WRC2025/09/14

オジエがチリをリード、エヴァンスと熾烈首位争い

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 2025年世界ラリー選手権(WRC)第11戦ラリー・チリ・ビオビオは雨となった土曜日にリーダーボードは完全にひっくり返ることになり、セバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリスRally1)がトップに浮上、エルフィン・エヴァンス(トヨタGRヤリスRally1)が6.3秒差の2位で続き、チャンピオンシップを争うトヨタGAZOOレーシング・ワールドラリーチームのチームメイト二人が激しいバトルを演じている。

 13日土曜日はビオビオ川の南が舞台となり、ペルン(15.65km)、ロタ(25.64km)のあとラリー最長のマリア・ラス・クルーセス(28.31km)の3ステージのあとに行われるコンセプシオンでミッドデイサービスを挟み、午後も同じ3ステージをループする6SS/139.20kmという一日となる。

 オープニングステージのSS7ペルンは雨は上がっていたものの、昨夜のうちに何度か雨が降ったのか、ウェットコンディションだ。さらにスタートしてすぐにふたたび強い雨が降り始め、コースは後続になるほどヘビーウェットでスリッパリーなコンディションとなった。

 ここでベストタイムを奪ってスタートしたのは、前日のリタイアのあとリスタートに回ったオイット・タナク(ヒョンデi20 N Rally1)だ。波乱となった金曜日、彼は首位で迎えた最終ステージでエンジンを壊して無念のリタイアとなったため、スペアエンジンに交換している。トップ10圏内から7分以上遅れた総合27位に沈んでいるだけに、明日のスーパーサンデーのポイントを狙うしかない状況だ。

 タナクの走行後、後方ではラリーカーが走るたびに路面はますますトリッキーになり、金曜日に遅れをとって早い走行順でスタートしたドライバーたちにとっては追い上げる絶好のチャンスが到来することになった。

 なかでも金曜日の午後、トップから5位まで転落したエヴァンスは、まるで地元のウェールズを思わせるマディなステージで快走、タナクからわずか1.4秒差の2番手タイムを記録することになった。
 
 エヴァンスがフィニッシュした時点では、後方を走るトップ4のドライバーたちのペースも自身の速さも正確につかむことはできない。「かなり雨が降っていて、ところどころ泥があって、コンディションも変化しているので、実際自分たちどう走れているのか判断しにくいが、どうやら順調のようだ」とエヴァンスは語った。

 しかし、後方のドライバーたちはエヴァンスのタイムから大きく遅れをとることになる。3位につけているオジエはエヴァンスのタイムを知るや、自身が15秒も引き離されて逆転されたことに愕然する。エヴァンスは、オジエとともにサミ・パヤリ(トヨタGRヤリスRally1)を一気に抜き去って3位へと浮上、トップグループを形成するヒョンデ勢にも肉薄する。ラリーリーダーのアドリアン・フールモー(ヒョンデi20 N Rally1)もここではエヴァンスから9.3秒遅れ、ティエリー・ヌーヴィル(ヒョンデi20 N Rally1)も10.9秒も遅れてしまい、エヴァンスはヌーヴィルの1.3秒後方に近づき、トップからもわずか3.8秒遅れにしかすぎない。
 
「とてもタフなステージだった。轍には水が溜まっていて、グリップが常に変わるから、できるだけクリーンに走るよう心がけた」とフールモーはトップを守ったことに安堵したかのように語った。彼の敵はもはやチームメイトだけではないことにこの時点では気づいてないようだ。

 エヴァンスとともにこの雨のステージで大きく追い上げたのは、4番手からスタートしたカッレ・ロヴァンペラ(トヨタGRヤリスRally1)だ。金曜日にパンクで1分以上遅れをとった彼はここで、ルーフのベンチレーターから雨水がコクピットに侵入するという問題を抱えながらも3番手タイムを奪い、Mスポーツ・フォードのグレゴワール・ミュンスター(フォード・プーマRally1)を抜き去って7位へとポジションアップ、チームメイトの勝田貴元(トヨタGRヤリスRally1)に4.8秒差に迫ってきた。「クルマに水が漏れまくっている。たった1つのコーナーでは、ルーフから500mlほどの水が顔に直撃してきて、本当にひどい状況だった」とロヴァンペラは苦笑した。

 SS8ロタは雨が上がって青空が広がっているエリアもあるが、水たまりのあるフルウェットコンディションとなった。ここでも前方のドライバーたちは水分を含んで硬く引き締まったグラベルで速さをみせることになり、エヴァンスはヌーヴィルを抜いて2位へと浮上、首位のフールモーに0.9秒差に迫ることになった。

「正直に言って、僕にとってはかなり良いステージだった。ただ、深い轍の中でマシンのバランスに苦戦している」とヌーヴィルはタイムロスについて説明した。

 後方になるほどドライバーたちはタイヤに磨かれてスリッパリーになっているブレーキングゾーンに手を焼き、クルマが通るたびに泥がかき出されたコーナーに苦戦している。フールモーはエヴァンスの速さを冷静に受け止めながらも強気にペースを守っていくと語った。「まるでラリー・ウェールズみたいだね。エルフィンはこういうコンディションで本当に強い。ここまでの路面は磨かれてきている。だが、なんとかこのまま自分たちをしっかり保つことができれば、すべてが可能だ」

 トップ争いは熾烈だ。ヌーヴィルの後方0.6秒差にはオジエが迫ってきた。首位のフールモーから5位のオジエまではわずか4.9秒差しかない。

 ラリー最長となる28.31kmのSS9マリア・ラス・クルーセスでフールモーは、2番手タイムを奪ったエヴァンスよりも10.2秒も遅れてトップを譲っただけでなく、3番手タイムを奪ってヌーヴィルを抜き去ったオジエにも逆転を許し、一気に3位に後退して朝のループを終えることになった。

「リヤにまったくグリップがなくて、クルマのバランスを保ちながら走るのはとても難しかった、タイヤも消耗していた。この状態を考慮すれば、まあまあいいタイムだったと思う」。彼は首位のエヴァンスから9.3秒遅れだと聞いても少しも動じず、「ここでのその差は大したことではない」と強気に答え、キャリア初勝利を諦めるつもりはない。

 1日ぶりに首位に返り咲いたエヴァンスは、「まあまあ普通だった」と控え目に答えたが、この雨の逆転劇をまるで予想して昨日の午後ペースを落としたのだろうか。後続のオジエも朝のステージのあとは目が覚めたかのような走りを取り戻し、エヴァンスの5.6秒後方に続いている。

「ウェールズ出身の彼はまるで母国のペースで走っているようだったが、僕たちは最初のステージでは明らかにまだ眠っていた。順位的にはうまくいかなかったが、その後は幸運にも目が覚めて良いリズムを見つけることができた」と、2位に浮上したオジエは語った。
 
 これでトヨタのチームメイト同士のトップ争いに変わることになったが、オジエはこの展開をひどくうれしがっているようだった。「まさにこうあるべきだと思う。僕たちも含めて、誰もがこのような戦いを楽しんでいるだろう。しかし、まだもう一歩上がらなければならない。それが僕たちの目標だ。午後は午前よりも力強く、昨日と同じ調子で続けなければならない」

 土曜日の朝、速さをみせたのはエヴァンスとオジエだけではない。前ステージでスピンを喫した勝田を抜いて5位へと浮上したロヴァンペラは、ここでは、なんとエヴァンスを7.3秒も上回る圧倒的なベストタイムを奪い、35.2秒もあったパヤリとの差を16.3秒へと縮めてきた。4位のヌーヴィルとは26.3秒差だ。「かなりうまくいった。このステージはグリップが最高だった。悪くない、まずまずの走りだった」とロヴァンペラは説明した。

 勝田は前のステージのスピンでロヴァンペラだけでなく、ミュンスターにも抜かれてしまったが、ここでは4番手タイムと勢いを取り戻してミュンスターの6.9秒後方に迫っている。

 朝の2つのステージでもベストタイムを奪ったタナクは、明日の最終日のためにマシンとタイヤを温存するためにこのステージの前に戦略的なリタイアを決めている。

 サービスパークでは午後のループに向けたタイヤチョイスにドライバーたちは頭を悩ますことになった。このループはザラザラとした非常に荒れた路面でタイヤへの攻撃性は高く、雨でウェットとなったにもかかわらず、朝のループではソフトタイヤの摩耗に驚くことになったと多くのドライバーがコメントしていたが、ドライとなった午後のループでは予想以上にルースグラベルも多く、ソフトをオプションとして組み込んだチョイスが正解だったかもしれない。

 午後のオープニングステージとなったSS10ペルンはほぼドライコンディションとなり、朝のループで速さをみせたロヴァンペラはオールハードのためルースグラベルのクリーニングに苦戦することになり、オジエが最速タイムを奪ってみせた。彼はラリーをリードするエヴァンスとの差をわずか2.7秒まで縮め、チームメイトにプレッシャーをかけた。「今朝は本当に良くなかったけれど、この2回目の走行ではリズムを取り戻せてよかった」とオジエは笑みをみせた。

 3位につけるフールモーは、ベストタイムを奪ったオジエから7.3秒も遅れてしまい、トップのエヴァンスとの差も13.7秒へと広がり、キャリア初勝利が少しずつ遠ざかる。それでも彼は「最後まで戦い抜く。この戦いに参加できて素晴らしい」と語った。

 それでもフールモーは長いSS11ロタで渾身の走りをみせたにもかかわらず、トップタイムのオジエから7.8秒も遅れてしまい、首位からは18.8秒もの遅れとなってしまったことが悔しかったのか、ステージエンドのインタビューエリアでコメントを拒んで走り去る。

 オジエはこのステージでもエヴァンスに3.7秒差をつけることに成功、わずか1秒差ながら逆転してついにラリーリーダーとなっている。

 土曜日最後のステージのSS12は、ラリー最長のマリア・ラス・クルーセスのリピートだ。オジエが3連続のベストタイム、ここではエヴァンスに5.3秒差をつけ、リードを6.3秒へと拡大して土曜日を終えることになった。「いいことだが、フィニッシュの瞬間まで緊迫したバトルになりそうだよ。明日の朝は、ここ2日間のようにはならず、しっかり目を覚まして臨まなければならない。エスプレッソを2杯飲むつもりだ!」とオジエは満足そうにひたいの汗をぬぐった。

 エヴァンスは、オジエがハードなプッシュを続けながらも自身よりもタイヤを温存していたことを知って、軽いショックを受けたことを認めた。「ちょっとしたタイムのロスに正直驚いたよ。僕らはこのステージのためにタイヤを温存して全力を尽くしたんだけどね」

 3位のフールモーは、最終的に首位のオジエに26.8秒の差をつけられて土曜日を終えている。「今日はライバルたちが本当に強かった。全力を尽くしたが、僕たちには何かが欠けていた。本当に残念だ。でも前進し、学び続ける。かなり悔しい一日だった。現時点で3位以内というのは前向きな結果だが、僕たちはそれ以上が欲しい」

 フールモーから14.9秒遅れの4位はヌーヴィル。彼はライバルたちよりハードを多く選び、明日にソフトを温存したが、果たして明日のスーパーサンデーでポイントの巻き返しはできるだろうか。パヤリは16.3秒差まで迫っていたロヴァンペラを午後の3ステージともに上回る速さをみせて、その差を32.8秒へと朝の時点での振り出しにもどすパフォーマンスをみせ、おまけにヌーヴィルに8.7秒差まで迫っている。

 ロヴァンペラは路面がドライとなった午後のループで完全に精彩を欠き、6位のままこの日を終えることになった。それでもオールハードで午後をしのいだ彼は、明日の最終日に向けて多くのソフトタイヤを温存することに成功したはずだ。「ここまでで一番悪いステージだった。ラインも無く、完全にドライで、グリップは非常に低かった。ほとんど何もできなかったよ」

 勝田はこのステージでついにミュンスターを捕えて7位でフィニッシュしている。スピンはあったものの、朝のループの最後のステージでは4番手タイム、午後のループでも2度の5番手タイムを奪い、スタートポジションを考えればまずまずのパフォーマンスをみせたが、それでも彼は自身のペースには少しも満足していない。「改善しなければならない。さもなくば、この週末は最悪になってしまう。明日はベストな一日にしたいよ」

 最終日はビオビオ川の南を舞台にした4SS/54.80kmという短いルートだが、スーパーサンデーとパワーステージのボーナスポイントがかかった重要な一日となる。どれだけの数のコンディションの良いソフトタイヤを最終日に向けて温存することができたかが勝負の行方を左右することになるかもしれない。