WRC2018/03/12

オジエが今季2勝目、選手権トップを奪還

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 2018年世界ラリー選手権第3戦ラリー・メキシコは11日に最終日を迎え、Mスポーツ・フォードWRTのセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタ WRC)が2位に1分13秒もの差をつけて、今季2勝目となる優勝を飾った。2位にはヒュンダイ・モータースポーツのダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)、3位にはシトロエン・レーシングのクリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)が入った。ソルドとミークにとっては、今季初の表彰台となる。

 ラリー・メキシコの最終日は、24.32kmのアルファロと、11.07kmのラス・ミーナスを2回走行する、わずか3SSのみで争われる。SSの合計距離も46.46kmと、非常に短い1日だ。朝のサービスは行われるが、日中のデイ・サービスはない。ミシュラン・ユーザーのほとんどのドライバーがソフトコンパウンドタイヤ5本を搭載して出発。アンドレアス・ミケルセンは3本+ハード2本、オジエはハード4本+ソフト2本という選択した。オジエのタイヤ選択は、パワーステージに向けての策なのは明らかだ。

 合計50kmにも満たない短い1日のため、大きな順位変動はないと思われたが、最初のステージとなるSS20からドラマが起きた。2位につけていたミークが、左コーナーでワイドになり横転。車はディッチで横倒しの状態になって止まってしまった。観客の助けでどうにかコースに復帰できたものの、タイムロスによってソルドに抜かれ、3位に後退してしまった。さらに23秒後方にはミケルセンが控えており、3位表彰台を守り切れるかどうかも不明な状態となってしまう

 今週末、トヨタ勢は揃ってエンジンのオーバーヒートに苦しめられてきたが、SS20でヤリ-マティ・ラトバラ(ヤリスWRC)が今週末で初めてのステージウィンを飾る。ラトバラは続くSS21でもトップタイムをマーク、チームメイトのオット・タナクもSS21でラトバラと同タイムを叩き出し、2台ともようやくエンジンの問題からは解放された様子だ。しかし2日目までに失った順位を取り返すには残された距離が短すぎ、上位争いには絡めない。

 ミークはコースオフによって2位の座を失ったものの、何とか3位を死守すべく、SS21で4番手タイムを刻む。それを追いかけたいミケルセンだが、このSSでコースオフにより9.7秒をロス。3位表彰台の可能性が見えていただけに、痛恨のミスとなってしまった。一方、ラリーリーダーのオジエや2位につけるソルドは、パワーステージに向けてタイヤをキープし、安全なドライビングに徹しているようだ。

 最終パワーステージとなるSS22では、WRCドライバー勢は逆順での出走となり、この時点で総合14位につけるタナクが1番手で走る予定だった。ところが、本来の時間になってもタナクは動かない。前戦スウェーデンのパワーステージで、オジエが後方からスタートするべくTCにわざと遅着したのと同じ作戦のようだ。また、6位につけていたティエリー・ヌーヴィルも7位のポントゥス・ティデマンドとの差が5分以上離れていたため、順位を落とさない範囲でタナクと同様にTCに遅着、本来の出走順からスタートせず、後方からスタートすることを選んだ。わざと遅着して後方の出走順を得る行為は、今後、さらに論争を呼びそうだ。

 しかしながら、このメキシコのパワーステージはその直前のSS21のリピートステージであるため、それほど効果的であったかは疑問だ。実際、後方スタートだったソルドは、路面にかき出された石によってリヤタイヤをパンク。パンクしたまま走行したためタイムを失ったものの、何とか2位をキープすることができたが、順位を大きく落とした可能性もあった。タナクはパワーステージで最速タイムを獲得することに成功したが、パワーステージ2番手だったオジエとはわずかに0.4秒の差。ヌーヴィルは4番手タイムを刻むことができたが、前方から出走して3番手タイムを刻んだラトバラを上回ることができなかった。それでも、2人とも貴重なポイントを追加できたことには変わりない。

 後続に1分以上の大差をつけて今季2勝目を飾ったオジエは「夢のようだよ。僕にとって特別な順位だ。僕はこれでメキシコで何回かの表彰台と4勝を手にしたことになる。出走順が2番手だったのでチャンスは少ないと知っていたが、決して諦めなかった。そしてマシンは素晴らしかった」と、ひときわ喜びをあらわにした。パワーステージでの2番手タイムはラリー後にシケインの正しい通過が行われなかったとして10秒のペナルティが課せられてボーナスポイントを失うことになったが、オジエは圧倒的な強さで通算42勝目を飾って選手権リーダーに返り咲いた。

 それとは対照的だったのが、昨年のメキシコ勝者で今年は総合3位に入ったミークだ。今季初の表彰台を得たにもかかわらず、最終ステージを走り終わった後はかなり悔しげな表情を隠さない。「このラリーを勝てるペースもマシンも出走順も持っていたのに、僕はその仕事をしなかった。3位でこんなに悔しいのは初めてだ」と述べた。

 今戦では、9度の世界王者セバスチャン・ローブがシトロエンから3年ぶりにWRCに出場した。後方出走の有利さはあったものの、2日目にパンクで順位を失うまでは優勝争いに絡み、まったく腕が衰えていないことを証明した。

 次戦は4月5日〜8日に行われるツール・ド・コルス。新世代WRカーでの2戦目に挑むローブ、そして選手権リーダーを取りかえしたオジエ。母国ラウンドでの勝利を目指した二人のチャンピオンの対決に注目が集まりそうだ。