WRC2022/12/31

【TOP10-第1位】カッレ・ロヴァンペラ

「王者の領域」

■カッレ・ロヴァンペラ

Kalle Rovanpera
Toyota GAZOO Racing WRT

カッレ・ロヴァンペラは、2022年のラリー・ニュージーランドでシーズン6勝目を飾るとともに、初のワールドチャンピオンに輝くことになった。それは9年前にセバスチャン・オジエが圧倒的な強さを誇って初の王者に輝いた2013年とまったく同じく2戦を残してのタイトルだったが、恐ろしいことにロヴァンペラはまだ22歳にすぎない若さで、伝説の王者の領域に到達したのだ。

ロヴァンペラの新シーズンは、誰よりもスローなペースで始まったことを、今では覚えている人も少ないだろう。彼は開幕戦モンテカルロで4位を獲得、1位のセバスチャン・ローブと2位のセバスチャン・オジエがフル参戦していなかったことから、実質的に開幕から選手権をリードしてきたことになるのだが、初日は2つのステージで1分以上も遅れ、なんとそのタイムはRally2カーより遅いものだった。

ロヴァンペラはその後、一番手で雪かきをするハンデを負いながらもスウェーデンで今季初勝利、クロアチアではパワーステージで逆転勝利を飾り、数々の歴代チャンピオンがたどってきた試練を乗り越えるかのようにポルトガルでは一番手スタートのハンデを乗り越えてシーズン3勝目を飾ることになった。

サファリで4勝目を挙げ、シーズン中盤ですでに65ポイントをリード。続くエストニアで5勝目を飾り、第8戦のベルギーで早くもタイトルを固める可能性が出てきた。ベルギーとギリシャではクラッシュしたため、チャンピオンシップの獲得は遅れたが、ニュージーランドでのシーズン6勝目で王座に輝くことになった。

ロヴァンペラはシーズン序盤からワールドチャンピオンにふさわしい走りをみせてきた。難しいステージではスピードを落とし、攻めるチャンスがあるときにはターマックであろうとグラベルであろうと、ライバルを寄せ付けない爆発的なスピードをみせる。その若さで、あれほどのクレバーさと冷静さは驚くしかないが、まるでどこでプッシュしたらいいのか俯瞰して見ることができているようだ。

さらに突然のグリップレベルの変化への対応力こそロヴァンペラのもっとも際立っている能力だ。サファリでもニュージーランドでも雨の速さが光ったが、とくに終盤に雨となったクロアチアでのワールドチャンピオンであるオイット・タナクとの勝負はシーズンのハイライトに挙げられるだろう。ロヴァンペラはタナクより不利なタイヤに臆することなく、グリップの低い路面でコースオフしそうになりながらも信じがたいようなマシンコントロール能力を発揮してみせた。まるで危ない瞬間を楽しんだかのように、彼はゴール後、「今までで最も困難で、最も美しい勝利だった!」と勝利の興奮を抑えられないように言い残していたのが印象的だった。

圧倒的なパフォーマンスでシーズンを席巻したロヴァンペラは、コリン・マクレーの持つ最年少のワールドチャンピオン記録を5年と88日短縮し、WRCの歴史を塗り替えた。ローブやオジエといった偉大な王者はそれぞれ初のタイトルに輝いたのが30歳になってからだった。22歳のロヴァンペラがこの先、どのような未来を築いていくのか空恐ろしいではないか。

生年月日:2000年10月1日(22歳)
選手権ランキング:1位
獲得ポイント:255点
ベストリザルト:1位
優勝回数:6回
2位の回数:1回
3位の回数:1回
表彰台回数:8回
出場回数:13回
ベストタイム回数:70回
リードしたステージの数:78SS
リタイア数:0回
リスタートの回数:1回
パワーステージ勝利数:7回
パワーステージ獲得ポイント:50点