの日も一筋縄では行かないことを証明することになったが、トップグループはいまや選手権を争う3人のドライバーが1-2-3を占めることになり、まさしく一瞬も気を抜くことができないバトルと化している。

 タナクは泥だらけとなったミヘリンの森で、2位で続くオジエを渾身の走りで引き離しにかかるが、それでも奪い獲ったのはわずか0.1秒だ。5.9 秒へとじわりと広がったリードに満足できなかったのか、彼はさらなるアタックを敢行、SS13スイートラム・ハフレンの左コーナーでマシンをスライドさせてリヤをコースの外に落としそうになる危うい瞬間に見舞われることになる。「非常に厳しいステージが続いている。グリップが変化して簡単ではないが、自分たちのベストを尽している」

 タナクに追いつきたいオジエも、バンプを越えた際にダンパーに衝撃を感じて集中力を乱してバンクにヒットするなど追撃のチャンスをモノにすることができない。ここで二人の差は7.0秒へと広がることとなった。

 さらにミークを完全に突き放したヌーヴィルはここでも3番手タイムを叩き出し、朝のループを終えてオジエに2.2秒差に迫ってきた。「すごく頑張った。小さなミスをして数秒をロスしたけれどね」と語るヌーヴィルだが、彼もリヤバンパーの右側を吹き飛ばしており、危ないシーンを切り抜けてきたことは明らかだった。

 母国ラウンドの初勝利を夢みてきたミークは金曜日のペースを再現できずに苦しいスタートとなっており、首位のタナクからは13.6秒遅れの4位となっている。「今朝まであったわずかなマージンがすりぬけていくようだった。今日はクルマの感じが少し違う。気持ちわずかに重たいような感じだ。でもあいにく今日はサービスがなくて何も対処できないよ」とミークは首を横に振る。

 ミークの後方につける5位のアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)は20秒差とやや離れているも、SS13でこの日3つめのベストタイムを奪ったエヴァンスが4.6秒背後にぴたりと迫ってきた。

 ニュータウンのタイヤフィッティングゾーンでタイヤを交換作業が行われるころ、午後のループの最初のステージとなるSS14ミヘリンではふたたび雨が降り始め、朝の走行で磨かれたステージはいっそうその表情を変えてドライバーたちを待ち受ける。

 SS14でベストタイムを奪って午後のループで勢いをみせたのはヌーヴィルだ。彼はステージ序盤でコースオフしながらも気迫の走りでオジエの0.4秒差に迫ることになった。タナクもアンダーステアしてひやりとしながらも0.7秒差の2番手タイムで続き、オジエとの差は8.1秒とここでもやや広がったが、ヌーヴィルもすぐそこにいる。
 
 さらに雨足が強くなったSS15スウィート・ラム・ハフレンではステージはさらに滑りやすくなっており、横転で9位まで遅れていたブリーンが、少しでもチームメイトを有利な走行順で走らせるべく、スタート前のタイムコントロールに10分遅れでチェックイン、自身のスタートを遅らせ、ミケルセンとヌーヴィルを先行させることになった。

 チームメイトが与えてくれたチャンスに応えるべく、エヴァンスから猛攻を受けていた5位のミケルセンがこの週末で初のベストタイム、1.5秒から5.5秒差へとリードを広げることになった。また、ヌーヴィルもオジエをついに捉え、2.3秒差をつけて2位へとポジションをアップする。

 驚かされたのはラリーリーダーのタナクだ。彼は2番手タイムでフィニッシュするも、リヤバンパーを完全に失っており、ステージエンドでマシンを下りるや、マシンに怒りをぶつけることになった。「昨年オーストラリアでチャンピオンシップを失った時と同じだ。バンパーを失ったので、マルティンが言っていることが何も聞こえなかった!」と、彼は憤りをみせたが、2位との差はこの日初めて10秒台となる10.1秒差と広がった。

 ヌーヴィルは続くSS16ダイフィでもベストタイムも、タナクは一歩も譲らず0.4秒差の2番手タイムで10秒台のリードを守り、さらにこの日最後のステージとして行われた海岸に沿って走る短いターマックステージのSS17コルウィン・ベイでは今日初のベストタイムを叩き出して、ヌーヴィルとの差を11秒へと広げてフィニッシュした。

「すごくトリッキーで大変な一日だった。ずっとタイトな差だったことを考えると、11秒というのはかなり大きく感じるが、それでも実際には無いに等しいから、明日も僕たちは良いペースをキープしていく必要がある」とタナクはいつものように淡々と応えている。

 選手権のために攻めるしかなかったヌーヴィルは、ミスのない走りでここまで順位を挽回出来たことに満足しつつも、もちろんタナクの攻略を諦めたわけではない。「明日、僕らに何ができるか本当にわからない。しかし、今日と同じようにプッシュし続けることはたしかだ」

 いっぽう、オジエは朝から渾身の走りを続けてきたが、けっきょく最後まで一度もタナクを上回るタイムを出すことができずに17.3秒差の3位でこの日を終えることになった。「これは僕たちが求めていたポジションではないが、これ以上は無理だった。本当にギリギリだったが、どうしようもなかった。明日はもう少し速くなる必要があるが、いまは全てを出し切ってヘトヘトなので、それについては今の時点で答えはでないよ」と厳しい表情を浮かべていた。

 オジエの9.2秒後方の4位には、クリーンな走りを続けているミークが表彰台のチャンスをうかがっており、5位のミケルセンと6位のエヴァンスは4.5秒差というバトルを続けており、明日も二人の戦いからは目を離せそうにない。

 また、この日を7位でフィニッシュしたスニネンは、サービスでマシンをチェックしたところSS13ハフレンでオフした際のダメージが深刻であることが発覚、明日のリスタートを諦めてリタイアとなっている。

 最終日は最終日の日曜日は、アルウェン(10.41km)、ブレニグ(6.43km)のあと、断崖に沿った美しいターマックのグレートオーム(4.74km)を走り、アルウェンとブレニグのステージをふたたび走行する一日となる。はたしてタナクが11秒を守って今季6勝目を飾ることになるのか? オープニングSSのアルウェンは現地7時28分(日本時間15時28分)のスタートが予定されている。