WRC2025/07/21

ソルベルグがWRC初優勝、トヨタはWRC通算100勝

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 2025年世界ラリー選手権(WRC)第8戦ラリー・エストニアは、トヨタGAZOOレーシング・ワールドラリーチームから初参戦したオリヴァー・ソルベルグ(トヨタGRヤリスRally1)が金曜日の朝にトップに立って以降、一度もポジションを譲ることなく劇的なキャリア初優勝を飾ることになった。
 
 同じ週末にキャリア初のベストタイムとともに初優勝を達成したのは、1988年のラリー・ニュージーランドにおけるセップ・ハイダー(オペル・カデットGSi)以来の偉業となる。90年代以降、多くの伝説的なドライバーやワールドチャンピオンが誕生してきたが、誰ひとり成し遂げることができなかった快挙をソルベルグはラリー・エストニアで果たすとともに、トヨタに通算100勝目をもたらす、まさしく歴史的な勝利を達成した。

 ラリー・エストニアの最終日は、新しいスペシャルステージでの戦いとなり、ヘレヌルメ(11.79km)のあとカーリク(24.20km)がそれに続く。リグループを挟み、カーリクの2回目の走行がパワーステージとして行われる。3SS/60.19kmの一日となる。
 
 ソルベルグは後方からのワールドチャンピオンたちのプレッシャーにも動じない走りでリードを21.1秒へと拡大して土曜日を終えており、これまでノーミスの走りを続けてきた彼が短い最終日に追いつかれる恐れはほとんどないともいえるだろう。しかし、天気予報は日曜日の朝は雨になると伝えており、プレテストでウェットコンディションを経験していないソルベルグにとっては不安材料になるだろう。

 SS18ヘレヌルメは、スタートの1時間ほど前から小雨が降り始め、コースはウェットコンディションに。木陰には水たまりも生まれて、水をふくんだルースグラベルはラリーカーの走行でよりぬかるみ、滑りやすくなっていく。この突然の路面変化にもかかわらず、長いストレートでは最高速200km/hオーバーのハイスピード・ステージとなった。
 
 それでもソルベルグは不安を吹き飛ばすような素晴らしい走りをみせて、オープニングステージで最速タイムをマーク、総合リードを22.7秒に広げることになった。「雨は降ってほしくないけど、まあ人生とはそういうものだ」とソルベルグは語った。「このステージの前は、ウェットコンディションがどんなものか全く分からなかったので、とても緊張していた。でも、マシンはすごくうまく機能していた。ここまでは順調だけど、トリッキーなので、このあとは雨があまり降らないことを願っている」

 ソルベルグの後方はヒョンデのチームメイト同士の激しいバトルとなっており、2位のオイット・タナク(ヒョンデi20 N Rally1)と3位のティエリー・ヌーヴィル(ヒョンデi20 N Rally1)はわずか4秒差にすぎなかったが、このステージのスタートでヌーヴィルが痛恨のジャンプスタート、二人の差は18.6秒差へと広がってしまった。

「悪いステージだった・・・」とヌーヴィルはステージエンドでつぶやいた。2位を取り戻すためにプッシュし続けることは、チームの選手権のためのポイントを犠牲にしてしまう可能性があるだけに、あとはこのポジションを守ることに集中していくしかない。「グリップを全く信頼できず、ずっとブレーキを踏んだり、離したりしていた。今の順位が自分たちの実力だ、この週末ずっと3番手できているし、いまはこれ以上速く走れる感じがしない」

 タナクはここでは2番手タイム、ヌーヴィルのペナルティを知らされた彼は驚いたように「エキサイティングな朝になった」と語った。「雨が降ったが、道は良くなってきていると思う。驚くようなところがこれまでたくさんあったけどそれほど悪くなかった」

 4位という不本意なポジションで最終日を迎えたカッレ・ロヴァンペラ(トヨタGRヤリスRally1)はタナクに続く3番手タイム、雨でやや湿り気を帯びた路面でやっと印象的なペースをみせることになった。「タイヤの状態がこのような路面状況で走るのは初めてだったので、最初はかなり慎重に走ったが、グリップはかなり良好だった。少なくとも今のステージは、タイヤの挙動が分かったよ」とロヴァンペラは語った。

 エルフィン・エヴァンス(トヨタGRヤリスRally1)は、「それほどいい走りではなかったので満足はしていない」と語ったものの、6位につける勝田貴元(トヨタGRヤリスRally1)との差を8.4秒も縮め、チームメイトに5.2秒差に迫ることになった。

 勝田の失速は、けっしてチームメイトの選手権を戦略的に助けようとしているわけではない。「できる限りのことをしていくよ」と、彼は沈んだ声で語ったが、エンジンに問題を抱えており、次のSS19カーリク・ステージを走りきったところでリタイアとなってしまった。

 SS19でも小雨が降り続き、さらに難しいコンディションとなったものの、ソルベルグがこの週末9回目のベストタイムを刻み、リードを26.3秒へと拡大、悲願のWRC優勝に大きく近づくことになった。「クルマは本当に調子がいい!ドライブを楽しんでいるし、ミスやトラブルもなくステージを走りきった」とソルベルグは語った。

 そして迎えたパワーステージのSS20は、SS19のリピートステージとなるカーリク・ステージだ。さっきまで降っていた雨は上がり、まるで新しいウィナーの誕生を祝福するかのように雲間から真っ青な空がのぞいている。

 ソルベルグは、ここではやや堅実なペースに落としてスタート、それでも柔らかい路面には深い轍が刻まれている高速のスネークセクションではバンクに軽く乗り上げて2輪が浮き上がるシーンもあったが、3番手タイムでまとめてフィニッシュ、初勝利を達成することになった。

 ソルベルグはステージエンドで待っていた彼の父である2003年のワールドチャンピオンのペター・ソルベルグと母のパニラと泣きながら抱き合い、この驚くべき勝利をよろこんだ。「トライして、トライして、トライしてきた。何年にもわたるトライと夢の積み重ねが、ようやくこの瞬間につながった。支えてくれたトヨタには心から感謝している」

 タナクは25.2秒差の2位に終わり、2020年以来の母国エストニアでの勝利はならなかったが、若きウィナーを讃えている。「僕たちにとって本当に厳しい週末だった。難しい展開になることはわかっていたけれど、ベストを尽くした。オリヴァーには本当におめでとうと言いたい。彼は自信に満ちていて、素晴らしい仕事をした。彼は間違いなくRally1を走る準備ができていた。今後どうなるか楽しみだ」

 タナクが2位、3位にはヌーヴィルが続き、ヒョンデは苦手にしてきたエストニアでダブルポディウムを達成することになった。さらにソルベルグはマニュファクチャラー選手権にノミネートしていないため、事実上はヒョンデにとっては選手権で1-2勝利を実現したことになる。

「僕たちの目標は表彰台に上がることだった。昨日の午後からは、マシンを完走させるというミッションがあった。少し楽しさは控えめだったけれど、いい週末だったと思う。これがチャンピオンシップの転換点になればいいね」とヌーヴィルは表彰台を喜んだ。

 最終日にやっと速さを取り戻したロヴァンペラは、この週末の最速ステージ記録である平均速度129.5km/hでパワーステージを制して4位フィニッシュ、勝田のトラブルで5位へと浮上したエヴァンスが5位で続くことになった。

 シーズン後半戦の最初のラリーとなった第8戦ラリー・エストニアを終え、ドラバーズ選手権ではタナクが162ポイントへと伸ばし、わずか1ポイント差でエヴァンスを逆転して選手権リーダーとなっている。今回欠場したセバスチャン・オジエは21ポイント差の3位、ロヴァンペラは24ポイント差の4位、ヌーヴィルは多少ポイントを挽回したとはいえ48ポイント差の5位となっている。

 一方、マニュファクチャラー選手権では、トヨタがトップを維持したものの、2位のヒョンデがこれまでの65ポイントから52ポイント差へと縮めることに成功している。

  次戦は7月31日〜8月3日に行われる第9戦のラリー・フィンランドだ。一週間後には早くもラリーウィークが始まる。