WRC2018/07/28

タナク、オストベルグと大接戦の末に首位キープ

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 世界ラリー選手権第8戦のラリー・フィンランドは、金曜日を終えてトヨタGAZOOレーシング・ワールドラリーチームのオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)がこの日も4つのベストタイムを奪い、マッズ・オストベルグ(シトロエンC3 WRC)に対して5.8秒差をつけて首位に立っている。

 木曜日の夕方にユヴァスキュラ市街地で行われたハルユ・ステージのあと、ラリー・フィンランドは金曜日から本格的なグラベルステージへ戦いの舞台を移している。

 SS2モクシ(20.04km)では一番手スタートのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)が路面掃除で20秒をロスするなか、3番手でスタートしたタナクはオストベルグに1.3秒差をつける快心のトップタイムをマークしてラリーをリードしたが、SS4アッサマキ(12.33km)では後方のポジションを味方にベストタイムを奪ったオストベルグが逆転して首位に浮上、タナクはSS5アーネコスキ(7.71km)でこの日2つめのベストタイムを叩き出して、1.1秒差ながら首位を取りかえしてサービスパークへと帰ってきた。

 二人の勝負は午後になってさらに勢いを増すことになる。フロントアクスルのジオメトリーを一新、見違える速さを備えたシトロエンC3 WRCとともにラリーをリードしたオストベルグは、SS6オイッティラ(19.34km)でベストタイムを奪い、0.1秒差でふたたびラリーリーダーに立つことになる。さらに驚くべきことにSS7モクシではなんと二人はまったく同タイムでフィニッシュ、2つのステージを終えてもオストベルグが0.1秒差で首位をキープするという大接戦となっている。

「このステージの前、自分が0.1秒リードしているのを見たので、このステージは安全に行こうと思ったんだ! でも、僕の汗を見てよ。僕がどれだけハードにプッシュしたか分かるだろう!」とオストベルグは興奮した表情で目を輝かせた。彼がラリーをリードするのは2014年のメキシコ以来4年ぶりのことだ。

 いっぽう、SS7でベストタイムを奪ったとはいえタナクはけっして自身の走りに満足しているわけではない。「今日の午後はフィーリングが良くないと言わざるを得ない。ハンドリングに満足できていない。今朝と何が変わったのか分からない」と彼は首をひねっている。

 さらにタナクはSS8ウッリアの深い轍が刻まれたヘアピンでエンジンをストール、オストベルグがリードを1.9秒へと広げることになった。

 だが、午後になってやわらかい路面はかなり荒れ、石がステージにかき出されてきたため、後方のオストベルグもけっして有利な状況ではない。タイヤも摩耗しかけていたため、SS9でベストタイムを奪ったタナクに首位を明け渡すことになってしまう。

 タイヤを最後までもたせるためにSS10でさらにペースを落としたオストベルグに対してタナクはここでも連続してベストタイム。さらにこの日最後のハルユのステージでもオストベルグとの差を5.8秒まで広げて首位を守ることになった。

 タナクはゴール地点で、「スタートポジションはご機嫌なものではなかったので、明日のために最高のスタートポジションを得るために最大限に努力しなければならなかった」と3番手ながらトップでレグ1を終えたことを喜ぶとともに、「明日はもっとずっとフェアな戦いになる。走る条件もライバルたちに近づけるからね」と付け加え、さらなるリードを拡大できることを確信しているかのような余裕の笑みを見せている。

 二人の後方は朝からヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)とテーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)による激しい3位争いとなった。

 SS2で3番手タイムを出したスニネンに対して、ラトバラはSS3のベストタイムでスニネンを抜いて3位に浮上。スニネンはSS5で激しくオフしかかってヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20クーペWRC)にも抜かれて5位まで後退したが、SS6で3番手タイムを出してラトバラとパッドンを抜いてふたたび3位を奪いかえすことに成功した。

 だが、SS7では今度はラトバラが逆襲、今季は不振が続いた彼だが、「これ以上できないほど攻めている」とびっしょり汗をかいた本気の走りでスニネンを抜き返して3位を取り戻している。

 スニネンはラフになった終盤のステージで慎重になったためにパッドンにも抜かれ、さらに最終のハルユのストリート・ステージでブレーキの問題に見舞われてしまい、ラトバラからは23.6秒遅れ、パッドンからも9.7秒遅れの5位となってしまった。

 パッドンはSS5ではタナクからわずか0.9秒差の2番手タイムを奪うなど、この日、ヒュンダイ勢ではただ一人勢いのある走りでラトバラからは13秒差の4位で続いており、チームのためにも表彰台のチャンスを狙いたいところだ。

 いっぽう、先頭グループでスタートした選手権リーダーのヌーヴィルとセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)にとっては最悪の朝となった。

 ヌーヴィルは昨日、雨が降ったことでステージが湿っていることを期待したが、晴れ渡って気温が30度近くに上昇したステージは濡れるまでに至らず、深く積もった柔らかいグラベルの掃除を強いられたためにじわじわとタイムを落としてしまう。さらに彼はSS5ではペースノートのミスからターンできずにほかの道路に逃げるようにオフ、ターンしてコースに戻る際にリヤを立ち木に激突させて30秒をロスしてしまった。このトラブルで彼は10位に後退、午後のループでもペースを上げられずに、首位からは2分近くまで遅れている。

 2番手でスタートしたオジエもペースは上がらず、朝のループで首位タナクから28.7秒遅れとなり、チームメイトのエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)に続いて7位につけることになった。

 エヴァンスは、SS10のゴール目前でわざと減速、明日を少しでもいいスタートポジションのためにオジエに順位を譲り、オジエから0.3秒差の7位に順位を落としている。エヴァンスは、オジエのすぐ後方にはトヨタのエサペッカ・ラッピ(トヨタ・ヤリスWRC)も迫っていたが、ラッピには0.8秒差で抜かれないようにタイムをコントロールして完璧なチームオーダーを実行してみせた。
 
 また、昨年の勝者であるラッピは、SS2モクシのスピンで金曜日をスタート、グリップに苦戦する彼はSS3を終えて首位から41秒もの遅れを喫して、早くも「ラリーはお終いだ」と残念な発言をすることになった。それでも彼は諦めずにステージごとにヤリスのセットアップをいじりながら我慢の走行を行い、デイサービスで問題があったセンターデフを交換したあとは午後のループでは勢いと自信を取り戻している。ラッピは2度の2番手タイムを奪ってエヴァンスと0.3秒差の8位で金曜日を終えている。

 シェイクダウンで2番手タイムを奪って期待させたクレイグ・ブリーン(シトロエンC3 WRC)はいきなりSS2で右リヤタイヤをパンクさせてしまい、49.6秒遅れの14位まで後退してしまった。それでも彼はじわじわと挽回、SS8ウッリアでベストタイムを出して9位まで追い上げ、ラッピまで3秒差に迫ってみせた。しかし、最終ステージでチームメイトのカリド・アル-カシミと同じく燃料バルブがシャットダウンする問題に見舞われてストップ、ここでも30秒を失い、ラッピとの差は32.7秒へと広がってしまった。

 マニュファクチャラー選手権をリードするヒュンダイにとっては、ヌーヴィルとともにアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)が朝から相次いでトラブルに見舞われたことは誤算だったかもしれない。

 ミケルセンはSS4でペースノートの聞き間違いでスライドしてオフ、マシンはディッチのなかで横倒しになって止まったため観客の助けを借りてどうにかコースに戻るも3分遅れを喫してしまった。朝のループを30位で終えた彼は、荒れた路面となった午後のループでも気迫の走りで16位まで追い上げている。
 
 明日の土曜日はラリー最長となる142.86km/8SSのタフな一日となる。オープニングステージの23.92kmのパイヤラー・ステージは現地の8時13分(日本時間14時13分)のスタート予定となっている。