ヨーロッパ・ラリー選手権第3 戦のロイヤル・ラリー・オブ・スカンジナビアは、オリヴァー・ソルベルグ(シュコダ・ファビアRS Rally2)とヘイデン・パッドン(ヒョンデi20 N Rally2)はすべてのステージにおいてコンマ数秒を争うバトルを繰り広げ、ソルベルグが開幕レグをわずか3.3秒差のリードで終えている。
ロイヤル・ラリー・オブ・スカンジナビアは、スウェーデンのカールスタッドをベースとして昨年からERCの一戦として開催されている。ラリー・スウェーデンは雪を求めてカールスタッドからウーメオへと北上したが、かつてWRCのウィンターラウンドの激戦の舞台は高速グラベルラリーとして生まれ変わった。
木曜日夕方に行われたターマックとグラベルのミックス路面で行われたスーパーSSで最速タイムを記録してラリーをリードしたのはERCディフェンディングチャンピオンのパッドンだ。しかし、SS2でベストタイムを奪ったソルベルグが0.1秒差の2位へと浮上するや、SS3でも連続してベストタイムを奪い、パッドンに3.1秒差をつけて首位に立つことになった。
それでもパッドンはSS4、SS5で連続してベストタイムを奪い、ソルベルグとの差を1.4秒へと縮めることになったが、サービスのあとのSS6ではふたたびソルベルグがベストタイムを奪い返して2.6秒差へとふたたびその差を広げるという息詰まるバトルとなった。ソルベルグはステージエンドで「突然小雨が降り始めたので、(ルースな路面が引き締まって)あまりタイムを失わなかったことは幸運だったよ」と語ったが、連続して向かう次のSS7ではこの雨が彼にこの日最大のピンチをもたらすことになる。
SS7はドライコンディションで始まったものの、予選トップのソルベルグが19番手という後方でこのステージをスタートするころには局所的に土砂降りの雨となっている。それでもトップタイムから3.8秒遅れにとどめたソルベルグは、パッドンに1.3秒差の後方まで迫ることを許したが、次の世界的に有名なコーリンズ・クレストを飛ぶSS8コリンズ・ステージでは1.1秒速く、さらにこの日の最終ステージのSS9 ガルショーでもライバルに0.9秒という僅差をつけるベストタイムを奪い、3.3秒のアドバンテージで初日を終えることになった。
ぶしょうひげを生やして少し大人びた顔となったソルベルグは、パッドンとのこのような接戦を楽しんでいるかのような逞しい笑みをみせている。
「とにかくタイムが接近していて、ひとつひとつのステージでギャップが重要だった」とソルベルグは語っている。「(最終ステージでは)一時は左リアにダメージを負ったかと思ったけど、岩が多くてルーズだったし、簡単じゃなかった。今日のフィーリングはあまり良くなかったし、とても感動したとは言えないけど、戦いは接近している。明日はマシンが路面に合うと思うし、プッシュできると思う」
先にステージをフィニッシュしたパッドンも、あまりの僅差のバトルに苦笑するしかないといった様子だ。「すべてのステージが予選ステージのようなものだ。すべてのステージでコンマ数秒を争っているなんてクレイジーだ。今回はプッシュしようとしたけど、そのたびにリアのグリップを失ってしまった」とパッドンは語っている。
「路面が荒れてくると、このクルマにはあまり合わないことがわかっているから、あまりタイムを落とさないようにしていたんだ。わだちよりも大きな岩が問題だった。明日は今日よりも僕たちに合っているはずだから、何ができるか見てみよう」
トップから12.7秒差の3位につけるのはミッコ・ヘイッキラ(トヨタGRヤリスRally2)だ。木曜夜のスーパーSSではドーナツターンでスピンしてしまい「誰もテレビで観てないことを祈るよ」とミスを恥じていた。しかし、16位でスターとした金曜日はじわじわと順位をアップ、SS7でトップタイムを奪うなど午後になると素晴らしいペースで3位へと追い上げをみせている。「午後になってグリップが得られるようになってフィーリングも向上した。それにしてもこれほど接戦になるとは思ってもなかったよ。僕だって予選ステージのようにプッシュしたのに速くなかった!」
ERCポイントリーダーのマティユー・フランセスキ(シュコダ・ファビアRS Rally2)は木曜日のSS1のスタートでエンジンをストールさせてしまい17位と出遅れてしまったが、ヘイッキラの後を追うようにペースを上げ、SS8コリンズでのベストタイムを奪ってフランク・トーレ・ラーセン(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)を抜いて4位へとポジションアップ、ヘイッキラから4.2秒遅れで続いている。
チームMRFタイヤのマルティンシュ・セスクス(トヨタGRヤリスRally2)は朝のループでは3番手をキープしていたが、SS7の大雨で順位を落としてしまい、フランセスキから3.1秒差の5位で続いている。
TRTラリーチームのマッズ・オストベルグ(シトロエンC3 Rally2)が7番、昨年のERCスカンジナビアでジュニアERC優勝を果たしたソルベルグの幼なじみでもあるイサック・ライエルセン(シュコダ・ファビアRS Rally2)はSS2で2番手タイムという衝撃のスタートだったが、SS3では岩に接触する危ない瞬間に見舞われ、右リヤタイヤがリムから外れた状態でフィニッシュして以降、ペースを落としてしまい8位で一日を終えている。
また、2019年以来の国際ラリー復帰となったペター・ソルベルグ(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)はこの週末最も注目されることになったが、オープニングSS を走行中にボディ下から大きな炎が上がる問題に見舞われるなど本人にとっても期待に反したスタートとなっている。彼は、金曜日のリスタートが懸念されていたが、どうにか10位でスタート、予選17番手タイムの彼は金曜日を3番手のポジションで走行したため、柔らかな路面の掃除に苦しみ、総合19位で初日を終えている。スタート前には息子のオリヴァーとの対決も注目されていたが、トップからは2分30秒近くも遅れてしまったのはコンディションのせいではなく、現役から離れて久しかったためペースを上げることが出来なかったと素直に負けを認めている。「スピードにためらうことはだんだん少なくなってきたが、プッシュするにはまだ長い道のりがあるね。一日の終わりには、僕らはかなり上達し、楽しむことができた。少しは上達してオリヴァーに近づけたと思うよ!」
ERCジュニアは、開幕戦で優勝したマックス・マクレー(プジョー208 Rally4)が2位で迎えたSS2で横転、叔父の名前が冠されたコリンズ・ステージを走る前にリタイアとなってしまい、地元のパトリック・ホールベルグ(プジョー208 Rally4)が11秒差でリードしている。