WRC2019/06/16

タナクが今季4勝目にむけて26秒をリード

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 2019年世界ラリー選手権(WRC)第8戦ラリー・イタリア・サルディニアのレグ2は、トヨタGAZOOレーシングWRTのオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)がこの日行われた6ステージすべてにおいてベストタイムを獲得、25.9秒差をつけてラリーをリードしている。タナクが一日に行われたすべてのステージでベストタイムを奪ったのは、モンテカルロのレグ3に続いて今季これが2度目のことになる。

 朝7時の時点での気温は19度と金曜より明らかに涼しく、日中は28度近くまで上昇するとの情報だ。トップ3のタイヤ選択は大きく分かれることになる。11番手という後方からスタートするオーバーナイトラリーリーダーのダニエル・ソルド、そして10.8秒差の2位につける若手のテーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)はともにハード5本をチョイス、首位から11.2秒差の3位で土曜日を迎えたタナクがミディアム3本+ハード2本を組み合わせたことは興味深い。

 オープニングステージのSS10コイルーナ〜ローレ(14.97km)では、タナクがスムースな砂質の路面と岩石の間をすり抜けるワインディングをトップタイムで駆け抜けて発進することになった。「本当にサンディだったし、これからのステージは以前にもスリッパリーだった。すべて問題ないと信じている」

 続くSS11モンチ・ディ・アラ(28.21km)ではソルドも意地を見せるようにプッシュするが、ルースグラベルが多くスリッパリーなステージの終盤でワイドになってタイヤをディッチに落としてしまう。彼はそこまでタナクとほぼ同等のペースをみせていたが、このスライドは痛い。連続してベストタイムを叩き出したタナクから2.1秒遅れの2番手タイム、リードは守ったものの、もはやリードは2.6秒にすぎない。

「ステージはスリッパリーだ。かなりタイムロスをしたよ。クルマをコントロールできないからうまくドライビングできないんだ」とソルドは不満をもらす。金曜日の朝のループでは、とくに後方のドライバーたちからミディアムでは厳しかったとの判断から、多くのドライバーが土曜日の朝はハードを主体としたチョイスを行った。しかし、土曜日のモンテ・アクート・エリアのステージは全体的にややサンディなキャラクターをもつステージが多く、初日のように硬い岩やコンクリートが露出してないため、ハードでは明らかにスリッパリーだったようだ。

 タナクの進撃は止まらない。彼は、ラリー最長となる28.03kmのSS12モンテ・レルノでは、4.5km地点のタイトターンでワイドになってハーフスピン、エンジンをストールさせたにもかかわらず、ソルドに9秒差をつける驚異的なベストタイムで首位に浮上、ソルドは6.4秒差の2位に後退した。

「すごく頑張ってトライした。ここはストールを起こしてタイムもロスしたが、問題はない。間違いなく正しいタイヤ選択だったね」とタナクは語った。ハードでなくても長いループでもグリップを維持できることは、今日とほぼ同じステージが組みあわされていたキャリア初勝利を飾った2017年の土曜日のループで実証済みだ。「ここがとても滑りやすいことはわかっていたよ。2年前、同じタイヤパッケージを使用したので、すべて問題ないと知っていた。しかし、次のループが簡単ではないことも僕らは知っている。ハードに攻め続ける必要があるよ」

 3ステージ連続して2番手タイムとなったソルドは、タナクのスピードをくい止めるために何もできなかったと語った。「ホイールスピンしてしまいここでも多くのタイムを失った。オイットに付いていくのは難しかった。でもトライし続けるよ」

 ソルドと同様にこの長いステージのためにハードタイヤをチョイスしたスニネンも朝から3連続3番手タイムを並べてソルドの20.7秒後方に食らいついている。4位をめぐるバトルは熾烈だ。ステージごとにエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)とアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)が順位を入れ替える大接戦を演じてきたが、ミケルセンが2.6秒をリードしてデイサービスを迎えたが、エヴァンスの10.8秒後方でクリス・ミーク(トヨタ・ヤリスWRC)が逆転のチャンスを狙っている。

 デイサービスを迎えたアルゲーロは日射しは強いが気温は26度だ。午後のループはふたたびタナクのベストタイムで始まることになった。タナクはSS13コイルーナ〜ローレで朝から4連続のベストタイム、2位のソルドとの差を10.6秒に広げるや、続くSS11モンチ・ディ・アラでもさらにペースをアップ、その差を17.7秒まで広げることに成功する。

 土曜日最後のステージとなるタフなSS12モンテ・レルノで、タナクは快調でクリーンな走りを続けながらも、有名なミッキージャンプもペースを押さえ気味に跳び、さらにゴール前のウォータースプラッシュでもマシンにダメージを与えないように止まりそうなスピードに落として慎重に渡りきっている。それでも彼はこの日6つめとなるベストタイムで完璧な一日を締めくくり、ソルドを25.9秒差まで突き放した。

「ここは慎重にドライブすることに努めた。非常に良い一日だったからね。一番の目標はラリーの勝利だ。今日は良い戦いだったよ」とタナクは満足げに一日をふり返った。ステージエンドでタナクとのタイム差を知らされても、ソルドはもはや驚きもしない。「パンクしたくなかったので、ここでは少し慎重に行き過ぎた。オイットと競うことは本当に難しいよ・・・」

 SS14、15で連続して2番手タイムを奪ったスニネンは、この日の6ステージすべてでトップ3のタイムをマークしたことになる。ソルドと17秒差の3位をキープしたことに彼はうれしそうな笑顔をみせている。

 スニネンの後方では4位をめぐるバトルが午後のループでもさらにヒートアップすることになった。2.6秒差で迎えたエヴァンスとミケルセンの二人はSS13でなんと同タイム、SS14ではミケルセンが挽回してエヴァンスのリードは1.4秒へと縮まることになった。さらにはじわじわとこの二人に近づいてきた後続のクリス・ミーク(トヨタ・ヤリスWRC)もこのステージを終えてミケルセンに5.4秒差まで迫り、完全に三つ巴決戦となった。

 だが、最終ステージをスタートして9.6km地点でミークは痛恨のパンク。タイヤ交換によって上位フィニッシュの夢が完全に絶たれた彼はエヴァンスの目の前でコースへと戻ることになってしまう。ミークが巻き上げるダストに視界を阻まれたエヴァンスはステージエンドで「大半でミークのダストによってスタックした」と憮然として表情で答え、大きなタイムロスを覚悟したかのようだった。しかし、タイムが注目されたミケルセンは、リヤタイヤを激しく摩耗させてマシンを大きくスライドさせながらゴール、エヴァンスとの差は7.9秒へと広がってしまった。

 ミケルセンの後方59.1秒差の6位につけるのはティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)。朝のループではタイヤチョイスのミスによって大きくタイムを失い、ミッドポイントサービスでセットアップを変更したにもかかわらず午後のループでも上位とのタイムを縮めるほどのインパクトのある走りをみせられず、「マシンが望むように動いてくれなかった」と首をひねっていた。

 タイヤ交換で遅れたミークは、ヌーヴィルとエサペッカ・ラッピ(シトロエンC3 WRC)に抜かれて8位まで後退、9位にはスポット参戦のユホ・ハンニネン(トヨタ・ヤリスWRC)が続いている。

 いっぽう、失望のサルディニアとなったセバスチャン・オジエ(シトロエンC3 WRC)は昨日のクラッシュに続き、レグ2も不運の朝になった。彼はSS11でふたたび岩にクラッシュ、リヤのサスペンションを壊してしまい、首位から1時間19分遅れの35位、選手権リーダー陥落は決定的となっている。

 明日の最終日はカーラ・フルミーニとサッサリ〜アルジェンティエラというおなじみの2つのステージを2回走る4SS/41.90kmという短い一日だ。大きなリードに支えられたタナクが2年前につかんだ勝利のシナリオどおりにこのまま4勝目を飾って選手権リーダーを奪い返すことができるのか。注目のオープニングSSは現地時間8時15分(日本時間15時15分)にスタートを迎える。