WRC2018/01/05

イングラシア、引退を悩みながらも戦う決断

(c)M-Sport

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 ジュリアン・イングラシアは、「昨年のある時点ではこの冒険を続けるかどうか分からなかった」と明かし、WRCからの引退について悩んでいた事実を認めた。しかし、彼は昨年、表彰台のトップに自分の居場所があることを証明したことによって2018年もふたたび戦いを続けることを決断したと語った。

 昨シーズンの終盤で、セバスチャン・オジエとイングラシアが引退するかもしれないとのニュースが続き、彼らがシトロエンへ移籍しなかったのはオジエが契約金の問題で不満をもったためだとの報道もあった。

 だが、イングラシアはこれらが事実ではないと否定。WRCのトップにとどまり続けるためには、あまりにもたくさんのエネルギーが必要であり、そうした努力を続けることへの疲れや健康上の悩みが彼自身にはあったと明かしている。

「そうだね・・・過去数年間、僕とセブはたくさんのエネルギーを費やしてきた。2012年は新しいポロWRCを開発するという非常に大きな課題があり、僕たちは開発車両のテストで8000km、ラリーで約4000kmを(シュコダ・ファビアS2000で)ドライブし、270日間国外にいた。そして多くのラリーを勝利したが、僕たちは2013年から2016年の間も変わらず努力を続けた。2015年と2016年は特に大変だった。ルールによって僕たちはラリーの80%(初日と2日目)で道路を切り開かなければならなくなったが、それは不公正で受け入れ難かった。何よりも、常に道路を一番手でドライブすることは、もはや楽しくなかった。マシンはズルズルと滑り、グリップを得ることができず、後方のドライバーたちがミスを犯さない限りは、自分たちがラリーに勝利することは不可能だと知っていた・・・。全体的に言って、僕たちはそれについて完全に憤慨してうんざりしていたと言える。そして2017年は再び難しい挑戦となることを知っていた。しかし、僕たちは最後の瞬間に出会ったこの新しいチームと可能な限り激しく戦いたいという高い意欲を持っていた」

 イングラシアはフィンランドでクラッシュした際に激しい脳震盪によってラリー2による再出走を断念、医師の診断によって2週間安静にしたあと次戦ドイツにも出場している。しかし、彼は実際にはその後、何カ月も体調不良に悩まされており、そうした健康面での不安が引退を考えた大きな理由の一つとしてあったと告白している。

「それにもかかわらず、個人的には、僕はこの数シーズンの『WRCスピリット』について少し失望してきた。2011年以来、僕は競技、セーフティ、プロモーションを改善するために自発的に参加しようとしてきた。何度も何度も、主催者、プロモーター、FIAへフィードバックや意見、ソリューションを提供しようとしてきた。しかし僕の意見に耳を傾けてもらえることはほとんど無かった。そして徐々に、僕はこのスポーツが楽しくなくなってきたと感じるようになった。レギュレーションやルールだけがどんどんと増え、他のクルーや観客、自分たちのチームと分かち合う時間がどんどん少なくなっている・・・。2017年は健康上の問題もあった。特にフィンランドでのクラッシュの後、かなり深刻なトラブル(頭部、背中など)に悩まされた。だから、ある時点では確かに僕はこの冒険を続けるかどうか分からなかった」

「しかし、その後、僕はすべてのことについて考え、いくつかのことに気付いた。怒ったり、うんざりしたり、傷ついている時に下す決断は、常に良い選択ではない。だから僕は9月末にそれについて考える時間を作った。僕は、それらのすべての問題にもかかわらず、僕たちはなんとか2017年にタイトルを獲得することができたので、そのことは僕たちを将来に向けてますます強くしてくれるだろうと考えた。今シーズン、僕は多くのことを学んだので、引退する前にそれらをすべて活かしたい。そしておそらく最後の決め手となったことは、僕がWRCのトップに自分の居場所があることを証明したことだ。だから僕は、実力で僕たちを倒せる相手に僕たちの場所を渡す時が来るまで出来る限り頑張るつもりだ」