WRC2023/04/26

クレイグはこの週末、誰よりも僕を支えてくれた

(c)Toyota

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 誰にとってもクロアチアは悲しみのなかでのスタートであり、とても冷静な気持でステージに臨んできた者はいなかっただろう。エルフィン・エヴァンスとスコット・マーティンは、一週間前に事故で亡くなったクレイグ・ブリーンと仲が良い友人同士だった。しかし、とりわけ、以前にブリーンのコドライバーを務め、悲願だった初勝利の夢を追い掛けた経験をもつマーティンの喪失感は想像がつかないものがある。

 マーティンは、ブリーンとともに5シーズンにわたってコンビを組み、2016年シーズンにマーティンと共にシトロエンから世界ラリー選手権のトップカテゴリーにステップアップしたあと、ラリー・フィンランドでの感動的な初の表彰台をともにしている。シトロエンで3度の表彰台を達成したあと、ブリーンは2018年末にシトロエンのシートを失ったため、マーティンは2019年以降はエヴァンスとともに参戦してきた。

 クロアチアの厳しい戦いのすえにフライングフィニッシュをトップでパスして優勝を決めた瞬間、マーティンはそれまで抑えてきたものが一気にあふれだしたかのように顔を手で覆って泣き始めた。

「最終ステージではとてもエモーショナルになった・・・。僕は幸運にもクレイグと特別な年月を共有することができた。僕たちはWRCでの彼の初表彰台と僕の初表彰台を共にした。今週末に優勝という結果を届けられたことは、彼を偲ぶにはこれ以上ないやり方になった」とマーティンはラリーをふりかえった。

 エヴァンスとマーティンは、クロアチアのポディウムでアイルランドの国旗を彼らのウィニングマシンに掲げ、この勝利をブリーンに捧げた。

 マーテインはこの悲しみがしばらく続いても戦いを続けるつもりだと語った。

「彼が今週末、僕たちと一緒にいてくれたことは間違いない。彼は僕たちみんなと一緒にいてくれたと思うが、もしかしたら僕のことを少し多く応援してくれたのだろう」

「彼の死を冷静に受け入れるまで、かなりの歳月、数週間、いや、数カ月はかかると思う。この週末は厳しいものだったが、サービスパーク全体を特に誇りに思う。みんなよく団結し、お互いを支え合っていた。この週末が少し落ち着いても、まだまだ難しい日々が続くだろう。僕らはこれからもこの挑戦を続けていかなければならない」

 クロアチアの勝利により、エヴァンスとマーティンは、トヨタのチームメイトであるセバスチャン・オジエとヴァンサン・ランデに追いついて選手権ランキングのトップに並ぶことになった。