WRC2025/05/18

オジエがポルトガル7勝目、タナクが逆襲2位へ

(c)Toyota

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 2025年世界ラリー選手権(WRC)第5戦ラリー・デ・ポルトガルは、セバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリスRally1)が最終日もトップを守りきって今季2勝目を飾り、ポルトガルでの通算勝利記録7勝を達成した。また、前日のパワーステアリングのトラブルでトップを失ったオイット・タナク(ヒョンデi20 N Rally1)が最終日も5つのベストタイムで追い上げてカッレ・ロヴァンペラ(トヨタGRヤリスRally1)を逆転、2位でフィニッシュしている。

 ラリー・デ・ポルトガルは最終日も、マトジニョスのサービスパークから北東エリアに向かい、昨年は土曜日に行われたパラデス(16.09km)とフェルゲイラス(8.81km)のあと、ペドラ・センタダの大きなジャンプでゴールを迎えるファフェ(11.18km)をノーサービスで2回ループする。ファフェの2回目の走行がパワーステージとして行われる。6SS/72.16kmの一日となる。

 最終日のコースはルースグラベルが多く、パンクのリスクも低いとの分析からすべてのドライバーはタイヤ5本を搭載、そのチョイスはいずれもがソフトコンパウンドタイヤを中心としたものだが、トヨタ勢はソフト4本とハード1本、ヒョンデとMスポーツ・フォード勢は5本ともソフトを選んでいる。このセットで最後まで走り切らなければならない。

 土曜日までの厳しい戦いを終えてオジエが27.6秒をリード、チームメイトのロヴァンペラが続き、トヨタは1−2態勢を築いているが、トラブルで遅れたタナクも8.5秒差で続いている状況だ。

 そして迎えた最終日はロヴァンペラの圧巻のベストタイムを奪い、オジエのリードはほぼ半分に縮まるというサプライズとともに始まることになった。

 16kmあまりのオープニングステージのSS19パラデスで、ロヴァンペラはオジエとの差を11.1秒も縮めるベストタイム、16.5秒差に迫ることになった。

ロヴァンペラは逆転勝利を狙っているのか聞かれたが、そのつもりはないどころか、けっしてマシンのフィーリングは良かったわけではないと打ち明けた。「優勝は信じていないよ。差が大きすぎる。マシンの感触はあまり良くなかったので、このタイムには驚いているよ。他のドライバーが何をしたのか分からない。(セットアップがよければ)もっと速く走れたはずだ」

 オジエは、ロヴァンペラのタイムにそう驚くわけではなく、涼しい顔だ。「カッレがそれだけ速く走れるのはわかっているよ。今日も長い一日だ。その最初のステージで、パンクのリスクを負いたくなかったんだ。まあ十分なタイムだ」
 
 4位につけるワールドチャンピオンのティエリー・ヌーヴィル(ヒョンデi20 N Rally1)がロヴァンペラに続く2番手タイムでスタート、チームメイトのタナクから表彰台を奪いさるべく、6.8秒差に近づいている。「まずまずだったけど、掃除がかなり多かった。とてもいいステージが走れた。これ以上ではきない。昨年よりもグリップが良かった」
 
 タナクは3番手タイムで3位をキープしているが、ロヴァンペラとの差は8.5秒から13.8秒へと広がってしまい、チームメイト同士のバトルに目を向けなければならない状況となっているが、「まあすべて順調だ」と語る彼の表情からその本音は読めない。

 タナクはSS20フェルゲイラスで突然目を覚ましたかのような走りで、ベストタイムを叩き出して反撃を開始、ロヴァンペラとの差を10.7秒へと縮めてみせる。

 タナクはさらにSS21ファフェでも2連続のベストタイムを記録、ロヴァンペラのリードをわずか7.4秒に縮めてみせた。

 ロヴァンペラはライバルが土曜日に見せたような速さを取り戻して再び戦いに復帰したことを知るも、これ以上ペースを上げることはできないと首を横にふる。「もうこれ以上は無理だ。今のクルマの状態でできる限界までプッシュしている。今はグリップがない。ミスもしてないが、ただ、でもこれ以上をやるためのグリップがないんだ」とロヴァンペラは語った。

 タナクはここまでの厳しい戦いの疲れがあることを認めつつも、やれることはやり続けるつもりだ。「やれることはやった。ジャンプの着地がちょっとハードだった。僕たちは懸命にプッシュしているが、とにかく体がだるいし、これ以上何ができるのかはわからない」。タナクはスーパーサンデーではロヴァンペラを抜いて暫定トップに躍りだしたした。

 オジエは引き続きラリーをリードしている。ロバンペラとの差は16.3秒。オジエは午前中ずっと安全策を取り、あまりタイムを失わないようにしている。「差は小さい。今日は天気が崩れないことを祈るだけだ」とオジエは語った。いまのところ青空は見られるものの、天気予報は昼過ぎから雨になると伝えており、山岳エリアの雲行きはあやしくなり始めている。

 ヌーヴィルには朝の時点ではタナクに近づくチャンスも残されているかに見えたが、すでにその差は14秒へと広がってしまう。路面を覆うルースグラベルのため、よりクリーンな路面を走る後方のドライバーを追いかけることはリスクが高すぎるため、4位を守ることが重要だと彼は判断したようだ。「ものすごい路面掃除で、どうすることもできない。今日は全くチャンスがない。週末を通してずっとそうだったのでよくわかる。ルースでリヤのグリップに苦労している」

 勝田貴元(トヨタGRヤリスRally1)は総合5位をキープし、その後方ではサミ・パヤリ(トヨタGRヤリスRally1)の後方にはエルフィン・エヴァンス(トヨタGRヤリスRally1)が3.2秒差に近づいている。

 エヴァンスは選手権リーダーとして金曜日を一番手で走行したことで路面清掃で苦戦を強いられたが、土曜日もペースは上がらず、一日がかりでパヤリを抜くことができなかった。

 それでも最終日、パヤリも日曜日の朝からペースを上げられず、パラデス・ステージの2回目の走行となるSS22で、エヴァンスはついにパヤリを抜いて6位にポジションを上げることに成功する。

 だが、それは戦略なのか? とRally.TVのステージエンドレポーターは疑問を投げかける。パヤリは前ステージでもエヴァンスより遅かったことについて聞かれ「僕たちはワンチームだから無理してプッシュする意味はない」と語り、ここでも「僕らは独自の戦略を持っており、それを貫くだけだ」とコメント、まるでチームメイトのチャンピオンシップポイント獲得を最大化するための戦略があるかのようだ。

 ラリーリーダーのオジエは、SS22を終えてチームメイトのロヴァンペラに16.5秒差をつけてリードしているが、ロヴァンペラへのタナクからのプレッシャーはさらに大きくなっている。ステージは滑りやすく、しかも2回目の走行では予想以上にかき出された石も多くリスキーだ。それでもタナクはここでもベストタイムを記録し、ロヴァンペラに3.7秒差をつけて勝利、ライバルとの差をわずか3.7秒に縮めてきた。「今のところ、このステージはまさに宝くじのように石だらけだ。プッシュすることとタイヤを長持ちさせることのバランスを取るのが難しい」

「グリップが足りないのでスライドが多すぎる。今はこれが精一杯だ」とロヴァンペラも諦め顔だ。

 タナクは、フェルゲイラスの2回目の走行となるSS23でもベストタイムを叩き出し、ついにロヴァンペラを抜きさり、1.5秒差をつけて2位へと浮上する。オジエは総合首位を維持しているが、タナクはオジエのリードを6.6秒縮めることに成功し、その差を13.6秒としたが、それでももはや残されているのは最終ステージのファフェのみだ。

 そして迎えたファフェの最終ステージ、オジエはここでは5番手タイムにとどまったが、このポルトガルでの記録的な7度目の勝利を飾ることになった。41歳の彼は15年前にキャリア初優勝を達成したイベントで、いまもトップレベルで勝利できることを証明できたことを喜んだ。

「僕たちが何年にもわたって競争力を維持できていることは、本当に誇れることだと思う。素晴らしいマシンを用意してくれたチームに感謝したい」とオジエは語った。「この週末は本当に気持ち良いドライブができた。レースマネジメントは間違いなく僕たちの技術だということを、またひとつ証明できたと思う。数字は嬉しいものだが、一番重要なのは観客の前で得られるこの感動だ。彼らの声援が僕を後押ししてくれる」

 オジエは前夜、友人であるタナクの不運で優勝することは幸せな気分ではないと語っていた。しかし、ステージエンドにはタナクが勝者を笑顔で出迎え、「何度勝ったら気が済むのか」というジョークにオジエはやや涙ぐんでいた。

「オイットとは接戦だったが、残念ながら彼が問題を抱えてしまったことで最後までフェアな戦いをすることは出来なかった。彼の方が速かったのは明らかなので、トラブルがなければ僕たちは勝てなかっただろう。しかし、ラリーでは速ければいいというものでもない。フィニッシュして結果を持ち帰ることが大事で、それが僕たちがしたことだ」

 今季初優勝にはとどかなかったが、タナクは値千金の2位でフィニッシュ。パワーステージとともにスーパーサンデーにも勝利し、この週末の最大ポイントである28ポイントを奪ったオジエに匹敵する27ポイントを獲得することになった。「もちろん、昨日は残念な結果だったが、今日は良い一日だったと言わざるを得ない。幸いにも完走できたが、僕たちはトヨタ勢と競うにはまだあまりに脆いが、少なくともi20 Nの新しいシャシーのパフォーマンスは良い」

 ロヴァンペラは、表彰台を獲得したにもかかわらず、2位を守りきれなかった。さらにパワーステージで2秒も遅れて勝てなかったことに明らかに落胆していた。「オイットの方が速かったのは驚きではない。僕たちにとって長くて厳しい週末だった。良い出走順にもかかわらず、ペースが出なかったのは、本当に残念だ。明らかにペースが足りていないし、これ以上速く走ることができなかった。現時点ではマシンにはグリップもペースもないので、もっと取り組んでいかなければならない」

 ヌーヴィルは4位でフィニッシュ、表彰台にとどかなかったことを残念がったが、パワーステージでは2番手とスーパーサンデーでは3番手という上り調子でゴールを迎えている。「僕らはマシンと格闘し、ハンドブレーキを何度も使わなければならなかった。ベストなステージとは言えないよ。オイットのトラブルは、彼とチームにとって本当に残念だった。僕たちは今週末、もっと報われてもよかったはずだ。今はポルトに戻って休めることがうれしいよ。本当に疲れ果てた週末だった」

 ファフェのジャンプで大きな飛翔をみせた勝田が5位、選手権リーダーのエヴァンスは6位に終わり、日曜日のポイントを獲得できなかった。パヤリは7位でフィニッシュした。

 Mスポーツもセットアップに苦しんだ週末となり、ジョシュ・マクアリーン(フォード・プーマRally1)が8位、チームメイトのグレゴワール・ミュンスター(フォード・プーマRally1)が9位で続き、最終日にもパンクに見舞われたマルティンシュ・セスクス(フォード・プーマRally1)は15位に終わっている。

 また、金曜日にトップ争いのさなかにリタイアしてポイント圏外に大きく転落したアドリアン・フールモー(ヒョンデi20 N Rally1)は、日曜日のボーナスポイントを持ち帰ることに賭けていたが、最終ステージ直前にエンジンにオーバーヒートの問題があるためリタイアを余儀なくされた。

 第5戦ラリー・デ・ポルトガルを終えて、ドライバーズ選手権ではエヴァンスがリードをキープ、選手権2位のロヴァンペラが43ポイント差から30ポイント差へと大きく近づいた。オジエが32ポイント差の3位、タナクも52ポイント差という絶望的な状況から34ポイント差まで戻している。

 また、マニュファクチャラー選手権では、開幕から5連勝を飾ったトヨタが首位をキープ、ヒョンデに対するリードを51ポイントから55ポイントへとやや広げる結果になった。

 次戦は6月5〜8日に行われるラリー・イタリア・サルディニアとなる。