WRC2018/03/10

ソルドがメキシコをリード、7.2秒差でローブ猛追

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 2018年世界ラリー選手権(WRC)第3戦ラリー・メキシコは、金曜日を終えてヒュンダイ・モータースポーツのダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)がラリーをリード、シトロエン・レーシングから3年ぶりにWRCに帰ってきたセバスチャン・ローブ(シトロエンC3 WRC)が終盤に追い上げて7.2秒差で続く展開となっている。

 木曜日の夜、かつて銀鉱で栄えた古都グアナファトの地下トンネルで行われたストリートステージで開幕したラリー・メキシコは、いよいよ金曜日から今季初のグラベルステージに戦いの舞台を移す。

 オープニングステージは26.05kmのドゥアルテ〜デラマデロ。昨夜のショートステージでリードを奪ったとはいえ、一番手スタートでこの日をスタートしたティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)はいきなり路面掃除に苦しんで大きく後退、予想通りに後方からスタートしたドライバーたちがタイムを伸ばすことになる。7番手のポジションからスタートしたクリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)が鮮やかなベストタイム、同じく10番手という後方から2番手タイムを叩き出したソルドに3.8秒差をつけてラリーをリードすることになった。

 昨年のウィナーであるミークがまるで一年前の再現をするかに思わせたが、前戦スウェーデンを欠場した鬱憤を晴らすかのような素晴らしい走りをみせたソルドがSS3エル・チョコラテ(31.44km)ではミークに対して11.1秒差をつける圧巻のベストタイムを叩き出して逆転で首位に立つ。続くSS4オルテガ(17.23km)ではミークが高速でバンプを越えた際に姿勢を乱して5.6秒をロス、連続してベストタイムを奪ったソルドがその勢いのまま16.6秒差をつけて朝のループを首位で終えることになった。

「本当にいい感じで、すごく楽しんだよ。上手にドライブしながら少しだけプッシュしていくことを試みた。でも2回目の走行では、誰にとってもコンディションはより等しくなるだろう。そしてタイヤにはタフになるだろうね。いいタイヤ選択をすることが重要になる」とソルドは語っている。

 朝のループでほぼ全員がすべてソフトタイヤを選ぶなか、ミークだけがハードタイヤを2本組み合わせたタイヤチョイスを行っており、SS2で首位に立ったあと、彼はこのタイヤが正解だと考えたようだが、タイヤバランスが崩れてハンドリングに苦しんだためにじわじわとソルドに引き離されることになった。それでも彼は「2位だから、悪い朝ではない」と語り、午後のループにむけて意欲をみせていた。

 朝のループを終えて3位につけているのはローブ。彼は2013年のアルゼンチン以来となるWRCのグラベルラウンドへの出場にもかかわらず、早くも新世代WRカーのリズムを掴み、ミークの1.3秒後方につけてみせた。「いい朝になった。いいリズムを早い段階でみつけることができた。走行のポジションに助けられたが、クルマのフィーリングもよかったよ」

 トヨタ勢は、オット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)がローブの3.5秒後方の4位につけることになり、昨年のオーバーヒートの問題が改善したかにも見えたが、チームメイトのヤリ-マティ・ラトバラはこの日のオープニングSSからパワーロスを感じて14秒を失い、さらに昨年、水温が130度を超える悪夢に見舞われたエル・チョコラテではまたもオーバーヒートの症状が発生して35秒をロス、首位から53秒遅れの7位で朝のループを終え、エサペッカ・ラッピもセーフティモードに苦しみ10位まで順位を落とすことになった。

 選手権リーダーのヌーヴィルにとっては最悪のスタートとなってしまった。コースのダスト掃除に苦しんだ彼は3つのロングステージを終えて43秒を失ったあと、朝のループの最後の1.1kmという短いレオン・ストリート・ステージでエンジン不調に陥り、1分9秒遅れの9位に順位を落とすことになった。ステージ後、彼は「エンジンの問題だ・・・・」と怒った声で語り、マシンのドアをバタンと閉めて歩き去った。また、彼は走行中に開いてしまったドアを閉めようとして左腕を負傷、サービスではチームドクターがアイシングして治療にあたっていた。

 デイサービスの頃には気温が30度を超え、各ドライバーともにハードタイヤを主体としたタイヤチョイスで午後のループへと向かうことになる。ハードタイヤを選択したミークが逆転への強い意思をみせてベストタイムを奪うなか、ソフト3本とハード2本を組み合わせた首位のソルドはここでは慎重に走ることになり、その差を12.3秒に縮められることになる。「このタイヤであまりアグレッシブにドライブしないように気をつけた。リヤにソフトタイヤを履いているので、マシンが少し揺れたよ」

 だが、続くSS7エル・チョコラテはかき出されたルースグラベルによってコースはダーティになり、午後になってもオーバーヒートの問題が改善せずに9位にとどまっていたラッピとサスペンションに問題を抱えていたテーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)が相次いでクラッシュするなか、ミークもスピンによって11秒を失って3位に後退することになる。

 このステージでベストタイムを奪ったのはローブ。彼は前ステージではジャンクションのオーバーシュートで3位のポジションをタナクに譲ることになったが、彼がこれまでに一度も走ったことのなかったエル・チョコラテのステージで2015年のラリー・モンテカルロ以来となるベストタイムを叩き出し、タナクとともにソルドも抜いて2位へと浮上することになる。

 さらにローブは続くSS8ではタナクとベストタイムを分け合ってソルドの7.9秒差に迫る速さをみせ、SS9、10でも連続してソルドとの差を縮めることになる。

 それでもソルドは、午後のタイヤ選択を後悔しつつもどうにか首位をキープ、7.2秒の後方に迫ってきたローブについて「まったく、うっとうしいね!」と忌々しそうに語ることになった。いっぽう、スタート前にどのような展開になるのか予想ができないと語っていたローブだが、一日を終えて「リズムを取り戻すにはとても良い一日だった」と語り、復活に十分な手応えを感じてこの日を終えることになった。また、ローブのわずか3.8秒後方にはタナク、さらに14秒後方にはミークが続き、明日以降も激しい表彰台バトルを予感させる展開となっている。

 いっぽう、2番手のポジションからスタートしたセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)は朝のループではタイムロスを最小限にくい止め、31.4秒遅れの5位で終えることになったが、クリーンになった午後のループで巻き返しを図るべくSS6では壁にヒットしながらも2番手タイムで猛然とスパートすることになった。だが、30kmを越えるSS7エル・チョコラテでは勢いあまってスピン、12秒を失ってしまう。計算外のミスはあったが、ミークまではわずか5.2秒、首位まで30.2秒差の5位という、十分に表彰台を狙えるポジションでこの日を終えることになった。

 また、オジエの1.5秒後方にもアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)が続いており、トップ6がわずか30秒あまりにひしめいている混戦模様となっている。

 7位にはヌーヴィルが続いているが、朝のループでのダストとエンジンの問題に加え、午後のループでは終始パワーステアリングに問題を抱えることになり、首位からは2分1秒と大きく遅れてしまっている。
 
 朝のループでオーバーヒートの問題に苦しんだラトバラは、症状が改善した
マシンでSS8では3番手タイムを奪ってみせたが、オールタネータの故障によってSS9に向かうロードセクションでマシンを止めることになってしまった。

 エルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)はSS3のエル・チョコラテで2番手タイムを奪って3位へと順位を上げて期待させたものの、SS4で高速のバンプを越えた際に姿勢を乱してクラッシュしてしまう。2分30秒あまりもロスして彼はどうにかステージを走りきったものの、コドライバーのダニエル・バリットが脳震盪の疑いがあることからサービスでリタイアとなっている。

 明日の土曜日はシエラ・デ・ロボスを舞台とした9SS/140.35kmという長い一日となる。オープニングSSの30.97kmのグアナファティートは現地時間8時33分(日本時間23時33分)の開始予定となっている。