WRC2018/09/16

タナクが首位浮上、トヨタが1-2態勢

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 世界ラリー選手権(WRC)第10戦ラリー・トルコ・マルマリスは土曜日、厳しいコンディションのなかでフロントランナーが次々とトラブルに見舞われ、ラリーリーダーが3回も入れ替わる大乱戦となり、オイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)が首位に浮上、チームメイトのヤリ-マティ・ラトバラも13.1秒差の2位で続き、トヨタGAZOOレーシング・ワールドラリーチームが1-2態勢を築くという、想像もできなかった展開になっている。

 ラリー・トルコのDAY2はアスパランのサービスから西へと移動、ダッチャ半島のステージへと向かう6SS/130.62kmだ。ここがサバイバル戦になるとのラリー前の予想が忘れ去られたように、金曜日を終えて首位のティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)と2位のセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)はわずか0.3秒という、まるでスムースなグラベルラウンドでのスプリント決戦のようなバトルを演じていた。だが、本当の戦いはこれからであることを誰もが思い知らされる衝撃的なニュースとともに土曜日の朝は始まることになった。

 ヌーヴィルは、オープニングSSのSS8イェシルベルデ(34.24km)でも快調なペースでさらにリードを広げるかともみえたが、残り8km地点で左フロント・サスペンションのトップマウントを破損、ダンパーがボンネットを突き抜けた状態で3分30秒あまりをロスしてどうにかゴールを迎えたものの、ダメージはあまりにも大きく修理を途中で断念、リタイアとなってしまった。

 ヌーヴィルの後退によって、SS8でベストタイムを奪ったオジエが首位に浮上、25.5秒差の2位にアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)、45.9秒差の3位にヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)というオーダーに変わったが、今度は首位に立ったばかりのオジエがSS9ダッチャ(10.70km)でクレストを越えた先の穴にヒット、サスペンションとステアリングアームを破損することになった。

 オジエはここで16.2秒をロス、どうにか首位をキープしたが、ダメージは大きくロードセクションで修理作業は手間取ることになり、SS10イチメレル(20.37km)のイムコントロールに6分遅れ、この時点で1分のペナルティで首位陥落は決定的となったが、彼はそれにめげることなく敢然とスタート、駆動系が完全に直ってないためマシンはコーナーで暴れまくったが、彼はここでベストタイムを獲得、4位をキープすることになった。

 朝のループを終えて、SS9でベストタイムを奪ってペースを上げてきたミケルセンが首位、36.3秒差の2位にはタナクが続くことになった。タナクはSS9でステアリング・コラムの問題に見舞われたにもかかわらず、SS10で2.1秒差をつけてラトバラを抜くことに成功、オジエはラトバラの後方7.7秒差につけており、まだ表彰台は十分可能なポジションでサービスへと帰ってきた。

 だが、ドラマはこれで終わったわけではなく、午後のループにはさらなる悲劇が待っていた。SS11イェシルベルデをスタートして19.8km地点の左コーナーでなんとオジエが集中力を乱してコースオフ、マシンはルースグラベルでスタックしてしまったために脱出は不可能だ。奇跡的な修理作業で選手権で大きく挽回するチャンスを得たにもかかわらず、信じられないミスで彼はラリーを終えることになってしまった。

 さらにこのステージでは首位のミケルセンも駆動系に問題を抱えて2度のスピンを喫してエンジンをストールさせたために1分40秒を失い、首位から転落することになった。ステージエンド後、マシンを止めた彼はアンダーガードを外して修理を行うもトラブルは簡単に治りそうにない。彼もまた掴みかけた移籍後初優勝のチャンスをここで失うことになってしまった。

 これでタナクがこの日4人目のラリーリーダーに浮上、トヨタの2台によるトップ争いに絞られることになった。だが、チームメイトから2.1秒遅れで午後のループを迎えたラトバラもこのステージでリヤをパンク、さらに残り5km地点ではまるでドイツでストップしたときのように油圧系に問題を抱えてパドルシフトが時折使用できない問題に見舞われ、ベストタイムを叩き出したタナクに13秒差をつけられることになってしまった。

 ラトバラは、エンジニアと電話でやりとりを行い、高温になったオイルをロードセクションで冷却したあとは油圧の問題は解決、SS11でベストタイムを叩き出して、激しくリヤタイヤを摩耗させたタナクに8秒差まで襲い掛かかった。

 だが、最終ステージにむけてニュータイヤを温存していたタナクがふたたびベストタイムを奪い、リードを13.1秒差まで広げて首位でDAY2をゴールすることになった。

「驚きのラリーになった。多くのことが起きたが、僕たちはこのラリーがタフになることを知っていた。パフォーマンスは発揮できていないが、明日もひたすら道路上にマシンを留めることに集中しなければならない」とタナクは語った。

 チームメイト同士での優勝争いとなったが、ラトバラは、「チームオーダーのことはわからないが、チームにとってベストな結果になるようポイントを持ち帰らなければならない」と、トヨタが1-2態勢のまま明日をゴールすることが重要だと語っている。

 二日目を終えて首位から1分10秒遅れの3位にはヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20クーペWRC)が続くことになったが、彼より速いペースで前を走っていたチームメイトたちがトラブルで消え、ドライビングスタイルに苦悩してきた自身がこのポジションでいることに複雑な表情だ。それでも彼は「チームの選手権を守るためにもクリーンでなラリーを最後まで続ける」と決意を語っている。

 一番手のスタートでこの日をスタートしたテーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)はただひたすら路面掃除との戦いに苦しむことになったが、Mスポーツ・フォードの最上位となる4位につけており、フロントデフの破損によってフロントの駆動を失ったミケルセンは修理にも手まどったこともあり5位まで順位を落としてしまった。

 2人のチームメイトが快走するなか、残念ながらエサペッカ・ラッピ(トヨタ・ヤリスWRC)はSS10でスピンしたあとマシンが斜面を滑り落ちてリタイアとなってしまった。また、朝のループを終えて6位まで挽回してきたクレイグ・ブリーン(シトロエンC3 WRC)はSS11を走行中にコクピットに煙が充満して前が見えなくなるトラブルで6分をロス、どうにかゴールしたが、ロードセクションでついにリヤから火災が発生、C3は焼け落ちてしまった。

 ラリー・トルコは試練の一日を終えて、残されたのは4SS/34.98kmという短い最終日だけだ。オープニングSSのマルマリス(7.14km)は現地時間10時8分(日本時間16時8分)のスタートが予定されている。