WRC2018/01/29

オジエ、5年連続モンテ優勝、タナクが殊勲2位

(c)M-Sport

(c)Toyota

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 2018年WRC世界ラリー選手権開幕戦ラリー・モンテカルロは、Mスポーツ・フォード・ワールドラリーチームのセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)が最終日も首位を守りきり、2014年以来、5年連続となるモンテカルロでの勝利を飾った。また、今シーズンからトヨタGAZOOレーシングWRTに移籍したオット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)が2位でフィニッシュ。タナクは移籍後、最初のラリーでトヨタ勢トップの位置を獲得した。

 木曜日に開幕した2018年ラリー・モンテカルロは、4日にわたる戦いの末、日曜日にようやく最終日を迎えた。前日の夜、クルーたちはサービスが置かれていたギャップから240kmに渡る移動を経て、モナコに置かれたパルクフェルメに到着。以前はモナコ港の付近にサービスが設けられていたが、近年のラリー・モンテカルロは最終日がノーサービスの1日となっている。今年も日曜朝のサービスは行われず、タイヤフィッティングゾーンでタイヤ交換のみを行って、ドライバーたちはステージへと向かった。

 日曜日はモナコを見下ろす山岳地帯で2つのSSをリピートする、合計4SS/64.98kmという短い一日だ。しかし、その中にはラリー・モンテカルロを象徴するチュリニ峠へのヒルクライムがあり、一瞬も気を抜くことができない難しいステージが待ち構えている。最終日の天候は晴れだが、チュリニ峠を超えてダウンヒルになると雪や凍結が予想されていた。

 このようなコンディションゆえ、ドライバーたちはタイヤ選択に悩まされた。結果、オジエ、タナク、ラトバラ、ラッピ、ミークらトップ5につけるドライバーたちはスタッド付きウィンター2本+スーパーソフト2本+ソフト2本と、安全と思えるタイヤ選択を行った。初日SS1のコースオフで4分をロスして表彰台争い圏外となっていたティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)はスタッドタイヤを選ばず、ソフト4本、スーパーソフト2本を選択した。

 最初のステージとなるSS14、ラ・ボレーヌ・ヴェジュビーからベイラ・カヴァへの18.41kmは、有名なチュリニ峠の頂上へと至るヒルクライムがある。ダウンヒルの凍結は想定内だったが、グラベルクルーたちが通った後に気温が下がったため、アップヒルでもブラックアイスが潜んでいたため、ドライバーたちはコンディションに手を焼くことになった。さらにペイラ・カヴァに向かう下りの道はかなり凍結しており、ドライバーたちが口を揃えて「トリッキーだ」とコメントした。

 2位のタナクに対して33.5秒のリードを得ていたオジエが、このステージでミスのない走りを披露し、トップタイムをマークした。タナクは「プッシュしたいヤツは勝手にやればいい。このコンディションでは僕はそこまで無理はしようと思わない」と、オジエを追いかけず2位を守ることに集中するようだ。

 ポジションキープに努めるのは、タナクだけではない。トリッキーなコンディションに加え、トップ5のドライバーたちは皆、前後にタイム差があることから、果敢にプッシュするよりも安全な走りに徹する考えのようだ。そんな中、唯一激しい争いを繰り広げていたのが、6位につけるエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)と7位のヌーヴィルだった。

 SS15、ラ・カバネットからコル・ド・ブローに至る13.56kmのステージでも、困難な路面がドライバーたちを苦しめた。グラベルと霜がひどく、ルーズグラベルの中にブラックアイスが隠れているという状況だ。ここでは、ヌーヴィルがトップタイムを叩き出した。エヴァンスはアンダーステアに苦しみタイムが上がらず、ヌーヴィルとの差が縮まっていく。

 SS14のリピートとなるSS16では、日が当たる場所はドライ。しかし、チュリニ峠に向かうにつれて路面に凍結が目立つ。SS14ではスタッド付きタイヤを選択したドライバーたちもスーパーソフトとソフトに履き替え、ほぼ全員が同じタイヤを装着している模様。このステージでもヌーヴィルがトップタイムをマーク。エヴァンスもプッシュするが、ヌーヴィルより1.5秒遅いタイムとなり、2人の差は7.2秒となった。ラッピがスノーバンクに突っ込んでタイムをロスするものの、4位のポジションは保持。ラッピはミスによってスーパーソフトを使い切り、最終ステージではスタッドタイヤを履かなければならないと述べたが、5位クリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)との差は18.6秒あることから、2位タナク、3位ラトバラ、4位ラッピとトヨタ勢の2-3-4位はほぼ確実と思われた。

 しかし、最後まで一瞬も気を抜くことができないのがラリー・モンテカルロの恐ろしさだ。最終のパワーステージSS17で、ラッピがグラベルに乗ってしまいリヤを滑らせてコースオフ。幸いコースに復帰できたものの、4位から7位に転落してしまった。

 6番目にスタートしたヌーヴィルが、それまでで最速タイムを刻んだ。次に出走したエヴァンスはそれまでで4番手タイムとなり、ヌーヴィルに対して総合6位の座を明け渡すこととなった。その後にステージを走り終えたミークがさらに速いタイムをマークしてパワーステージを制し、総合4位に入った。

 ラトバラがステージ4番手タイムでフィニッシュし、総合3位を獲得。前年の最終戦オーストラリアではパワーステージでクラッシュしたため、「この順位でフィニッシュできて本当に嬉しい。オーストラリア以来、大きなプレッシャーを感じていた。ようやく肩の荷を降ろすことができた」と、安堵の表情をあらわにした。

 トヨタでのデビュー戦となるタナクは、ステージ6番手という無理のない走りで総合2位を守り切った。「本当に満足しているよ。シーズンをこのような形でスタートできて、とてもホッとしている。チームを切り替えるときは常にワクワクするが、何が待ち受けているかは全く分からなかった。だから本当にホッとした。チームもマシンも素晴らしかったよ」と、喜びを見せた。

 最後に出走したオジエはステージ5番手のタイムでフィニッシュ。最終的に、タナクに対して58秒ものリードで開幕ラウンド優勝を手にした。ラリーのベースがオジエの出身地ギャップに移った2014年以来、5年連続でモンテカルロを制している。しかし、地元出身というアドバンテージがあっても、オジエはこのラリーが決して簡単ではなかったと述べた。

「難しい週末だった。モンテで厳しいコンディションに直面することはよくあることだが、今回はとてつもなく難しかった。タイヤチョイスにこんなに苦戦したのは初めてだ。だが最終的には勝利できたので、最高に幸せだよ。今季も良いスタートが切れたことをチームに感謝しなければならない。今週末はどのドライバーもミスをしたし、僕もした。だが僕のミスの回数が若干少なかった」

 事実、オジエは何度かスピンを喫している。しかし、ほかのドライバーに比べて失ったタイムが少なかったため、順位を失うことなく最終日を終えることができた。そしてオジエは今年もふたたび選手権リーダーとして第2戦を迎えることになる。

 次戦はラリー・スウェーデン。WRCで唯一スノーコンディションで行われるラリーは2月15〜18日に行われる。