WRC2019/05/12

タナクがチリの首位を堅持、30秒をリード

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 2019年世界ラリー選手権(WRC)第6戦ラリー・チリは11日にDAY2を迎え、トヨタGAZOOレーシングWRTのオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)が安定したスピードをみせて首位をキープ、2番手で続くシトロエン・レーシングのセバスチャン・オジエ(シトロエンC3 WRC)との差を30.3秒へと広げている。

 ラリー二日目は、リオ・リア(20.90km)、マリア・ラス・クルーセス(23.09km)、ペルン(17.20km)の3つのロングステージをデイサービスを挟んで2回ループする1日となる。全ドライバーが朝のループにむけてミディアムコンパウンド・タイヤ5本を選択するなか、ドライのタフなループになることを想定したタナクのみがスペア2本をチョイス。この選択がどういう結果をもたらすことになるのか注目を集めることになった。

 朝もやが立ちこめたオープニングステージのSS7リオ・リアは、思ったほどドライではなく、全域にわたって湿った路面コンディションとなるなか、波乱の一日を予感させるドラマで幕を開ける。このステージで、5位につけていたクリス・ミーク(トヨタ・ヤリスWRC)が2.4km地点で横転、フロントガラスが割れた状態でどうにかゴールしたが6分26秒をロス、ポディウム争いから完全に脱落することになってしまう。

 このステージでベストタイムを奪って二日目の好スタートを切ったのは4位につけるティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)だ。スロー走行するミークの後塵を拝して20秒近くロスしたヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)をヌーヴィルは抜き去るとともに、2位のセバスチャン・オジエ(シトロエンC3 WRC)の1.4秒背後に迫ることになった。

 だが、勢いづくかに見えたヌーヴィルはSS8マリア・ラス・クルーセスの3.9km地点でクレストを越えた先の右コーナーでワイドになってバンクにヒット、マシンは6回転したあと横倒しにストップすることになった。ヌーヴィルはメディカルチェックを受ける必要があるとの判断からヘリコプターが手配され、ステージはキャンセルされたが、病院での検査の結果、幸いにも彼とニコラ・ジルスールに骨折などの問題はなかった。

 WRカー勢はステージがストップする前に全車が走り切り、タナクが首位をキープ、オジエとの差は30.8秒となった。ヌーヴィルのアクシデントでラトバラが3位に浮上することになったが、その後方にはベストタイムを奪ったセバスチャン・ローブ(ヒュンダイi20クーペ)が4.4秒差に迫ることになる。

 朝のループに最後のステージとなるSS9ペルンでは多くのドライバーがタイヤの激しい摩耗に悩まされるなか、ほかのドライバーよりスペアを1本多く積んだタナクがベストタイム、オジエとの差を34.8秒へと広げることになった。彼はすでに大きなマージンを得ているため無理をして攻める必要はなかったが、スペア2本がもたらす余裕の走りがさらなるリードにつながったようにも見える。

 オジエは昨夜の時点ではC3 WRCはアルゼンチンよりずっと良くなったためタナクを追撃することは諦めていないと語っていたが、この日が失望の朝に変わったと認めている。「僕らは明らかにラリーに勝つためにスピードを持っていなかった。昨日より悪く感じている。午後にむけて変えられるセッティングはあまりない。タイヤの選択を試してみるだけだ」

 激化している3位争いはラトバラがどうにか守り切っているが、ローブがSS9でも2番手タイムを叩き出してラトバラの1.1秒後方に迫っている。デイサービスでローブは、「クルマについても理解でき始めているし、僕が前に慣れていたものとは違う。僕たちにとっていいラリーになる、そんな予感がする」と午後のループで逆転への手応えを見せていた。

 だが、チリのスチュワードはSS7でミークに進路をふせがれたとするラトバラの主張を認めて12.5秒タイムを救済することを決定する。これでラトバラと4位のローブと差は13.6秒へと広がり、さらに2位のオジエとの差も3.9秒へと縮まることになり、彼の照準はローブの防御ではなく、オジエ攻略へと変わることになる。

 コンセプションのサービスでは20度近くまで気温が上昇、午後のループにむけてほぼ全員がハード5本を選んだが、オジエのみがミディアム2本を組み合わせるギャンブルで次のループへ向かうことになる。たしかにSS10リオ・リアは目に見えてドライになったとはいえ、ここでは、ただ一人ミディアムを組み入れたオジエがベストタイム、タナクとの差を4.5秒縮めることに成功するとともにラトバラとの差を10.5秒差に広げてみせる。

 もちろんどちらがベスト・チョイスかどうかはこのステージだけでは見えてはこない。「午後のループ全体を考えてハードを選んだ」と語ったタナクがSS11でベストタイム、オジエとの差をふたたび33.2秒へと戻し、これ以上付け入る隙を与えない。

 3位のラトバラはここでもペースが上がらずにオジエからは12秒差をつけられてしまい、SS10、11と連続して2番手タイムで追い上げてきたローブが3.9秒差に迫ってきた。ラトバラは、「マシンのリヤエンドがなかなか安定しないんだ。ステージが僕のマシンに合っていないようだ」と首をひねり、ヤリスのハンドリング不調を訴える。

 そして、小雨が降り始めたこの日の最終ステージでラトバラは7.1km地点で突然ストップ、前後のタイヤをチェックしたあと首を傾げてリスタートしようとするが、すでにパドルシフトが使えなくなっており、リタイアとなってしまった。

 ラトバラの止まり方は、まるで昨年のドイッチュランドでハイドロを壊してストップしたときのことを想起させるが、トヨタは今回の問題は油圧系ではなく、ディッチにマシンを落としたときにフロントのドライブシャフトを壊したことが原因だったと発表している。

 予想外の雨のなかでこの日2つめのベストタイムを奪ったローブが、ラトバラのストップで3位へとポジションアップ、しかもオジエの5.1秒後方と最終日の逆転も十分可能な位置につけてこの日を終えることになった。

 ハードタイヤを装着しているタナクはこのステージではセーフティなペースに切り替え、2位のオジエとの差を30.3秒に落とすことになったが、首位をキープして悠々とフィニッシュする。「突然雨が降ってステージの中盤は深い霧がでていたので、タイムをいくらか失った。だが無事に走ることができてここにいることが重要だ」

 ローブの30秒あまり後方の4位につけるのはMスポーツ・フォードのエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)。SS7で数メートルもオフする危ない瞬間を経験したが、そのあとは安定したペースをみせて最後のステージでは2番手タイムとペースを上げることに成功している。

 5位にはチームメイトのテーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)、6位にはエサペッカ・ラッピ(シトロエンC3 WRC)、7位には朝のループではディッチにマシンを落としてあわやガードレールに突き刺さる危機を回避してコースに復帰したアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)が続いている。

 明日の最終日は三日間で初めてコンセプシオンの東部エリアにルートを運ぶ4SS/58.38kmの一日。オープニングSSのビオ・ビオ(12.52km)は現地時間8時8分(日本時間21時8分)のスタートが予定されている。