WRC2021/01/22

タナクが初日をリード、ロヴァンペラが3.3秒差

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 2021年世界ラリー選手権(WRC)開幕戦のラリー・モンテカルロは、21日木曜日に初日を迎え、ヒュンダイ・モータースポーツのオイット・タナク(ヒュンダイi20クーペWRC)が2つのステージで連続してトップタイムを奪ってラリーをリード、3.3秒差の2位に20歳のカッレ・ロヴァンペラ(トヨタ・ヤリスWRC)が続く展開となっている。

 ラリー・モンテカルロは、フランス国内の新型コロナウイルスの感染状況から開催が危ぶまれたときもあったが、日曜日にはモンテカルロの主要なルートやホストタウンがあるギャップを管轄するオートザルプ県が無観客や健康管理について徹底的に配慮することなど一定の条件をつけて開催についてGOサインを出すとともに、英仏国境閉鎖のなかではあったがMスポーツ・フォードも特別な許可に基づいてスタート地点に辿り着くことに成功、3つのマニュファクチャラーチームがすべて出揃った形で110周年記念のモンテカルロがスタートすることになった。

 木曜日のデイ1に行われるサン・ディスディエ〜コール(20.58km)とサン・モーリス〜サン・ボネ(20.78km)の2つのステージは当初、ナイトステージとして行われる予定だったが、夕方18時に予定されたギャップでのセレモニアルスタートはフランス全土の夜間外出禁止の制限によって13時のスタートに変更されたことにともない、オープニングSS のサン・ディスディエ〜コールは14時すぎにスタートを迎えることになった。

 気温は5度と比較的暖かく、朝までの大雨が路面に残るウェットコンディションのなかでラリーはスタートする。路面に雪やアイスの残るセクションはなく、シンプルなウェットのようにも見えた。だが、路面のグリップは決して一定ではなく、ところどころコーナーは雨がふたたび降り始め、水と泥でかなりスリッパリーとなっており、最初の犠牲者がここで現れることになる。

 テーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)は最後のスプリットまで、最終的にベストタイムとなったタナクのタイムをも0.5秒上回るセンセーショナルな速さをみせていたが、20.1km地点の右コーナーの出口でワイドになってバンクにヒット、反動で跳ね上げられたマシンはそのまま横転しながらコースを横切って崖下へと転落することになった。幸いクルーにケガはないものの、リヤから立ち木に激突したためマシンは大破しており、明日のリスタートは厳しそうだ。

 ヒュンダイでの2シーズン目を迎えたタナクにとっては幸先のいいスタートになった。昨年は大きなクラッシュでラリーを終えたが、トリッキーな雨のなかでワイパーがストップするトラブルにもかかわらず、後続に3秒差をつける素晴らしいタイムで発進することになった。「いいタイムでしたね」というレポーターの質問にも、「視界が少し難しかった。良くはないね!」と彼は答えたが、2番手タイムのロヴァンペラには3秒差、3番手タイムのエルフィン・エヴァンス(トヨタ・ヤリスWRC)には3.5秒、4番手のセバスチャン・オジエ(トヨタ・ヤリスWRC)には3.6秒差をつけたのだから、気分は悪くないだろう。

 このステージで驚きの速さをみせたのは、チームメイトたちを抑える速さをみせたロヴァンペラだ。「マシンは慣れているのでかなり快適だったが、ウェットでの新しいタイヤの反応を見るにはかなりトリッキーだった。次のステージもさらにトリッキーになるだろうから、慎重に速く走ることを目指すよ」と彼はリスクを負っているわけではないと冷静な表情をみせる。

 エヴァンスはステージ序盤でオジエに3秒ほどの差をつけていたが、スニネンが転倒した同じコーナーでヤリスのリヤを一瞬失ったため、わずかに遅れてしまっており、オジエは慎重なスタートを切ったがブレーキに問題があったと説明する。「序盤は少し気をつけていたんだけど、ブレーキに問題が出てしまったんだ。ペダルが下まで踏み切ってしまうことがあったので、チェックしなければならない」

 ティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)はオジエと0.3秒差の5位につけたが、ニコラ・ジルスールとのコンビを解消し、新しいコドライバーのマルタイン・ウィダーグとテストもしないまま本番に臨んだため、ここではかなり奇妙なフィーリングだったと告白した。「正直、奇妙な気分だが、マルタインはWRCの最初のステージであのスピードで良い仕事をしてくれた」とヌーヴィルは語っている。「もちろん週末を通して、僕らはいい協力ができるように取り組んでいくつもりだ。正直なところ、思ったより良いステージだった」

 続くSS2はサン・モーリス〜サン・ボネの20.78km。サン・モーリスからウバックの小さな村までの最初のセクションは、木曜日の最終ステージの中で最もハードだ。ナローなセクションには最初のステージには見られなかった路肩の雪によってさらに狭くなっており、アイスパッチが少しみられたものの、ほかは概ねウェットだ。

 首位のタナクがここでも連続してベストタイム、0.3秒差の2番手タイムで続くロヴァンペラに3.3秒差をつけて初日を終えることになった。タナクはスタート前にエンジンに問題があったと告白、このタイムはエンジンエンジニアに火をつけられたからだと答えている。「スタートのほんの数秒前に、スタートラインでエンジンが2度止まった! 彼らが僕に火をつけたんだ。そのことを除けば、クリーンなステージだったよ!」

 2位にはWRカーでの2回目のモンテカルロとは思えないペースをみせたロヴァンペラだが、それは自身にとっても驚きであるようだ。「ペースノートもそれ以外のすべても、フィーリングがとても良いので驚いている。グラベルクルーが素晴らしい仕事をしてくれているので、僕たちはこれを継続しなければならない」

 前ステージで発生したアクシデントの影響でこのステージのスタートが遅れたため、上位勢はタイムコントロールのまえでタイヤを冷やすことになってしまった。エヴァンスは「温まってフィーリングが得られるまでかなり時間がかかった」と不満をみせたが、それでも3番手タイムで首位から8.5秒差でこの日を終えることになった。

 ヌーヴィルは昨年のモンテカルロ・ウイナーらしく最初のスプリットではタナクと同じペースをみせたが、終盤で大きく遅れ、最終的にチームメイトに12.1秒もの大差を付けられることになった。インカーカメラが映し出す映像でもわかるほど、彼は不満な表情をみせており、ステージエンドでもライブTVのインタビューに答えることなく走り去っている。それでも、彼はオジエを0.9秒上回って4位へと浮上している。

 オジエはロードセクションでのチェックでも前ステージで見舞われたブレーキの問題は解消していないのか、ここでも慎重な走りをキープしたことを告白した。「このステージもかなり慎重に走った。(ブレーキは)今夜調べるつもりなので、チームが何か対処できると思う」。ここで13.3秒もの遅れを喫した彼は、首位からは16.9秒差の5位で初日を終えることになった。

 トップ5の後続たちでは、早くも上位陣からは大きなギャップをつけられている。カルロス・デル・バリオとの最後のラリーに臨んだダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)は、最初のステージでタナクから18秒も遅れ、ここでも23秒をロス、42.7秒遅れの6位となってしまったことに失望を隠せない。「最初のステージはフィーリングはOKだったけど、ここではマシンから変な音がしている。これまでに聞いたことがない音だよ」

 初のモンテカルロ参戦にもかかわらずピエール-ルイ・ルーベ(ヒュンダイi20クーペWRC)が7位につけており、8位にはWRC2首位のアンドレアス・ミケルセン(シュコダ・ファビアRally2エボ)、9位にはアドリアン・フォールモー(フォード・フィエスタRally2)がWRカーに割って入ってみせている。

 Mスポーツ・フォードの唯一の生き残りとなったガス・グリーンスミス(フォード・フィエスタWRC)はフォールモーから2.8秒差の10位につけている。

 また、勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC)はオープニングSSでのスピンでフロントのエアロを壊してしまい、マシンが不安定なグリップになったためかSS2でもふたたびハーフスピンを喫して初日は11位にとどまっている。

 22日金曜日のデイ2も一日のスケジュールを2時間前倒しにしてスタートする。最初のアスプルモン〜ラ・バティ・デ・フォン・ステージは現地6時10分(日本時間14時10分)のスタートとなる。今夜から明日にかけてギャップで雪が降るとの予報はないが、山間部では氷点下になるとの情報もあるため、早朝のステージでは凍結した路面がドライバーたちを悩ますことになるだろう。