WRC2017/04/30

エヴァンス首位キープもヌーヴィルが大接近

(c)M-Sport

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 世界ラリー選手権(WRC)第5戦ラリー・アルゼンチンのDAY2は、エルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)が前日に続いて首位をキープしたものの、終盤にリヤのエアロにダメージを受けたあとにタイムをロス、ティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)が11.5秒差に迫っている。

 エヴァンスは初日、後方からの走行のポジションに助けられたこともあって55秒ものリードを築くことができたが、DAY2はスタート順が前日までの順位のリバースとなる。ライバルたちと同じ走行条件で走ったときに、はたしてどこまでの速さをみせるか注目されることになったが、彼はタンティからヴィージャ・ブストスまでの20.80kmで行われたオープニングSSでも引き続き好調な走りをみせて、このラリーで7回目のベストタイムを奪ってスタートすることになった。

 エヴァンスから0.8秒差の2番手タイムで続いたのはヌーヴィル。彼は朝日に視界を奪われてあわやコースオフしそうになり、右リヤタイヤがリム落ちしていたにもかかわらず運良く大きくタイムを落とすことなく、油圧に問題を抱えたマッズ・オストベルグ(フォード・フィエスタWRC)を抜いて2位へと浮上することになった。

 だが、ここまでいいペースを維持してきたエヴァンスに連続して不運が襲う。彼はSS11でフロントタイヤをスローパンクして6秒を失い、さらにSS12でもステージ終盤でペースノートを少しロストしてワイドになり、リヤタイヤをパンクしたために12秒近くをロス、朝のループを終えて彼のリードは44.1秒へと減ってしまった。

 エヴァンスより先にSS12を走り終えたヌーヴィルは、SS10でパンクしてスペアを使いはたしているため、「これ以上パンクすることは許されなかった。そこらじゅうが岩だらけだったからね」と語り、このまま無理して追撃するリスクより選手権を争うセバスチャン・オジエに意識をシフトしてペースを落としたと語っていたものの、エヴァンスの失速によって午後にむけた戦略は大きく変ったはずだ。

 デイサービスでトランスミッションを交換して午後のループへとむかったヌーヴィルは、SS13こそフロントデフのフィーリングに慣れずに5番手タイムに留まることになったが、エヴァンスにまたしても問題が発生する。エヴァンスは外れかかったバンパーを引きづりながらフィニッシュ、幸いにもタイムは4番手とそう悪いわけではなく、45.5秒をリードしているものの、リヤディフューザーを失って空力のバランスを欠いた影響は次のステージではっきりとタイムに表れることになる。

 SS14のロングステージでベストタイムを奪ったヌーヴィルに対してエヴァンスは15.1秒をロス、さらに SS15でも連続してベストタイムを奪ったヌーヴィルはエヴァンスとの差をここでも18.9秒を縮めることに成功、エヴァンスのリードはわずかに11.5秒に減ってこの日を終えることになった。

「スロースピードでスピンしてしまった」とエヴァンスはステージエンドで苛立たしそうに語ったが、このままあっさりと引き下がるつもりはなく、最終日は首位を死守する決意だと語っている。

「(ディフューザーを失ったことは)大きな問題ではなかったが、自信がもてなくなった。しかし、2位になるためにここまで戦ってきたのではない。やるならやりかえすまでだ」

 2戦連続の勝利を視野に捕らえたかに見えるヌーヴィルは、「明日の戦いはハードになるだろうが、このようなタフなコンディションでも僕らの車はとてもうまくいっているように思う」と最終日の逆転に自信をみせている。

 いっぽう、二人の後方の表彰台をめぐる争いは二日目に大きく動き、初日を5位でオット・タナク(フォード・フィエスタWRC)が大きく躍進して3位に浮上することになった。
 
 タナクは朝のループで、セバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)を逆転して4位に浮上、SS13でベストタイムを奪って朝のループのウォータースプラッシュでリヤのディフューザーを失ってタイムを落としたオストベルグを捕らえて3位にポジションを上げることになった。

 タナクはさらにSS14ではヌーヴィルと並んで連続してベストタイムを奪い、ヌーヴィルとは15.3秒差、首位のエヴァンスまで26.8秒差に迫ることになった。

 オジエは一番手ポジションでの路面掃除から解放されたにもかかわらず、不運な一日を嘆くことになった。SS10のウォータースプラッシュでハーフスピン、さらにSS11でもリヤデフの問題に見舞われてタナクの逆転を許すことになった。サービスで問題が解決したあとも、彼はペースが上がらず、タナクからは23秒遅れとなってしまった。

 5位には ヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)が浮上、初日の横転によって上位の望みはすでに断たたれているヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20クーペWRC)が6位で続いている。また、ユホ・ハンニネン(トヨタ・ヤリスWRC)はこの日も前日と同様のエンジンパワーが上がらない問題に悩まされて7位にとどまっている。

 金曜日に横転してリタイアとなったクリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)はラリー2によってリスタート、朝のループでは自信を取り戻したように2つのベストタイムを叩きだしたが、SS14でふたたび横転してマシンを大破、またもリタイアとなってしまった。また、リヤディフューザーのないままずるずるとタイムを落としてきたオストベルグも同じくSS14でサスペンションを壊して不運なリタイアとなってしまった。

 最終日に残されたのは3SS/55.28kmのみ。はたしてエヴァンスが逃げ切って初優勝を飾るか、それともヌーヴィルが逆転を成功させるか。エル・コンドル、ミナ・クラベーロ〜ジュリオ・セザレというWRCでもっともドラマチックなステージが決戦の時を待っている。