WRC2022/01/21

オジエがモンテ初日をリードもローブが6.7秒差

(c)Toyota

(c)M-Sport

(c)Hyundai

 2022年世界ラリー選手権開幕戦のラリー・モンテカルロが1月20日に開幕、トヨタGAZOOレーシングWRTのセバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリスRally1)が初日を2ステージとも制してリードを奪っているが、6.7秒差の2番手にMスポーツ・フォードWRTのセバスチャン・ローブ(フォード・プーマRally1)が続いており、ワールドチャンピオン同士の対決となっている。

 モナコのカジノ前広場でのセレモニアルスタートの後、ラリーカーは暗闇のなかアルプ・マリティーム山脈に向かう。レグ1は2SS/38.83kmとなり、リュセラム〜ラントスク(15.20km)のあとチュリニ峠を駆け抜けるラ・ボレーヌ・ヴェジュビー〜ムリネ(23.52km)を走る、2つのナイトステージの一日となる。

 SS1リュセラム〜ラントスクの気温は4度、ほとんどドライだが、いくつかのコーナーは湿ったコンディションとなっており、標高の高いところでは霜が下りているように見える。

 ここでベストタイムを奪ったのはオジエ。ハイブリッドRally1カーによる初ステージでの勝利でラリーをリードする。ダカールから戻ったばかりのローブが5.4秒差の2番手タイム、チームメイトのエルフィン・エヴァンス(トヨタGRヤリスRally1)が9.3秒遅れで続く。

 1番手でステージを駆け上がったオジエは、「このステージではあまりフィーリングが良くなかったが、なんとか切り抜けた。決して簡単ではない。かなり路面は湿っており、場所によっては霜が降りていた」と、あまりいい走りができなかったと感じたようだが、早くもライバルたちが驚くようなタイムで抜け出した。

 ただ一人、オジエに迫るタイムを奪ったローブは「山頂は濡れていたり凍っていたりと、トリッキーだった。氷の上でミスをしたくなかったので、少し慎重になりすぎた。とても良い感じだ。パワーもあるし、このマシンのフィーリングは最高だよ」とご機嫌な様子だ。

 4番手には、エヴァンスから3秒遅れでガス・グリーンスミス(フォード・プーマRally1)、さらに0.9秒差の5番手タイムにクレイグ・ブリーン(フォード・プーマRally1)、0.5秒差の後方には6番手タイムのアドリアン・フールモー(フォード・プーマRally1)が続き、Mスポーツ・フォード勢がヒュンダイ勢を抑えて上位を占めた。

 ここでトップ6のタイムを出したドライバーたちはいずれもこのステージで4本ともソフトタイヤを装着、スペアを1本搭載していたのに対して、全車ともにスペア2本を搭載したことがヒュンダイ勢のハンデになったのかもしれない。

 さらにティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20 N Rally2)はソフトとスーパーソフトを2本ずつクロスに装着するというギャンブルに出たが、15.9秒もの大きな遅れを喫して7番手に沈んでしまった。「難しかった。もっと速く走ることはできなかったし、ステージのかなり早い段階でブレーキを失い、タイヤもダメになってしまった。この週末はソフトタイヤが20本しかないので、今日は少し妥協することにしたんだ・・・」

 インターコムに問題を抱えたオリヴァー・ソルベルグが8番手(ヒュンダイi20 N Rally1)、オイット・タナク(ヒュンダイi20 N Rally1)は明らかにおかしなエンジン音のマシンで9番手に沈むことになる。勝田貴元(トヨタGRヤリスRally1)も原因不明の技術的なトラブルに首を傾げながら10番手タイム、スピンで遅れたカッレ・ロヴァンペラ(トヨタGRヤリスRally1)が11番手と出遅れた。

 SS2はモンテカルロの象徴的なチュリニ峠を駆け抜けるラ・ボレーヌ・ヴェジュビー〜ムリネのステージだ。峠の頂上付近では霜が凍結したセクションはあったものの、例年なら雪が残る北斜面を駆け下りるステージ後半もほぼドライコンディションだ。

 ここでもオジエが連続してベストタイム、2番手タイムで続くローブとの差を6.7秒としてオーバーナイトリーダーとして初日を終えることになった。

 オジエは最初のステージより「少し良くなった」と語るが、まだ現状を完全に把握しているわけではないため、曖昧な笑みをみせた。「タイムは良くないかもしれないが、わからない。ちょっとずつ試しているところなので、無事に通過できてうれしい」

 ローブはステージ前半の上りのセクションでは5番手と出遅れたが、後半のダウンヒルで驚くべき速さをみせてオジエから1.3秒遅れ、エヴァンスを0.6秒上回る2番手タイムで、18カ月ぶりのWRC参戦とは思えない速さをみせることになった。「楽しかった。ステージはタイヤにとても厳しく、ステージ中盤の前にタイヤをオーバーヒートさせてしまい、その後はマシンのポジションを維持するのに苦労した。いいステージができたよ」

 初日を終えてエヴァンスは、首位のオジエから11.2秒差の3位。オープニングステージからタイムも明らかに向上することになったが、彼はハイブリッドのブーストになかなか慣れないと認めた。「ハイブリッドはかなりハードにプッシュしてくるから、それに慣れるのに時間がかかったし、以前とは全然違うんだ。どこもそれほどスムーズではなかった。かなり頑張ってプッシュしているが、慣れるのはとても難しいよ」

 ローブの躍進を裏付けるようにMスポーツ勢はそろって好調な走りを続けている。4番手タイムを奪ったフールモーがチームメイトのグリーンスミスに4秒差をつけて初日を4位につけることになった。「とても楽しかった。マシンはただただ素晴らしい。ダウンヒルで発揮されるパワーは格別だ。ステージ中、少しタイヤを消耗してしまったが、良い夜を過ごせたことに満足している。自信をもって明日に臨めそうだ」とフールモーは自信に満ちた笑みをみせた。

 ヌーヴィルはポジションを1つ上げて初日を総合6位で終えることになったが、マシンには満足できてないようだ。「ブレーキは少し改善した。少しバンピーで、全般的にクルマを信頼できなかったので、きちんとセットアップをする必要がありそうだ」

 ブリーンはここでは16秒遅れの7番手タイムに終わり、総合7位へと後退して初日を終えることになった。4年ぶりに走るモンテで予想以上に苦しみながらも、マシンには満足していると語った。「ここに来たのは5年ぶりだったので、本当に苦戦したよ。ノートを信じて、初めての道のようにドライブするしかなかった。でも、乗り切ることができたし、マシンのフィーリングはいい」

 タナクはここでも8番手タイムで総合8位と冴えないスタートとなっている。彼はSS1のあとは、コメントをしないまま走り去ったが、ここではドアを開けて、「大きな問題リスト」があると告白した。「かなり難しいスタートだった。スタート直後からエンジンに問題があり、このステージではハイドロを失ってハンドブレーキが効かなかったよ」

 タナクから7.1秒遅れの9位につけるのは勝田だ。原因不明のマシントラブルはまだ消えていないが、「ドラマも危ない瞬間もなく、さっきよりは良くなった。スムーズな走りを心掛けたが、良いステージにならなかった」

 インカムの問題がここでも続くソルベルグは、コドライバーの声を聞き逃してしまいチュリニ峠の頂上でスピンを喫して初日を9位で終えることになった。

 ロヴァンペラはこのステージでも42.8秒を失い、首位のオジエから早くも1分遅れの10位となっているが、この原因はマシンにトラブルがあるわけではないと打ち明ける。「マシンのバランスが、僕にとってとてもトリッキーなんだ。ベストを尽くして適応しようとしたけど、バランスがアンダーステア寄りになると、僕にとってはかなり難しいんだ」

 明日の金曜日はアルプ・マリティーム地方の北部に向かい、メルカントゥール国立公園に隣接するルワ〜ブイユのステージから始まる6SS/ 97.86kmの一日となる。オープニングステージのスタートは現地時間9時14分(日本時間17時14分)となる。明日もセブ対セブの白熱した戦いになりそうだ!