WRC2025/05/17

タナクがポルトガル金曜日をリード

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 世界ラリー選手権(WRC)第5戦ラリー・デ・ポルトガルは金曜日を終えて、ヒョンデ・モータースポーツのオイット・タナク(ヒョンデi20 N Rally1)がラリーをリード、セバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリスRally1)が7秒差の2位でつづく展開となっている。

 2025年シーズンはポルトガルでいよいよヨーロッパのグラベルラウンドに突入する。ここから9月末のラリー・チリまで7戦連続でグラベルでの戦いが続くため、タイトル争いの行方を占う意味で非常に重要な一戦となる。

 ラリーカーは前日の木曜日にサービスパークがあるマトジニョスのエクスパノールから150km近いロードセクションを積載車に搭載されて南下、古都コインブラでのセレモニアルスタートに引き続き、オープニングステージのSS1フィゲイラ・ダ・フォズが行われている。

 ポルトガルの大観衆に見守られた2.94kmのこのターマックステージでベストタイムを奪ってオーバーナイトリーダーとなったのはエルフィン・エヴァンス(トヨタGRヤリスRally1)。しかし、0.2秒差の2番手タイムにはタナクとオジエが並ぶほか、トップ5が0.6秒差にひしめいている状態だ。

 フィゲイラ・ダ・フォズでのオーバーナイトリグループを経て、金曜日の舞台は、昨年に引き続いて壮大な景色が広がるアルガニル丘陵のクラシックステージを舞台とした試練の一日となる。

 モルタグア(14.59km)、ロウザ(12.28km)、ゴイス(14.30km)、アルガニル(18.72km)という4ステージが朝のループとして行われたあと、アルガニルでは昨年はタイヤフィッティングゾーンの機会しか設けられなかったが、今年は20分間のリモートサービスが認められる。昨年はノーサービスで金曜日の夜にサービスパークがおかれるエクスパノールへ戻らなければならなかったが、タイヤ交換だけでなく限られたパーツながらメカニックによる交換作業を受けることができるようになった。

 午後のループは、ロウザ、ゴイス、アルガニルの3ステージを走ったあと、ふたたびアルガニルでの20分間のリモートサービスを挟んで北上、モルタグアのステージを走ったあと昨年は、エクスパノールのサービスに戻って一日を終えていたが、今年はさらにアゲダ〜セヴェル(15.08km)とセヴェル〜アルベルガリア(20.24km)という2ステージが追加され、10SS/149.42 kmという、よりタフで長い一日となっている。

 この日のアルガニル丘陵の伝統的なステージはハードな路面で知られるが、昨年までは前夜のスーパーSSの前にチョイスしたタイヤセットのまま金曜日の朝のループを走り切らなければならなかったが、今年から木曜日の夜、オーバーナイトリグループの前にフレッシュタイヤに交換する機会が与えられている。

 すべてのドライバーがソフトタイヤ4本を選ぶが、オジエを除きトヨタ勢はハードを2本組み合わせた6本の戦略、オジエとともにヒョンデ勢はハード1本を加えた5本を選んでいる。

 オープニングステージのSS2モルダグアはユーカリの林のなかのハイスピードで流れるようなコースが特徴となっている。

 ここで素晴らしいスタートを切ったのはタナクだ。彼はフロントのリップスポイラーに小さなダメージもベストタイムを奪って首位へと浮上、前戦のカナリ明日のターマックで苦戦したヒョンデにとっては明るい朝となった。「序盤は湿っててグリップがあった。最後の方はルースになってリヤが機能していなかった。スタートは良かったが、まだ最初のステージだからね」

 林のなかは週前半の雨の影響が残りやや湿ったコンディションとなったため、フロントランナーたちはルースグラベルにそれほど手こずったわけではなさそうだ。2番手の走行順で走るロヴァンペラは「思っていたようなフィーリングは得られなかった」と語りながら0.2秒差の2番手タイムで続き、タナクから1.3秒差の2位へ。一番手スタートのエヴァンスも3番手という好タイムでスタート、3位につけている。「グリップがかなりトリッキーで、ところどころでかなり低かった。全部というわけではないけど、ミックスだった」とエヴァンスは語った。

 4位にはアドリアン・フールモー(ヒョンデi20 N Rally1)、5位にはオジエ、6位には勝田貴元(トヨタGRヤリスRally1)というオーダーで順調に続く。

 ティエリー・ヌーヴィル(ヒョンデi20 N Rally1)は12km地点でリヤをスライドさせてバンクにヒットしてハーフスピン、幸いにも立木にはヒットしなかったが12.3秒をロス、サミ・パヤリ(トヨタGRヤリスRally1)の後方8位へとポジションダウンしてしまった。さらに、期待の新星マルティンシュ・セスクス(フォード・プーマRally1)はスタートしてわずか3つ目のコーナーでかき出されていた石にヒットして左フロントタイヤをパンク、タイヤ交換のため3分30秒遅れとなった。

 SS3ロウザでもタナクが連続してベストタイムを奪い、ロヴァンペラとの差を2.5秒へと広げることになった。「楽しもうと努力した。なかなか良いステージだった。マディな場所もあり、ステージは思ったほど乾いていなかったが、全体的にグリップはまずまずだった。ベストを尽くしている」とタナクは笑顔で語った。

 しかし、ロヴァンペラの表情はより沈んでいた。「今回は明らかに悪かった。マシンのフィーリングが難しく、アンダーステアに悩まされた。滑りやすい場所もあった」とロヴァンペラは認めた。それでも前ステージに続いて彼が2番手タイムと思われたが、後方のフールモーが二人の間に割り込むように2番手タイムを奪い、エヴァンスを抜いて3位へ浮上してきた。「差はかなり接近している。どこもかしこもすごく湿っている!もっと速く走れるように頑張らないと、それだけだ」

 オジエはタイムが上がらずここでも6番手タイム、ここまでは首位から9.6秒遅れの5位につけているが、0.3秒後方には勝田が近づいてきた。昨年のラリー・チリ以来のグラベルラリーに臨むオジエにとって、ポルトガルのプレテストは雨にたたられてしまい、ドライの路面をハンコックタイヤで走るのはこの週末が初めてだ。「トライはした。こちらの方が調子良かったが、まだまだ遅すぎる。今のところよくわからない、なんて言っていいのか難しい」とオジエは苦い表情だ。

 SS4ゴイスは路面コンディションがほぼドライとなったことで、それまでのステージとは異なる展開となった。力強いペースを刻んだのはフールモーだ。彼はオジエを0.4秒差で抑え、この週末初のベストタイムを奪い、ロヴァンペラを抜いて総合2位へと浮上することになった。「本当に素晴らしいステージだった。タイヤの選択が鍵になりそうだ。素晴らしかったよ!」
 
 タナクは引き続きラリーをリードしているが、フールモーはタナクとの差をわずか2.1秒に縮め、さらにSS5アルガニルでも連続ベストタイムを奪って0.2秒差に迫り、ヒョンデが1-2態勢で朝のループを終えることになった。

「このステージではハードタイヤを選択したが、明らかに良い選択ではなかった。路面は思ったよりも湿っていて、マシンにかなり手こずった」とタナクは複雑な表情で語ったが、フールモーはワールドチャンピオンを上回るペースを維持していることに明らかにご機嫌だ。「テクノロジーのおかげだ!マシンのフィーリングはかなり良い。このステージはグリップがとても低くて、クレイジーだった。思いっきりプッシュした。良いタイヤ選択だ」

 僅差で争うオジエと勝田がここでもそろってペースをアップ、二人そろってロヴァンペラをパス、オジエが3位に浮上、勝田も0.7秒差の4位で続いている。

 昨年は金曜日の朝をリードした勝田だが、ここまではハンコックの特性を慎重につかもうとしているようだ。「ミスしてパンクしないように、ちょっと慎重なドライビングを心がけてきた。このステージは非常にスリッパリーで、完璧なドライブではなく、ところどころ躊躇ったし驚きもあったが、ヒヤっとする瞬間はなかった。大丈夫だ」

 ロヴァンペラは3位から5位へと後退、トップからは13.1秒遅れだ。彼はグリップに苦しんでいるとため息まじりだ。「今年は例年とはまったく違うコンディションだ。路面は非常にスリッパリーで、どこにもグリップがない。ドライブするのが非常に難しい。レッキ中に雨が降ったあと、何らかの機械でステージが踏み固められたので、かなり異例のコンディションだ。路面は本当に硬く、ポルトガルではこんなことは初めてだ」とロヴァンペラは驚きの声を上げた。

 ロヴァンペラの後方8.6秒差の6位で続くエヴァンスもこのステージだけで12秒あまりもロス、路面はまるでガラスのように滑りやすいと訴えた。「非常にスリッパリーで判断も難しい。何度もスライドし、かなりイライラの溜まるドライブだった」

 エヴァンスの後方4.1秒差の7位につけるヌーヴィルはチームメイトたちが好調なペースを刻んでいるだけに厳しい表情だ。「非常にスリッパリーで、グリップは皆無だ! 常にグリップを信頼することができず、タイムを失っているよ。今日一日を乗り切れるリズムを見つける必要がある」

 朝のループのあと、アルガニルに設けられたリモートサービスではトヨタ勢がペースを挽回するためにダンパーを4本とも新品に交換、ライドハイトを調整している。ヒョンデ勢もブレーキをリフレッシュするとともにダンパーのプリロードを調整、車高を上げて2回目のループへと向かって行った。

 ロウザの2回目の走行となるSS6は荒れ、わだちも多くかき出された石も増えている。すべてのドライバーがハードを主体としたタイヤ選択としたが、期待したほどグリップはないようだ。タナクは3番手タイムで首位をキープ、2位のフールモーも0.5秒で続いているが、1−2をキープするヒョンデ勢をここではトヨタの速さが上回る。

 3位につけるオジエが今週末初のベストタイム、2位のフールモーに5.5秒差へと近づいてきた。「ここのステージは乾くことを期待していたが、まだ滑りやすいセクションがいくつか残っている」とオジエは語ったが、トヨタ勢のペースは朝より明らかに改善している。勝田もオジエから0.9秒遅れの2番手タイムで続き、二人の差は1.6秒と僅差だ。

 さらにSS7ゴイスでは、今度は勝田がベストタイム、オジエを0.3秒差でパスして3位へと浮上してきた。「何がうまくいっているかわからないけど、すべて順調だった、乗っていて快適になっているし、バランスも良くなっていてだんだん自信が持てるようになってきた。ただあまりにもラフで、クルマにとっては本当にきついコンディションだ」

 タナクが首位をキープもフールモーが引き続き0.8秒差の2位で続いており、フールモーはヒョンデの1−2態勢に笑みをみせた。「本当に素晴らしい戦いだ。チームとしてまとまろうと努力している。これはチームにとって非常に重要なことだ。今回はかなり難しい。でも、ここでは朝のようなフィーリングは得られなかった。正直言って、かなりトリッキーだ」とフールモーはコメントした。

 だが、鉄壁にみえたヒョンデの布陣は次のSS8アルガニルでもろくも破れることになった。2位につけていたフールモーが左コーナーのイン側の溝にタイヤを落とした瞬間にフロントサスペンションが破損、リタイアをなってしまった。

 フラストレーションを抱えながらも、タナクはポルトガルで力強いペースを見せて2回目のループでも首位を守りきっている。「(フールモーのことは)チームにとって良くない状況だ。朝の最初の走行はかなり良かったけど、その後は、完璧な挙動と言えるような、スイートスポットを見つけることができなかった。常に努力はしているけど、マシンとの調和が取れていないと、当然ながらスピードを出すのは難しい」と彼は指摘した。

 これで勝田が2位に浮上するとともに首位のタナクに3.5秒差に迫ったが、コースをふさぐようにストップしたフールモーのマシンを避けるためにスロー走行しているため、タイムの救済次第ではさらにその差は縮まるかもしれない。しかし、その後方0.4秒差には3位のオジエがぴたりと続いている。

 チームメイトたち同じくポジションを上げて4位で続くロヴァンペラは、エヴァンスと同様に、路面をクリーニングしているため、ここまで厳しい金曜日を過ごしてきたが、ここでは2番手タイム、初めて自身のパフォーマンスに改善が見られたことを喜んだ。「午後になり、フィーリングは少し良くなった。スタートしてからポルトガルらしいいいコンディションに恵まれたのはこれが初めてだと思う」。午後になってペースが改善したため、首位のタナクからもその遅れはわずか14.7秒にすぎない。

 ロヴァンペラを0.5秒上回ってこの週末初めてベストタイムを刻んだのは5位につけるヌーヴィルだ。午後のループの最初のステージでエヴァンスを交わして以降、SS7でも2番手タイムを奪うなどペースをアップ、ロヴァンペラにも8.3秒に近づいている。「まだ十分ではないが、少しずつフィーリングとリズムを取り戻している。朝はクルマのバランスの問題があった。2回目の走行ではコンディションは良くなってきていて、だんだんと乗りやすく感じている」

 ロヴァンペラはリモートサービスで後方のよりクリーンな路面を走るヌーヴィルが脅威であることを認めつつも、明日のためになんとか逃げ切りたいと計画を明かした。「明日の走行順のためにできるだけ良いポジションを狙う必要があるのは確かだね。ティエリーはかなり接近している。路面が乾けば乾くほど、彼の出走順の恩恵は大きくなるだろう。彼を後方に留めるのは難しいかもしれないが、最善を尽くすつもりだ」

 アルガニルのリモートサービスを挟み、モルタグアの2回目の走行を行ったあとこれまで走ったことのない2つの新ステージを加えたこの日最後のループが待ち受ける。初めて走る終盤の2ステージは朝のループで経験したようにルースグラベルが多いためソフトタイヤをオプションとして加えるべきか、それとも気温は25度あまりもあるためハードを多めに選ぶべきか迷うところだ。勝負をかけたタイヤ選択は大きく分かれ、ヌーヴィルとタナクはハード3本とソフト2本を組み合わせ、オジエはハード5本、勝田とロヴァンペラはハード4本とソフト1本を搭載した。
 
 モルタグアの2回目の走行となるSS9ではタナクがベストタイムで首位をキープ、2位につけていた勝田は5.2秒遅れの5番手タイムと遅れ、オジエに1.8秒差で抜かれて3位へとポジションを落とした。2つのステージを残してタナクのリードは6.9秒となった。
 
 4位につけるロヴァンペラは後方で走るヌーヴィルの追い上げを覚悟していたが、ヌーヴィルは朝のループでミスした影響でナーバスになってしまい、二人の差は9.1秒になった。

 SS10アゲダ〜セベレは、1回目の走行のため多くのルースグラベルが道を覆っているようにも見えたが、グレーダーがかけられたように比較的クリーンだ。

 2位につけるオジエがベストタイム、首位のタナクにプレッシャーをかけ続ける。二人の差は5.8秒に縮めてみせたが、この日最後のSS11セヴェル〜アルベルガリアではタナクが、この日4つ目のベストタイムを奪ってオジエを7秒さへと突き放した。これは彼にとってのキャリア通算400回目のベストタイムだ。「厳しい一日だが、特にステージの2回目の走行はきつかった。僕たちはまだぴったりのセットアップが見つけられず、少し苦戦している。でも、少なくとも今日の最後の2つのステージはクリーンに走ることができた」とタナクは語った。
 
 オジエはタナクを抜きさることはできなかったものの、タイヤを温存しながら明日以降に向けてラリーをマネージメントしていたと語っている。「このステージはクリーンに行った。このステージではできる限りのことをして、ソフトタイヤはラリーの残りのために温存した。それが正しかったかどうか、これからを見てみよう」とオジエは付け加えた。

 勝田は総合3位を維持しているが、新しい2つのステージではともにオジエに引き離されてしまい、その差は20.1秒へと大きく広がった。なにかの技術的なトラブルがあるのか、タイヤを温存しているのか、チャンピオンと秒差で争っていた勝田が突然、ペースを落とした理由ははっきりとしていないが、彼は「多くを語るつもりはない」と明らかに失望した表情を浮かべていた。

 最後のステージは非常にルースグラベルが多く滑りやすくコンディションとなったが、ロヴァンペラは後方のヌーヴィルの追撃から4位を守りきるとともに勝田の1.2秒差に迫っている。

 ヌーヴィルはロヴァンペラの後方4.4秒差の5位で金曜日を終えたが、マシンのフィーリングは良くなっており、明日への自信をみせている。「非常に難しかった。頑張ったが、リヤがかなりスライドした。追いつけなかったが、僕たちがスピードを取り戻し、マシンで再び快適さを感じられていることはうれしい」

 サミ・パヤリ(トヨタGRヤリスRally1)がこの日もっともいい走りをみせて3番手タイムを記録、路面掃除に苦しむチームメイトのエヴァンスから6位のポジションを奪ってみせた。選手権リーダーとして金曜日のコースオープナーという試練に臨んだエヴァンスは、このチャレンジに精根尽き果てたかのように首を横に降った。「厳しかった。もう少し良いステージを期待していた。終盤は本当にクレイジーで、グリップが全く無かった。かなり道掃除が多いと思う」

 チームメイトとのバトルを制したグレゴワール・ミュンスター(フォード・プーマRally1)が最終ステージでジョシュ・マクアリーン(フォード・プーマRally1)を抜いて8位で続いている。朝のパンクで大きく遅れたセスクスは、午後のモルタグア・ステージでもバンクにヒットして大きなスピンをしたものの、どうにか25位で続いている。