WRC2019/05/13

タナクがチリで完全勝利、選手権2位に浮上

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 2019年世界ラリー選手権(WRC)第6戦ラリー・チリは12日に最終日を迎え、トヨタGAZOOレーシングWRTのオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)がシトロエン・レーシングのセバスチャン・オジエ(シトロエンC3 WRC)に23.1秒差をつけて今季2勝目を飾ることになった。

 チリの最終日は4SS/58.38kmという短い一日。コンセプシオン市の州名を冠したビオ・ビオ(12.52km)からスタート、コンセプシオン東部のリルカイ(18.06km)、サン・ニコラス(15.28km)を走ったあと、パワーステージとして行われるビオ・ビオがパワーステージとして行われる。

 オープニングSSのビオ・ビオの上空には青い空が広がっているものの、コースは前夜の雨と夜露で濡れて滑りやすくなっており、さらに濃い霧のなかで視界が悪いコンディションとなった。
 
 30.3秒という大きなリードを築いて最終日を迎えたラリーリーダーのタナクはこの難しいコンディションのなかでリスクを冒さない走りに専念、6番手で発進することになり、オジエとの差は29.8秒とわずかではあるが縮まることになった。

「ここは簡単ではなかったよ、たくさんの緩いグラベルがあり、初めのうちはかなり滑りやすくて、そして霧がミックスして立ちはだかった。僕のプランはもちろん、ラリーのリードを守っていくことだ」と、今季2勝目にむけたタナクの決意は揺るぎない。

 2位のオジエにとって注意すべき存在はタナクではない。5.1秒差の後方で続いていたセバスチャン・ローブ(ヒュンダイi20クーペWRC)が難しいこのステージで4秒を削りとり、二人の差はわずか1.1秒へと縮まることになる。しかし、素晴らしい走りをみせたにもかかわらず、ローブは快適なペースではなかったと語った。「グリップが常時変化していて僕には完璧なステージではない。あちらこちらでいくつかミスもしている。2位に上がりたい、だから次も様子をみる」

 いっぽう、オジエはローブを撃退する走りはできないかのように「今日は非常に競争が激しい一日になりそうだ。正直言って僕にはこれ以上はやれない」と弱気なコメントを残すことになった。

 だが、オジエは続くSS14リルカイ(18.06km)で終盤の狭くハイスピードのセクションを信じがたい走りで駆け抜けてベストタイムを奪取。ローブも4.2秒差のセカンドベストで続いたが、オジエはリードを5.3秒に広げることに成功する。それでもSS15サン・ニコラス(15.28km)ではローブが0.7秒を奪い返し、まさに秒差のシーソーゲームが最後まで続くことになる。

 そして迎えたパワーステージのビオ・ビオではオジエが消火器のトラブルに悩まされながらも全開でアタック、2番手タイムでローブの追撃から7.1秒差で逃げ切って2位を死守している。

 そして、朝から静かなペースをキープしてきたタナクはパワーステージでスピードを解き放ってベストタイム、オジエに23.1秒差をつけてラリー・スウェーデンに続く今季2勝目を飾るとともに最大ポイントを獲得することになった。

 ポディウム争いからは外れていたが、前戦でクラッシュしたMスポーツ・フォードのエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)がペースを取り戻す走りをみせて4位でフィニッシュ、チームメイトのテーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)とエサペッカ・ラッピ(シトロエンC3 WRC)による5位をめぐるバトルは最終ステージまで行方が見えなかったが、固すぎるギヤレバーで手に血豆をつくりながら苦闘したラッピがスピン、スニネンが追撃から逃げ切っている。

 また、ペースノートの製作の問題から滑りやすいステージで最後までペースに自信がもてなかったというアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)が7位となっている。

 初日の横転で14位までポジションを落としたクリス・ミーク(トヨタ・ヤリスWRC)は、最終日に2つ目のベストタイムを奪って8位でフィニッシュを迎えることになった。だが、フィニッシュ後にデイ2のSS7で横転した際に割れたフロントウインドスクリーンを、SS8前のコントロールエリアで取り外したことが規定違反とされ、1分間のペナルティタイムを課せられ総合10位でラリーを終えることになった。

 ドライバーズ選手権では土曜日のアクシデントでリタイアとなったティエリー・ヌーヴィルが110ポイントのままで選手権3位へと後退することになり、122ポイントを獲得したオジエが選手権リーダーを奪還、パワーステージでの勝利によるボーナス5ポイントを加えたタナクが112ポイントで選手権2位へと浮上することになった。それぞれ2勝を飾った選手権のトップ3が12ポイント差にひしめく僅差のバトルとなっている。

 マニュファクチャラー選手権では、ヒュンダイが178ポイントでトップをキープ、今季2勝目を飾ったトヨタは29ポイント差に迫ることになった。

 世界ラリー選手権はこのあとヨーロッパ・ラウンドへと戻り、次戦は5月30日〜6月2日に前半戦最後の第7戦として行われるラリー・デ・ポルトガルとなる。