WRC2025/07/20

ソルベルグがエストニア快走、リードを21秒に拡大

(c)Toyota

(c)Hyundai

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 2025年世界ラリー選手権(WRC)第8戦ラリー・エストニアは土曜日を終えて、トヨタGAZOOレーシング・ワールドラリーチームから初参戦しているオリヴァー・ソルベルグ(トヨタGRヤリスRally1)が後方からのワールドチャンピオンたちのプレッシャーにも動じない快走をみせて、この日も4つのベストタイムを奪ってリードを21.1秒へと拡大、キャリア初優勝に向かって突き進んでいる。

 ラリー・エストニアの土曜日は、朝のループはラーニッツァ(21.45km)とカネピ(17.43km)という良く知られた2ステージを2回連続で走り、ミッドデイサービスのあとはオテパー(11.15km)とカラスキ(11.97km)の2ステージを連続して2回走行したあと、木曜日に行われたスーパーSSタルトゥの2回目の走行で締めくくる5SS/125.76kmの一日となる。

 ソルベルグはラリー・エストニアの金曜日、衝撃的なスピードをみせて4つのステージのうち3つを制して、2位につけるオイット・タナク(ヒョンデi20 N Rally1)に対するリードを12.4秒に広げて初めてラリーリーダーとして一日を終えることになった。しかし、タナクの後方1.8秒差には3位のティエリー・ヌーヴィル(ヒョンデi20 N Rally1)、さらに5.9秒差でカッレ・ロヴァンペラ(トヨタGRヤリスRally1)が続いており、ソルベルグにとってはスタート順にも助けられた前日とは異なり、土曜日はコンディションはほとんど変わらない状況で後方から襲いかかる3人の強敵を相手にしなければならない。

 土曜日もトップを守り続けることができるかどうかをRallyTVのレポーターに問われた彼は、「本当に分からない。まだ経験が足りないので、もう一歩前に踏み込んだ走りをすることはできないし、その気もないが、これまでと同じフィーリングで走って自分のベストを尽くすだけだ」と、緊張感などまったく感じさせない笑みをみせてスタートしていった。
 
 オープニングステージのSS9ラーニッツァでミスを犯したのは、ソルベルグではなく、後続のタナクだった。彼はシケインをオーバーシュートし、干し草のベイルに接触してストップ、リバースギヤを使ってコースに戻らなければならなかったため貴重な数秒を失った。これで2位には2番手タイムを奪ったヌーヴィルが浮上、タナクはチームメイトの2.5秒後方へとポジションを落とした。

「その前にもジャンクションをミスしてしまった。ブレーキングはすべてうまくいっていたのに、あと20メートルでコントロールを失ったんだ」とタナクは説明した。

 ここでベストタイムを奪ってスタートしたのはソルベルグだ。ステージにはスピードを抑えるためのシケインがいくつか設置されているが、それでも猛烈なハイスピードなセクションがいくつか残っており、ソルベルグは完全に覚醒したかのようなスピードで駆け抜け、その平均速度は127km/hをオーバーした。「クルマに新しいことをいくつか試してみたんだ。リヤの動きはとても良いけど、アンダーステアが出ている。こういうステージは初めてだから簡単じゃないし、時々躊躇することもあるけど、大丈夫だ。すごくハッピーだよ」

 ソルベルグはSS10カネピ・ステージで圧倒的なベストタイムを記録し、リードを21.2秒に広げ、マシンにも絶対の自信と信頼をもっていると語った。「このクルマは走らせていて本当に素晴らしいよ。このステージを走るのは今回が初めてだったけど、なんて難しくて、速いんだって感じだ。ここからは少し落ちつきを取り戻さないとね。もう少しフロントのグリップが必要かな、時どきフロントが流れて、それからリヤも滑ってしまうんだ」

 ここは2021年にタナクがコースオフしてダブルパンクによりスペアを失ってリタイアしたステージだが、そのときとは逆方向での走行だ。タナクはここではソルベルグから2.4秒遅れの2番手タイムを奪い、ヌーヴィルから2位をとりかえすことに成功したものの、首位からは21.3秒も遅れてしまった。

「何もすることはない。自分にできることはすべてやっているよ」とタナクは憮然としたように語った。

 ヌーヴィルはタナクから0.3秒差の3位で続いているものの、シケインのベールをヒットしたのか左フロントフェンダーを失っている。「ここは少し慎重になってしまった。木が近くて道幅が狭いところでは、いくつかの場所でペースノートを信じきれなかった。クルマのパーツもあちこちで少しずつ失っているし、理想的ではなかった」

 走行順のハンデがなくなったロヴァンペラは「スタート位置は少し良くなったので、それを活かして反撃したい」と語ってスタートしたが、ここでもソルベルグの最速タイムからは7.4秒も遅れてしまい、朝の時点で20秒だった首位との差は31.8秒へと広がってしまった。「最初のステージよりも難しかった。序盤はかなり苦戦したし、あまり良いフィーリングがなかった。もっと速く走れるはずなんだけどね」と、彼に笑顔はない。

 ラーニッツァ・ステージの2回目の走行となるSS11で、ソルベルグはバンクに接触して少し茂みに飛び込んだものの3連続ベストタイム、SS12カネピでは最速ではなかったが、ベストタイムのタナクから0.5秒遅れの2番手タイムで駆け抜け、総合リードを22.8秒として朝のループを終えることになった。

「コースアウトはしなかったが、危ういところだった。ああいう瞬間は初めてだった。でも、戦っているとこういうことは起こるものだ」とソルベルグは冷静に語った。ステージを追うごとにパフォーマンスへの期待が高まっているが、ソルベルグはプレッシャーのなかでも落ち着くことができていると認めた。

「昨日と同じように自分のペースで走ろうとしている。昨日より緊張感があることはたしかだが、快適で、落ち着いている。悪くないし、クリーンな走りができている」

 タナクとヌーヴィルのチームメイト同士のバトルはいっそう激しくなっており、SS11ではふたたびヌーヴィルが2位を奪い返したが、SS12ではベストタイムを奪ったタナクが0.4秒差で2位ととりもどしてサービスに帰ってきた。「今朝はミスが多かった。フロントバンパーを損傷し、フロントエアロも効いておらず、こんな高速走行ではかなりトリッキーだ。午後は状況が改善することを期待しているよ」
 
 ヌーヴィルは「コドライバーのリヤクオーターウインドウが外れてしまうダストに悩まされた」と語ったものの、地元出身のチームメイトと変わらないペースでバトルをできていることを喜んだ。「いい走りができている。オイットと同等のスピードが出せているのは良いことだ。マシンバランスの調整に取り組んできたが、今はより良く機能しているよ」

 ロヴァンペラは4位につけているが、トップ3のペースに追いつくことができず、トップからは40秒遅れとなってしまった。「もちろん、いつも嫌な気分になるが、どうすることもできない。ただ、ミスなくステージをクリアすることだけに集中する。それが僕たちにできる全てだ」とロヴァンペラは悔しそうに語った。3位のヌーヴィルにも17.6秒も引き離されているが、後方からはアドリアン・フールモー(ヒョンデi20 N Rally1)も13.1秒差に迫っている。

 この日の朝のセクションでのハイライトの一つはフールモーと勝田貴元(トヨタGRヤリスRally1)のしびれるような5位バトルだ。フールモーが0.2秒差をつけて迎えたこの日の朝、最初のステージのSS9で0.6秒、次のSS10でも0.1秒差をつけたが、勝田がSS11で0.2秒上回ってその差を0.5秒へと縮めてみせる。しかし、SS12カネピで勝田はヘイベイルにヒットしてしまい、その差は2.8秒に広がってしまった。「序盤、外側にベールがあって、それにヒットした。何も問題はなかったが、ちょっとしたミスでタイムを失ってしまったよ」と勝田は悔しそうな表情を浮かべた。彼の後方、11.4秒差にはエルフィン・エヴァンス(トヨタGRヤリスRally1)も迫っている。

 ミッドデイサービスのあとはオテパーとカラスキの2ステージを連続して2回走行するという、エストニアおなじみの変則的なコース設定だ。

 アラキュラのビッグジャンプのほかいくつもの刺激的なジャンプが連続するSS13オテパーはヌーヴィルのベストタイムとともに始まった。彼はタナクに0.1秒差をつけて2位を取り返す。「リヤデフを調整したことで序盤は苦しんだものの、自信がついてきたので、かなり良いフィーリングになった」と、これまでとは明らかに異なる自信の笑みをみせる。

 ソルベルグはヒョンデの二人に続いてここでは3番手タイムとなったものの、いまはワールドチャンピオンたちとのバトルを楽しんでるかのようにさえ見える。「いくつかミスを犯したので、完璧ではなかったが、オイットとティエリーが懸命にプッシュしているので、とにかくベストを尽くすだけだ。彼らは世界最高のドライバーたちで、自分はとにかく必死に食らいついていくだけだ!」

 ソルベルグはSS14カラスキでは2番手タイム、さらにオテパーの2回目の走行となるSS15ではこの日4つ目となるベストタイムを奪い、最終的にリードを21.1秒として土曜日をトップでフィニッシュ、明日の最終日にキャリア初勝利を賭けて臨むことになった。

「本当に素晴らしい一日だった。ペースも良く、ミスもなかった。まさに最高だ」とソルベルグは語った。朝のループでリードを広げて大きなリードを得たことで午後のループではより慎重なアプローチを取ることができたようにも見えたが、彼は、ヒョンデのチームメイト同士のバトルがヒートアップしているため、まったくリラックスできない状況だと苦笑する。「2人のクレイジーな男たちが全力で勝利を目指して後ろをついてくると、容易なことではない。朝は良いスピードを維持できたし、安定感があって、ミスもなかった。そして午後は、どうにかしてスピードをコントロールしようとしていた。僕にとってすべてが初めての経験だから、言葉が出ないほどホッとしているが、明日に向けて集中力も十分だ。とにかく完走したいよ!」

 ヒョンデ勢のバトルは、いったん突き放されるかに見えたタナクがSS14でのベストタイムでふたたび2.4秒差をつけてヌーヴィルを逆転、SS15では同タイムをわけあうも、ふたたびSS16でタナクがベストタイムを奪い、ヌーヴィルに4秒差をつけて土曜日をフィニッシュした。「非常に接戦だった。ティエリーは全力でプッシュしていたので、僕たちもプッシュし続けないといけなかった。明日はスーパーサンデーでできるだけ多くのポイントを目指すよ」

 土曜日までを2位で終えたタナクは、暫定ながら18ポイントを加えて、選手権の総合ポイントでは7位に沈んでいるエヴァンスと156ポイントで完全に並ぶことになり、明日のポイント次第では新たな選手権リーダーとなる可能性ももつ。

 また、ソルベルグがラリーをリードしているとはいえ、彼はトヨタのマニュファクチャラー選手権のポイント対象外となるため、事実上はヒョンデがここまではエストニアのマニュファクチャラー選手権で1−2体制を築いていることになる。ヌーヴィルはチームの選手権を挽回するためには、二人が着実にこのポジションでゴールしなければならないと誓った。「チームのためにはしっかりと結果を持ち帰ることが重要なのは理解している。僕たちはそのために走る」

 ロヴェンペラは2年前にエストニアで優勝した際には土曜日と日曜日の13ステージすべてでベストタイムを奪って勝利したが、今年の土曜日は3番手タイムがせいいっぱいだった。ヌーヴィルからは26.5秒遅れの4位、トップからは51.6秒遅れという信じがたいほどの苦しいラリーとなっている現実を認めることは苦痛だろう。「僕たちは常に全力を尽くしているので、これ以上に何ができるのか分からない。雨が降るのかどうかわからないが、まずは明日のコンディションがどうなるか見てみよう」

 ロヴァンペラの背後にはフールモーが16.6秒差の5位で続いており、勝田もまだフールモーからは8.6秒遅れの6位と大きく遅れているわけではない。そして、チームメイトのエヴァンスとサミ・パヤリ(トヨタGRヤリスRally1)がそれぞれ7位と8位で続いている。

 ラリー・エストニアの明日の最終日は、新しいスペシャルステージでの戦いとなるが、雨の可能性を天気予報は報じている。3SS/60.19kmという残された短い一日を、はたしてソルベルグは首位を守りきることができるのか。2021年のロヴァンペラ以来の新しいWRCウィナーの誕生を世界中のラリーファンが待っている。