WRC2017/12/28

【TOP10-第5位】クリス・ミーク

速さをみせながらもクラッシュを繰り返したエースドライバーへの風当たりは強かった。しかし、引退の危機さえ囁かれながらも、クリス・ミークは自らのスピードを信じてアクセルを踏み続けることを貫いた。速さはときには諸刃となって自身へと返ってくる。それでも彼は求道者のようにスピードを追い求めた。

■クリス・ミーク

シトロエンは新しいC3の開発に専念するため2016年の参戦を休止、万全の準備をして復帰したはずだったが、シーズンのスタートは予想に反して素晴らしいものではなかった。ミークはモンテカルロではクラッシュしてデイリタイアとなったあと、ロードセクションでのアクシデントによって不運なことに走行を断念する結果に終わっており、スウェーデンでは奮闘してライバルに匹敵するペースを見せたが、ここでもコースオフによって12位でフィニッシュすることとなった。

そして、メキシコでは4日間をノーミスで走り、40秒近いリードを築いて迎えた最終ステージの残り700mの地点でコース、駐車場をさまよって出口を探し出したが、どうにか勝利のゴールを迎えることになり、すべての力を使い尽くしたかのようにそこにへたり込むことになった。本命と言われながらも、結果がともなわなかったシーズンがやっと開幕したかの印象を残すことになった。

だが、次戦コルシカでは誰も追い付けられないほどの速さをみせて連勝が確実と思えた矢先にエンジンを壊してリタイア。勢いが上向きに転じる兆しがあったものの、シーズン序盤の懸念はふたたび現実のものとなり、それからの戦いは困難を極めることになった。そのきっかけとなったのは、アルゼンチンでの大きなクラッシュだった。

アルゼンチンは2年前にキャリア初勝利を獲得した思い出のあるラリーだが、彼は二日目に8回転の大きなクラッシュに見舞われてしまう。人生で最悪だったとふり返ったこのアクシデントはけっして自身の愚かなミスでなかったと首を横に振り、このとき初めてC3への不満を露わにした。

ミークはクルマに自信が持てないままにさらにポルトガル、サルディニアとクラッシュを繰り返すどん底状態、ついにポーランドではシートを外されることになる。チームはここに至ってやっとミークの不振の原因がC3にもあったことを認めてはいるが、ミークの不調は止まらない。およそ1カ月半ぶりに復帰したフィンランドでは昨年の素晴らしい勝利が幻だったかのような散々な結果に終わり、さらにドイツでは本格的にスタートする前に木曜日の夜のスーパーSSでサスペンションを壊すという信じられないミスを犯すことになった。

だが、ふたたびシートを外される危機さえ噂されたなかで迎えたスペインで、ミークはグラベルステージを初日からリード、二日目以降のターマックでは完全な独走劇をみせてチームにとっての今季2勝目を飾ることをになった。ゴール地点で家族に復活を祝福されたミークは、「チームにとっても僕にとっても難しい時期を過ごした。この勝利によってチームが忘れかけていた士気を取り戻すことができたことが重要だ」と最高の笑顔をみせた。

ミークは、ホームイベントのラリーGBでは天気次第ではふたたびC3の速さを証明できると確信していたが、チームは予算不足のためにウェールズでプレテストすることができず、変わりやすい路面コンディションのなかでギャンブルのセッティングで立ち向かった彼は失速することになる。2勝を飾ったが、落差の激しいローラーコースターはこの先、どのような未来へと向かうだろうか。

生年月日:1979年7月2日(38歳)
選手権ランキング:7位
獲得ポイント:77点
ベストリザルト:1位
優勝回数:2回
2位の回数:0回
3位の回数:0回
表彰台回数:2回
出場回数:12回
ベストタイム回数:20回
リードしたステージの数:38SS
リタイア数:5回
ラリー2の回数:5回
パワーステージ勝利数:0回
パワーステージ獲得ポイント:11点