ERC2020/11/28

雨が波乱呼ぶカナリアス、地元アレスが初日首位

(c)ERC

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 ヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)のタイトル決定戦となるラリー・イスラス・カナリアスは、予想もしない突然の雨や路面コンディションの変化がトップドライバーたちを苦しめることになり、ヒュンダイ・エスパーニャのイヴァン・アレス(ヒュンダイi20 R5)が初日をリード、Mスポーツ・フォードのアドリアン・フォーモー(フォード・フィエスタRally2)が7.5秒差の2位で続くという展開となっている。

 前夜には天気予報と異なり、かなりまとまった雨が路面を濡らすことになったが、その雨を予期していたのは選手権リーダーのアレクセイ・ルクヤヌク(シトロエンC3 R5)だ。彼は予選ではわざとペースを落とし、Rally2/R5マシンの最後尾となる27番手でステージに挑むも、後続になるほど路面が乾き始めるという予想は裏切られ、濡れたままの路面にドライタイヤで挑んだ彼は完全に失速、オープニングループで56秒差の10位に沈むことになった。

 優勝候補の筆頭と予想されたラリー・ハンガリーのウィナーであるアンドレアス・ミケルセン(シュコダ・ファビアRally2エボ)も、一番手の走行ポジションでドライタイヤを選択、やや湿っていてもカナリアスのターマックではグリップがあるはずだったが「まるでアイスリンクの上にいるようだ」と諦め顔だ。「ミディアムスリックで走っているが、何もできない。懸命にプッシュしようとしているのに、簡単にスライドしてオフしてしまいそうになる」と語った彼は、朝のループを1分44秒遅れの24位で終えることになった。

 チームMRFのクレイグ・ブリーン(ヒュンダイi20 R5)も果敢にスリックに挑戦したが、グリップに苦しみ1分35秒遅れの21位、ERC総合とERC1ジュニア選手権の2位につけるオリヴァー・ソルベルグ(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)はレインタイヤ2本とスリック2本をクロスで装着したが、右コーナーはオーバーステア、左コーナーではアンダーステアになってしまい、朝のループでは13番手と出遅れている。

 ERCのレギュラードライバーたちがトリッキーな路面にペースを乱されるなか、朝のループはウエットタイヤを選択した地元スペインの強豪たちが上位を占めることになった。

 朝のループの4ステージのうち3ステージでベストタイムを奪った2017年のジュニアWRC王者のニル・ソランス(シュコダ・ファビアRally2エボ)がラリーをリード、これに9.7秒差でアレスが2位で続くことになった。

 二人はスペイン選手権で火花を散らすライバルであり、ソランスはスペイン選手権2位、アレスも選手権で3位につけている。連覇にむけて選手権をリードする、昨年のERCカナリアスの勝者であるペペ・ロペス(シトロエンC3 R5)がオープニングステージでマシンをスライドさせてクラッシュしてリタイアとなったため、ソランスとアレスにとっては引くに引けない週末になりそうだ。

 二人の地元ドライバーに続いて3位で朝のループを終えたのは、ドライセットアップとスリックタイヤを選択したにもかかわらず、ペースを落とさなかったMスポーツのフォーモーだ。カナリア・チャンピオンのイーライ・レメス(ヒュンダイi20 R5)に1.1秒差をつけた3位で朝のループを終えることになった。

 朝のループでは路面変化に多くのトップドライバーたちが失速を余儀なくされたが、午後になると天候が回復し、路面は急速に乾き始める。

 朝のループで9.7秒をリードしたソランスはミディアムコンパウンドのドライタイヤを武器にますますリードを広げSS6を終えて2位で続くアレスとの差を16.1秒まで広げてみせる。

 だが、ソランスはSS7でのスピンで10秒ほどロスしたが、さらにSS8ではステージをスタートする直前になって突然の土砂降りに見舞われたために冷えたドライタイヤで20秒近くをロス、アレスに首位を譲って10.5秒差の2位へと後退することになる。さらに彼は最後のSS9では走行順のトップ4までがドライ路面で走ったあと交通渋滞の問題からステージが中断、走行するときには雨となり、ふたたび不運なペースダウンを余儀なくされたため、SS7とSS8でベストタイムを奪ってペースを上げてきたフォーモーにも1.5秒抜かれて3位で初日を終えている。

 7.5秒差をつけて初日をリードしたアレスは、「タイヤチョイスやグリップを見つけるのが難しかったが、素晴らしい日になったね。とても満足している」と語った。彼は、10月にポルトガルで行われたラリー・ファフェ・モンテロンゴで2位でフィニッシュ、初めてのERC表彰台に立っており、明日はERC初勝利を目指すことになる。

 ソランスは3位に落ちたとはいえ、首位のアレスとは7.5秒差、2位のフォーモーも1.5秒差という射程圏内だ。

 ソランスから30秒遅れの4位で続くのは、3度目のフランス・ターマック・チャンピオンに輝いたヨアン・ボナート(シトロエンC3 R5)。彼は、トリッキーな路面コンディションをウエットとドライタイヤをミックスした使用でうまくペースをコントロールしていたが、雨となったSS8では4本ともスリックタイヤに変更したために10秒近くをロスしたことを嘆いていた。

 スペインのホセ・スアレス(シュコダ・ファビアRally2エボ)とルイス・モンゾン(シトロエンC3 R5)が5位と6位で続き、ソルベルグが朝のタイヤチョイスのミスから7位にとどまっている。

 ソルベルグのERC総合優勝の可能性は低くなってきているが、ERC1ジュニア選手権で彼に6ポイント差をつけてリードしていたグレゴワール・ムンスター(ヒュンダイi20 R5)がオープニングステージでパンクしてしまい、その後もトリッキーな路面に苦しめられてペースが上がらず、29位と低迷していることから、ジュニアタイトル獲得への期待が高まっている。

 カナリアスで2度の優勝経験をもつルクヤヌクは、ミディアムコンパウンドのドライタイヤを武器にSS5、6で連続してベストタイムを奪って朝の遅れを挽回、10位から4位まで急浮上したが、次のSS7では後方からスタートする彼は突然の雨で路面が濡れたために30秒をロス、完全にウエットになったSS8でも40秒あまりをロスして次々と順位を落とし、8位で初日を終えることになってしまった。

「ドライになった2つのステージを楽しむことができたし、カナリアスでのいい思い出として一生心に刻んでおくよ。しかし、それ以外の部分は最悪だった」とルクヤヌクは語った。

 ERCジュニア・チャンピオンであるマリヤン・グリーベル(シトロエンC3 R5)がフロントガラスが曇る問題を抱えながらも9位につけており、朝のループを4位で終えたレメスが雨によって10位まで後退、ミケルセンもタイヤチョイスのミスから11位という不本意なポジションとなっている。

 ERC2はポーランドのダリウス・ポロンスキー(アバルト124ラリーRGT)がリード、選手権リーダーのティボール・エルディJr(三菱ランサーエボルーション)が2位につけている。アルピーヌA110 RGTを駆るゼリンド・メレガリはERC2で3位につけていたが、SS7でマシンをクラッシュさせてリタイアとなっている。

 ERC3ジュニアとERC3 は、スペインのホセップ・バッサス(プジョー208 Rally4)がリードしている。すでに最終戦として予定されたスパ・ラリーがキャンセルされた時点でエストニアのケン・トルン(フォード・フィエスタRally4)のものとなっており、彼は安定したペースを守って3位につけており、最終日の栄光のゴールを待つことになる。