WRC2018/10/08

オジエがGBで優勝、ラトバラとの接戦を制す

(c)M-Sport

(c)Toyota

(c)Toyota

 2018年FIA世界ラリー選手権(WRC)第11戦ウェールズ・ラリーGBの最終日は、Mスポーツ・フォードのセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)が一度首位を譲ったヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)をふたたび抜き返して、逆転勝利を飾ることになった。

 ウェールズ北部が舞台となるラリーGBの最終日は、新しいエルシー(10.06km)から始まり、それに続くグイデイル(14.76km)がパワーステージとして行われたあと、オールターマックのグレートオーム〜スランディドノ(8.03km)がそれに続き、タイヤ交換のあとグイデイルとグレートオーム〜スランディドノの2回目のループが行われるという特徴的な一日となる。わずか5SS/55.64kmという短い最終日だが、めまぐるしくドラマが重なったローラーコースターのようなイベントにふさわしい攻防のドラマが最後のステージまで続くことになった。

 最終日は、今季初優勝に燃えるラトバラの激しいプッシュで幕を開けることになった。雨こそ降らなかったものの、コース脇には霜が下りるほど寒い朝となったため、湿り気を帯びた北ウェールズの森林ステージは危険なほどに滑りやすくなっていたが、ラトバラはオープニングステージのSS19エルシーで4.4秒あったオジエとの差を1.7秒まで縮めることに成功、さらにSS20グイデイルのパワーステージではクレストを越えた先にワイドになりながらも渾身のベストタイム、オジエに3.6秒差をつけてついに首位に立つことになった。

「全開でプッシュしたよ。けれど、非常に難しいステージだった。なんども危ない瞬間があったんだ。クレストを全開で越えたらマシンがドリフトし、大きな衝撃がくると思ったが、なんとか走り続けることができた」

 いっぽう、首位を追い掛ける立場となったオジエは、「とてもトリッキーだったので、ミスをしたくなかった」と、朝の2つのステージでやや慎重だったことを認めたが、次の海岸沿いを走るオールターマックのグレートオームのステージでオジエは衝撃の速さをみせる。

 オジエは2011年、シトロエンで迎えた最後のラリーGBでオープニングSSとして行われたグレートオームでマシンをスライドさせてリヤホイールを失ってリタイアとなった苦い経験をもっている。少しでもマシンをスライドさせれば、歩道の縁石が危険な罠となって待ち受けていることを彼は知りつつも、わずか8.03kmのこのステージでラトバラに3.4秒差をつけるベストタイム、首位まで0.2秒差に迫ることになった。

 オジエはステージエンドで自身のタイムに満足したように笑顔をみせ、「これが僕たちの挑戦だ。難しい朝だった。トヨタは非常に強いが、僕たちは最後までプッシュし続けるよ」と最後まで戦いを挑むことを決然と表明、朝のループでパワーステージとして行われたグイデイルの2回目の走行では、渾身の走りでベストタイムを叩き出してついにラトバラを逆転、3.1秒差で首位を奪い返した。「ビッグプッシュだった、僕はこの勝利がどうしてもほしいから戦っていくよ!」

 最終ステージのグレートオームのステージでは朝の走行のあとさまざまな催しが行われていたが、スランディドノの市街地のゴール近くでイベント関係のクルマが事故を引き起こしたため、2時間近くも遅れてステージは再開されることになった。オジエがここでも危なげない走りでベストタイム、ラトバラは海からの風ですっかり冷えきったグラベルタイヤでターマックを全開で攻めるリスクを避けてペースを落としたため、最終的にオジエは10.2秒差をつけて今季4勝目を飾るとともに、ラリーGBにおける史上最多の5度目の勝利を達成することになった。

「本当に大きな週末、そして本当にタフな戦いだった! オイットはあまりに遠いところにいる、と思っていたら、彼にトラブルが発生してしまった。そして今度はヤリ-マティが本当に強かった。森林の中、本当にキツくて走りきるのは無理かもしれないとも思ったけど、ターマックは得意なサーフェイスだったから、なんとか勝利を掴むことができたよ」

 最終日のもうひとつのハイライトとして、3位のエサペッカ・ラッピ(トヨタ・ヤリスWRC)と1.7秒差の4位につけるクレイグ・ブリーン(シトロエンC3 WRC)のバトルが注目されたが、オープニングSSでラッピがベストタイムで二人の差を7.1秒へ広げ、グイデイルの1回目の走行でブリーンがスピンを喫して万事休す、ラッピが3位のポディウムを守り切ることに成功することになった。

 トヨタは優勝こそ逃すことになったが4戦続けてのダブルポディウムを達成して、マニュファクチャラー選手権でヒュンダイに20ポイントの差をつけることになった。

 いっぽう、ヒュンダイ・モータースポーツは最終日、ティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)のドライバーズ選手権のリードを優先するために控えめなやり方ではあったがチームオーダーを発令することになった。土曜日のコースオフで8位に後退していたヌーヴィルは、7位につけていたチームメイトのヘイデン・パッドンをSS20で抜き、さらにシナリオ通りにアンドレアス・ミケルセンをSS21で抜くことになった。さらにこのステージでは5位につけていたマッズ・オストベルグ(シトロエンC3 WRC)がスピンしたため、ヌーヴィルは予定外の5位でフィニッシュすることになった。

 また、ヌーヴィルはSS20グイデイルのパワーステージでは一番手というスタート順にもかかわらず4番手タイムを記録、ボーナス2ポイントを加算して合計12ポイントを獲得、ドライバー選手権のトップをキープするとともに獲得ポイントを189ポイントまで伸ばしている。

 優勝を飾ったオジエは、パワーステージでの3ポイントもあわせて182ポイントまで獲得ポイントを伸ばして、ヌーヴィルまで7ポイント差に迫っている。また、ラリーをリードしていながら土曜日にラジエータ破損でリタイアとなったオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)はポイント圏外の総合19位でフィニッシュしたものの、パワーステージで2番手タイムを記録、ドライバー選手権ではヌーヴィルから21ポイント差の3位へと一歩後退することになった。

 長かったシーズンも残すところあと2戦。次戦は3週間後に行われるラリー・デ・エスパーニャだ。