WRC2017/08/21

タナクがドイツ優勝、オジエが選手権首位奪回

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 2017年世界ラリー選手権(WRC)第10戦ラリー・ドイッチュランドは、Mスポーツ・ワールドラリーチームのオット・タナク(フォード・フィエスタWRC)がアンドレアス・ミケルセン(シトロエンC3 WRC)のプレッシャーをものともしない走りでターマックラウンド初優勝を飾ることになった。タナクは今年のラリー・イタリア・サルディニアでキャリア初勝利を獲得しており、今回のドイツが2勝目となる。

 ラリー最終日は、ローサイム・アン・ゼィ(13.02km)とサン・ヴェンデラー・ランド(12.95km)という新しい2つのステージを2回ループする短い一日。ザールランドの高速のカントリーロードはオープンでひたすら続くような長いストレートが特徴だがコースは狭く、いくつかのトリッキーなジャンクションと速度制限のシケインなど最後まで油断できないステージとなっている。

 しかし、いかんせん最終日はわずか51.94kmと短く、土曜日を終えて後続のミケルセンに対して21秒をリードしているタナクにとっては安全圏ともいえるマージンだ。

 よく晴れ渡った最終日の朝、雨が降る気配はまったくなく、ドライコンディションのなかでオープニングSSがスタートする。ユホ・ハンニネン(トヨタ・ヤリスWRC)がベストタイム、エルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)を抜いて4位に浮上するなか、ミケルセンは2番手タイム、タナクとの差を18.5秒に縮めることに成功した。

「オットにプレッシャーをかけ続けている。ここでは何度もミスを見たので、それを続けている」と、ミケルセンは何かが起きることを信じて最後まで攻め続けると宣言した。

 クリーンな走りでトップをキープしたタナクは、「プッシュしてもらおうじゃないか。まだ先は長いからね。彼には彼の仕事がある」とミケルセンの挑発には乗らずに自身の仕事を全うするつもりだ。

 また、ミケルセンから8.2秒差で最終日をスタートしたセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)もミケルセンを無理して追い掛ける気はさらさらなく5番手タイムにとどまる。後続のハンニネンがペースを上げてきたとはいえ、1分20秒近くも離れているため、オジエは着実にポジションをキープしてタイヤをセーブ、最終ステージでのボーナスポイントだけに的を絞る戦略だ。オジエはパワーステージとして行われるサン・ヴェンデラー・ランドの1回目の走行となるSS18では9番手タイムとペースを落とし、ペースノートの熟成に専念することになった。

 ミケルセンはここでもハイペースでアタックするも、タナクから奪い取ったのはわずかに0.5秒にすぎない。タナクは狭くなったシケインでストローベイルをすり抜ける際に左右のミラーを失ったものの18秒のリードをキープ、余裕の表情でボスタールゼーのリグループへと帰ってきた。

 残されたのは朝と同じ2つのステージのリピートだ。タナクはSS20では9番手タイムと大きくペースをダウン、さらにたくさんのエストニア国旗が振られる最終ステージでもこれ以上ないほどのセーフティな走りでフィニッシュすることになった。ポディウムに駆け上がった彼のフィエスタWRCは左フロントタイヤのリムが大きく歪んでおり、けっしてラクなクルージングの最終日ではなかったことを物語っていたが、幸運の女神に見守られた彼がキャリア2勝目を獲得することになった。

「最高の気分だ。初めてのターマック・イベントでの勝利は気持ちいいね。ここで25ポイントを得たことで、僕たちもタイトルを狙えないわけじゃないということだ。まだまだ戦っていくつもりだよ」とタナクは喜びを語っている。

 ミケルセンは朝のループではワイドになる瞬間もあったが2回目のループではペースをゆるめて2位でフィニッシュ、シトロエンにとっては3月のメキシコ以来となる5カ月ぶりのポディウムを獲得することになった。

 また、オジエは新しいソフトタイヤ1本をパワーステージのために温存したが、けっして無理をすることなく4番手タイムでフィニッシュ、3位のポディウムを獲得。パワーステージでのポイント獲得を狙って最終日にリスタートしたティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)は、マシンの最適なセッティングを見つけることができずにパワーステージでノーポイントに終わったため、オジエは17ポイントという大差をつけてふたたび選手権リーダーに返り咲いている。

 また、マニュファクチャラー選手権では選手権2位につけるヒュンダイ・モータースポーツがヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20クーペWRC)がチーム最上位の8位という惨敗に終わったため、1-3フィニッシュによって今季4回目のダブルポディウムを獲得したMスポーツWRTが64ポイント差へとリードを広げている。

 前日のパンツァープラッテのベストタイムに続いて、この日も2つめのステージベストを奪ったハンニネンが4位でフィニッシュ、ドライコンディションのターマックでの速さを証明することになった。

 またSS18でハンニネンに抜かれたエヴァンスにとっては試練の最終日となった。彼はドライでのDMACKタイヤのグリップとトラクションに苦戦、じわじわと後続のクレイグ・ブリーン(シトロエンC3 WRC)にも詰め寄られることになる。ブリーンはSS20でキャリア初となるターマックラリーでのベストタイムを奪って1.7秒差に迫り、最後のパワーステージで1.9秒差をつけて逆転、5位のポジションでゴールすることになった。

 金曜日に点火系の問題によって首位争いから脱落したヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)は7位でフィニッシュ、パワーステージでのトップタイムを狙ったもののパンクへの懸念からタイムを伸ばせずに3ポイントを追加したにとどまり、ドライバーズ選手権3位を争いは優勝したタナクに21ポイント差をつけられてしまった。

 また、また同じく金曜日のアクシデントで上位進出のチャンスがなくなったエサペッカ・ラッピ(トヨタ・ヤリスWRC)は21位に終わったものの、最終日にペースを上げてSS19ではターマックラリーで初めてのベストタイムを奪い、そのポテンシャルの高さをアピールしている。

 2017年シーズンは残すところあと3戦、次戦は1カ月のインターバルのあと10月5〜8日に行われるラリー・デ・エスパーニャとなる。