ERC2019/03/24

豪雨アソーレス、ハバイが逆転でERC初優勝

(c)ERC

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 2019年ヨーロッパ選手権(ERC)開幕戦ラリー・アソーレスの最終日は、豪雨のなかで波乱が続出、それまで力強い走りをみせて首位をキープしてきたサンテロック・ジュニアチームのアレクセイ・ルクヤヌク(シトロエンC3 R5)までもがクラッシュで消え、スポーツ・レーシングテクノロジーズのシュコダ・ファビアR5を駆るウーカシュ・ハバイがERC初勝利を飾ることになった。

 明るい陽射しに照りつけられた前日とはうって変わって、大雨が叩きつける荒れ模様の天候に見舞われたアソーレスの最終日、いきなり最初のステージのSS11グラミンハイスでドラマが発生する。才能あるアスリートを育成するシステム、チーム・オスカーロの支援を受けるピエール-ルイ・ルベー(シュコダ・ファビアR5)は初日のスピンでの遅れを挽回して、ポディウム圏内まで5秒差で最終日を迎えたが、このステージで致命的なトラブルを抱えてしまうことになる。

 ルベーはこのステージを3番手タイムで走り終えて、総合4位とERC1ジュニアのトップをキープしたが、ウォーターポンプが破損しており、残念ながら週末を終えることになった。

「ステージの間、ダッシュボードでは何度も警告が灯っていた。それによって集中力を欠いてしまったわりには、タイムは悪くなかったが、不運なことに問題は解決できなかった。ERC1ジュニアをリードできていたのはよかったよ。勝てていたらもっと自信になっていただろうけどね、仕方ないよ」とルベーは肩を落とすことになった。

 水浸しとなったこのステージでベストタイムを奪って最終日の朝をスタートしたのは、ポーランドのハバイ。「危ない瞬間が何度もあった」と言いながらも地元サン・ミゲル島出身のリカルド・モウラ(シュコダ・ファビアR5)を抜いて2位に浮上することになった。

 いっぽう、前日までの10ステージのうち9ステージを制して40秒差をつけて首位を独走してきたルクヤヌクも、泥だらけとなった土曜日の朝のループに手こずることになってしまった。慎重なペースだと言いながらも、SS11、12と連続して2番手タイムで走りきった彼だが、濃霧で視界を遮られたSS13ではジャンクションをオーバーシュート、切り返すときにエンジンをストールさせて30秒あまりを失うことになった。

「これまでに一度もこのようなコンディションを見たことがないよ。僕らもばかばかしい間違いをミスをしてしまった。ジャンクションで曲がれずにまっすぐ進み、エンジンを止めてしまったんだ。本当に信じられないコンディションだ。グリップは大きく変化しているので、信じることができない。人生でおそらく最悪のステージだった」とルクヤヌクは恐怖のステージをふり返った。
 
 とはいえ、このステージではライバルたちも大きくペースを落としているため、ルクヤヌクは朝のループを終えて2位のハバイに対して43秒をリード、このような悪コンディションをもっとも熟知しているはずもモウラでさえも、最初のステージでハバイに奪われた2位を取り返すどころか、「僕らはフィニッシュラインに到達する必要がある」と、ゴールするのが精一杯だと語ったほどだ。

 残されたのはわずか2ステージ。しかし、これまでいいペースで首位を守ってきたルクヤヌクが悪夢に見舞われる。彼は24.03kmのSS14グラミンハイスをスタートして5km地点で右フロントタイヤをパンク、そのまま走ることを選んだ彼はタイヤが完全に吹き飛び、ホイールだけの状態でなんとかゴールするものの、ここで1分28秒をロスして3位に後退、首位をハバイに明けわたすことになってしまう。

 そして残された最後のステージでさらなるドラマが待っていた。タイヤ交換後に快調なペースでステージをスタートしたルクヤヌクがスタート直後のハイスピードのターマックセクションで横転、マシンを大破させて壮絶なリタイアとなってしまう。「前ステージでバーストしたあとホイールだけで走行をしたため、ブレーキラインにダメージを負っていたようだ。スタートして最初のブレーキで完全にいかれてしまったよ」とルクヤヌクは肩を落とすことになった。

 終盤のドラマで思ってもみない形で首位に立ったハバイは、最終ステージでも後続のモウラからプレッシャーを掛けられながらも8.4秒差で逃げ切ってトップでフィニッシュ、ステージエンドで自身のERC初優勝がまだ信じられないかのように笑顔をみせた。「最後のステージはクレイジーだった。たくさんの岩がかき出されていたからね。ゴールに到着できて本当にうれしいよ。マシンは昨日からずっと素晴らしかったし、僕らはずっといいペースで走ることができた。アレクセイ(・ルクヤヌク)には申し訳なく思うが、これもラリーだ」

 モウラの33.8秒後方の総合3位でフィニッシュしたのはトーク・スポーツWRTのクリス・イングラム(シュコダ・ファビアR5)。この日の朝にルベーがトラブルでリタイアとなったあともERC1ジュニアのリーダーを守り切って選手権をリードすることになった。

 難しいコンディションのなかで前日を8位で終えたポルトガル・チャンピオンのブルーノ・マガラエス(ヒュンダイi20 R5)が4位でフィニッシュ、走行順に恵まれて最終日に3つのベストタイムを奪ったリカルド・テオドシオ(シュコダ・ファビアR5)が10位から5位まで順位を上げている。

 さまざまな問題に悩まされたドイツ・チャンピオンのマリヤン・グリーベル(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)は、最終日もパンクで追い上げならず6位でフィニッシュを迎えている。

 ERC2はホアン-カルロス・アロンソ(三菱ランサーエボリューションX)が優勝、電気系の問題で前日にリタイアしたロシアン・パフォーマンスのセルゲイ・レメニク(三菱ランサーエボリューションX)が2位となっている。

 R2マシンで争われるERC3ジュニアは、ラリーチーム・スペインのエフレン・ヤレナ(プジョー208 R2)が後続に1分差をつけて開幕戦で優勝を飾っている。