WRC2018/09/16

タナクがトルコ優勝、トヨタ1-2達成

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 世界ラリー選手権(WRC)第10戦ラリー・トルコ・マルマリスは16日に最終日を迎え、オイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)が波乱の一戦を制してフィンランド、ドイツに続いて3連勝を飾ることになった。また、チームメイトのヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)が22.3秒差の2位で続き、トヨタGAZOOレーシング・ワールドラリーチームが参戦以来初の1-2フィニッシュを飾り、マニュファクチャラー選手権でトップに躍り出すことになった。

 ラリー・トルコの最終日は、マルマリス(7.14km)、オワジュック(8.05km)、ギョクチェ(12.65km)のあと最終のパワーステージとしてマルマリスの2回目の走行が行われる4SS/34.98kmという短い一日。しかし、デイサービスなしで走行しなければならないため、最後まで油断は許されない。

 土曜日までの戦いを終えて、タナクがラリーをリード、13.1秒遅れの2位でラトバラが続いており、チームメイトが優勝を争うことによる同士討ちが懸念されるため、トヨタはチームオーダーを出すことになるとも言われていた。しかし、チームの決定を待つまでもなくラトバラはタナクとチームの選手権を最優先にするために、自身はポジションをキープすることを宣言した。

 オープニングステージのSS14マルマリスでタナクは5番手タイムで首位をキープ、ラトバラも6番手タイムで続き、トヨタが1-2態勢を堅持してスタートすることになった。

 だが、3位のヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20クーペWRC)を1分20秒近くも引き離しながら、無謀なチャレンジを押さえて走るかに見えたラトバラは意外にも大きくペースダウンすることはしていない。きわめてラフなコンディションのステージがこの日も続いているが、彼は「集中していくのに相当なエネルギーを使う。リズムを落としていくことは本当に大変なことだ」と語り、ペースを落とすことはかえって厳しいと明かしている。

 タナクの勝利も決定的とも言える状況だが、彼もけっしてクルージングというペースには落としていない。石が転がるコーナーでは思い切ってペースを落としながらもクリーンな路面ではアクセルをきっちり踏み込んでリズミカルな走りをキープ、19.7秒をリードして迎えたパワーステージでもクリーンなペースを維持して今季4勝目、フィンランドから3連勝を飾ることになった。

「金曜の時点では、僕たちは5位か6位以内に入れれば大満足だと思っていた。しかし、ここは速い者が勝つといった類のイベントではなく、賢いドライバーが勝つだろうということも知っていた。僕たちはチームの素晴らしい努力のおかげで問題を一つも抱えずにラリーをやり切ることができたよ」

 ラトバラは22.3秒差の2位でフィニッシュ、チームのために今季初優勝の夢を叶えることはできなかったが、今季最上位となる2位でのゴールでトヨタを1-2マニュファクチャラー選手権のトップへと押し上げることになった。また、これまで選手権をリードしてきたヒュンダイ・モータースポーツは、パッドンが今季初の表彰台となる3位でフィニッシュ、チームに貴重なポイントをもたらしたが、5ポイント差で選手権リーダーの座をトヨタに明け渡すことになった。

 最終日のもうひとつのハイライトとなったのはパワーステージでのボーナスポイントの行方だ。前日にサスペンションのトップマウントを壊してリタイアとなった選手権リーダーのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20 WRC)は総合18位で最終日をリスタートとなり、選手権の挽回が期待されながらもクラッシュを喫したセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)もまた総合12位という、ともにポイント圏外でのポジションでのリスタートとなる。

 2人の戦略はスタートから大きくわかれ、ほかのドライバーと同様にハードタイヤ6本をチョイスしたヌーヴィルに対してオジエはハード5本のみ。ヌーヴィルはパワーステージとして行われるマルマリス・ステージの1回目の走行でベストタイムを奪って完全な準備を整えたあとのステージでは大きくスローダウン、「こんなことはしたくないが、これがたったひとつの最終日の目的だ」と語った彼は、SS15とSS16の2つのステージで1分50秒近くを失いながらパワーステージにむけてタイヤを温存する。

 これに対してオジエは5本のタイヤしかもたないにもかかわらず、3番手タイムを奪ったオープニングSS以降もトップ10圏内でのフィニッシュを目指して、まったくスピードを緩めない。SS15でのベストタイムを奪った彼はSS16でも2連続ベストタイムを重ねてカイエタン・カイエタノヴィッチ(フォード・フィエスタR5)を捕らえることに成功、さらに7位につけていたチームメイトのエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)がこのステージに5分早着によりポジションを12位へと落としたため、ついにオジエはポイント圏内の10位までポジションを上げてパワーステージを迎えることになる。

 オジエは左リヤをパンクさせながらも鋭い石が転がるコース脇まで道幅ぎりぎりまで使ってフルアタックを敢行したが、フレッシュタイヤのヌーヴィルに対して1.7秒届かず、ヌーヴィルがパワーステージで5ポイントを獲得することになった。オジエは総合10位でフィニッシュしたことによって1ポイントを獲得、ボーナス4ポイントを加算したことで、最終的には2人のポイント差はラリー前と変わらず23ポイントを維持することになった。

 また、パワーステージで3ポイントを獲得したタナクが、選手権でオジエを抜いて2位へと浮上、選手権リーダーのヌーヴィルに13ポイント差まで迫っており、タイトルバトルは終盤になっていっそう激しさを増すことになった。

 2018年のWRCも残すところあと3戦。次戦は10月4〜7日行われるウェールズ・ラリーGBとなる。