WRC2018/08/18

タナクが5連続のベストタイムでドイツをリード

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 世界ラリー選手権第9戦ラリー・ドイッチュランドは、トヨタGAZOOレーシング・ワールドラリーチームのオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)が金曜日の6ステージのうち5つのステージでベストタイムを奪い、2年連続のドイツ勝利にむけて好スタートを切っている。

 木曜日の夜にスーパーSSで開幕したラリー・ドイッチュランドは金曜日の朝からモーゼル渓谷のブドウ畑のステージに舞台を移して本格的なスタートを切ることになった。ボスタールゼーのサービスはよく晴れているものの、通り雨の可能性もあると天気予報は伝えており、ドライバーたちはタイヤチョイスに頭を悩ませてサービスを後にすることになった。

 ドライとなったオープニングステージのSS2シュタイン・ウント・ヴァイン(19.44km)でベストタイムを奪ったのはMスポーツ・フォードのセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)だ。彼は前夜のスーパーSSでリードを奪ったタナクを0.8秒ながら上回って、首位に躍り出した。

 タナクはステージでの安定性があまりよくなかったと語ったが、マシンへの信頼が高まるにつれて次第にペースをアップ、SS3ミッテルモーゼル(22.00km)でオジエを5秒も上回るベストタイムでふたたび首位に立つや、SS4ヴァーダーン〜ヴァイスキルヒェン(9.27km)でも3秒もの差をつけるベストタイムを並べ、リードを7.2秒として朝のループを終えている。

「最初のステージではハイスピードの状態ではあまり快適ではなかったし、トリッキーな場所でまだ安定性に不安がある。しかし、ヤリスでのドイツは初めてだから、少しずつ学んでいるし、改善できている」と語るタナクには表情にも余裕がある。

 ラリーカーが走行するたびにコーナーのインカットによって泥が道路にかきだされるため、一番手でコースインしたドライバーがもっとも有利になるはずだが、選手権リーダーのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)は雨の可能性もあったことからソフト2本のスペアを搭載したためペースが上がらない。アンダーステアとオーバーステアが連続する症状に悩まされた彼は、さらにSS3でギヤボックスからのオイルリークが発覚、あわやの危機に見舞われることになったが、ロードセクションでオイルパイプの緩みを締め直して事無きを得ており、朝のループを終えてタナクからは10.9秒遅れ、オジエからも3.7秒遅れとなっている。

 午後のループになってもタナクの勢いは止まらない。SS5シュタイン・ウント・ヴァインは朝のループでただ1ステージのみオジエのベストタイムを許したステージだが、かきだされた泥によって朝よりはるかにダーティになったコンディションにもかかわらず、タナクはオジエに0.3秒差をつけるベストタイムを刻んでみせる。

 タナクはSS6ミッテルモーゼルでもオジエに1.6秒差をつけるベストタイムを並べ、さらにこの日最後のSS7ヴァイスキルヒェンではこの日5連続となるベストタイムを刻んでフィニッシュ、わずか9.27kmのステージだったにもかかわらず、2番手タイムで追いすがったオジエを3.2秒も突き放して、リードを12.3秒に広げている。

「順調だよ。今朝は完璧とは感じなかったが、いまは明らかにマシンがスピードを持っている。自信もでてきたし、かなり楽しんでドライブできている。しかし、セブは簡単な相手ではない」とタナクは語った。

 オジエは選手権を争うヌーヴィルとの差を15.1秒に広げて2位をキープし、さらにフィンランドで歯が立たなかったトヨタのタナクと対等なバトルができていることを喜びつつも、午後のループでは一度もライバルのパッケージを上回る速さを見せられなかったことに失望をみせた。

「ティエリーのタイムを上回ることができたのはよかったが、オットのパッケージと競うことは困難だった。それでも新しいエアロはオーケーだったし、シャシーも非常に良く動いていると思う」

 朝のトラブルのあと念のためにギヤボックスを交換して午後のループに臨んだヌーヴィルは首位争いに迫るべくプッシュすることを誓っていたが、ダスティなステージでのトラクションに苦しんでペースを上げられず、首位のタナクから26.4秒遅れ、オジエからも15.1秒差をつけられてしまった。

 いっぽう、トップ3の後方では激しい4位争いが繰り広げられることになった。朝のループをヌーヴィルから8.8秒遅れの4位で終えたのはトヨタのエサペッカ・ラッピ(トヨタ・ヤリスWRC)。しかし、彼の2.1秒後方にはダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)、0.6秒差でヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)、さらに1.1秒差でエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)が続き、わずか3.8秒差に4人が火花を散らす展開となっている。

 上位勢が走行したあと、後続のマシンはインカットされて汚れたコーナーに苦戦するなかで、エヴァンスがペースをアップ、SS5の4番手タイムで一気に7位から4位へとジャンプアップ。彼の後方からは、デイサービスでフロントデフの交換とセットアップを変更したあとペースを上げてきたラトバラが激しくプッシュするが、1秒差でエヴァンスが4位を死守してこの日を終えている。

 グリップ不足に苦しむソルドは午後になっていっそうペース上げられずに6位にとどまり、4位で午後のループに向かったラッピは泥でよごれたコースにまったく自信をもてずにペースダウン、エヴァンスから5秒遅れの7位でこの日を終えることになった。

 クレイグ・ブリーン(シトロエンC3 WRC)は、SS3ミッテルモーゼルでは上位のマシンがドライの路面で走ったあと、彼の走行のときから降り始めた雨によってタイムを落とし、7位から9位へと順位を落としてしまった。それでもドライビングスタイルの改善を目指しているアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)を抜いて8位につけることになった。

 また、マッズ・オストベルグ(シトロエンC3 WRC)は、フロントバンパーを取り外した際にエアダクトの取り付けにミスがあったことからエンジンマネージメントシステムが吸気温度が高すぎると判断してパワーダウン、彼はただ耐えて走るしかなく11位にポジションを落としている。

 明日の土曜日はバウムホルダー軍事演習場へと戦いの舞台を移す。オープニングSSのアレーナ・パンツァープラッテは現地8時48分(日本時間15時48分)のスタート予定となっている。