WRC2021/05/29

トヨタ、GRヤリスRally1テストカーを初公開

(c)Toyota

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 トヨタGAZOOレーシングWRTは、2022年にむけて開発しているハイブリッドRally1カーを紹介するビデオを初めて公開した。

 トヨタは先週末のラリー・デ・ポルトガルのあとスペインにおいて7月に行われるサファリ・ラリー・ケニアのためのテストを開始しながら、それと併行する形でテストチームをポルトガルに残してビゼウ近郊の丘陵地帯でGRヤリスをベースとしたRally1カーのテストを行ってきた。

 トヨタのRally1テストカーはすでに先月、フィンランドで走行している姿が目撃されていたが、今回、ラリー・デ・ポルトガルのグラベルステージと酷似したコンディションにおいてフルテストを行ったあと、チームはそれらの走行シーンなどをまとめた動画を初公開している。

 トヨタのテクニカルディレクターであるトム・ファウラーは、GRヤリスをベースにした新しいハイブリットRally1カーの今回のテストプログラムについて、次のように述べている。

「チームはフィンランドでテストプログラムを開始し、シェイクダウン走行とシステムチェックを行ってきた。2022年の新しいテクニカルレギュレーションは多くのことが変わってしまい、新しいマシンで最も重要なのはハイブリッド・システムが導入されたことだ」とファウラーは語った。

「このクルマを完成させるために、エンジニア、デザイナーなどの優秀なチームと一緒に仕事ができたことは、本当に嬉しいことだった。今回、このポルトガルのステージで、ヨーロッパのグラベルロードでマシンを走らせた。我々は世界ラリー選手権でWRカーが見せてくれるものを実際にこのマシンで体験しようとしている」

「これから多くのデータを収集し、フィンランドの拠点に戻り、エンジニアとデザイナーがこれらの情報を確認して、次の開発ステップの準備をする。そして、またフィンランドやヨーロッパの他のテストサイトで行うことになる。この開発ステップは、2022年シーズン開幕戦のラリー・モンテカルロに向けてホモロゲーションを申請する年末まで作業を行うつもりだ」

 また、今回公開された動画では、2022年から禁止される電子制御のパドルシフトに代わって、シーケンシャル・シフトを操るハンニネンの様子も映し出されているほか、コックピットを保護する新しいFIAセーフティセルの構造も初めて見ることができる。

 このセーフティセルは、FIAが開発を先導してきたものであり、ロールケージのメインフープがダブル・フープ構造をもっており、来年のレギュレーションのもう一つの重要な要素となっており、ファウラーは安全性の観点からさらに一歩前進したものとなったと語っている。

「FIAはWRCのさらなる安全性を求めて、Rally1カーには安全性についてもさらに一歩前進した新しいシャシーデザインが採用されている。マシンとセーフティシステムのほぼ全体が大きく変わったので、我々は振り出しに戻らなければならなかった。そのためこのプロジェクトはとてもエキサイティングなものとなる」とファウラーは語っている。

 GRヤリスRally1テストカーのボディはラッピングで巧妙にカムフラージュされており、その細部の形状などを認識するのは困難だが、リヤサイドには、リヤに搭載したハイブリッド・システムを冷却するための巨大なインテークを備え、そしてレギュレーションによってディフューザーが姿を消したものの、熱気を排出する開口部をもっているリヤバンパーが新しい特徴として確認できる。

 ハイブリッド・システムの冷却のためのサイドインテークは、Mスポーツやヒュンダイが公開しているRally1テストカーのものよりも明らかに開口部が大きく、リヤのクオーターウインドウまで伸びた形状をもっており、かつてのグループBカーのランチア・デルタS4を彷彿させるデザインとなっている。

 これらはマシンのサイドを流れる空気を捕らえながらも、その反面、リヤのメインウイングの左右に備わった補助的なスロテッドウイングへの空気の流れを阻んでいるようにも見えるが、開発テストの初期段階である現在は、ハイブリッドユニットの性能の評価とともに、それらを最適な温度範囲で作動させるための冷却システムのデザインについても評価している段階と見られている。