WRC2026/01/24

トヨタが1-2-3、ソルベルグが首位をキープ

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 2026年世界ラリー選手権(WRC)開幕戦ラリー・モンテカルロは、予測不可能な難しいコンディションとなった金曜日もオリヴァー・ソルベルグ(トヨタGRヤリスRally1)が圧巻の走りでラリーをリード、2位のエルフィン・エヴァンス(トヨタGRヤリスRally1)に1分8.4秒もの大差をつけている。また、セバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリスRally1)もエヴァンスの6.5秒差にぴたりとつけており、トヨタGAZOOレーシング・ワールドラリーチームが前日に続いて1−2−3態勢を築いている。

 金曜日はドローム県とオート・アルプ県で開催される6SS/128.88kmの一日となる。SS4ラボレル〜ショーヴァック・ロー・モントー(17.95km)、SS5サン・ナゼール・ル・デゼール〜ラ・モット・シャランソン(28.70km)、SS6ラ・バティ・デ・フォン〜アスプレモン(17.79km)の3つのスペシャルステージをギャップのミッドデイサービスを挟んで午後もループ、SS7ラボレル〜ショーヴァック・ロー・モントー、SS8サン・ナゼール・ル・デゼール〜ラ・モット・シャランソン、SS9ラ・バティ・デ・フォン〜アスプレモンを走ってギャップへと戻るラリー最長の一日となる。

 前夜の複雑なコンディションを制して首位に立ったソルベルグは、エヴァンスに44.2秒差、9度のワールドチャンピオンであるオジエに1分08.6秒差を付けて金曜日を迎えることになったが、チームメイトたちのプレッシャーに臆することなく朝から素晴らしいスタートをみせることになった。

 オープニングステージのSS4ラボレル〜ショーヴァック・ロー・モントーはドライとウェットコンディションのなかでスタート、山岳地帯の奥へと道が進むにつれて凍結が始まり、峠の頂上付近では全域にわたって凍結してかなり雪も残る危険なセクションが待ち受け、終盤には無数のアイスパッチやブラック・アイスがある下りを経てフィニッシュを迎える。

 ソルベルグはこのトリッキーなステージでも再び圧巻の走りをみせ、ティエリー・ヌーヴィル(ヒョンデi20 N Rally1)より19.1秒速いステージ勝利を獲得、エヴァンスはこのステージだけでソルベルグより26.5秒遅れ、オジエも32.8秒もタイムを広げられてしまった。これで総合タイムで2位のエヴァンスに対するギャップは1分10.7秒へ、3位のオジエとの差は1分41.4秒へと拡大している。

「慎重にはしているけど、楽しんでいるよ!このラリーはまだ長くて非常にトリッキーなので、安全な場所などない」とソルベルグはステージフィニッシュで語った。「でも、アイスノートのクルーは素晴らしい仕事をしてくれたし、すべてがまさに期待通りで、彼らを100%信頼している。素晴らしい仕事だ」
 
 モンテのトリッキーなコンディションでは経験豊富なアイスノートクルーが重要になる。早朝に走ったアイスノートクルーはドライバーが走る4時間後の路面変化を予測してノートに修正を加えなければならない。2011年にIRCイベントとして開催されたモンテカルロで優勝、2014年モンテでもタイヤギャンブルを成功させて2位でフィニッシュしているブライアン・ブフィエ、そしてモンテに20回以上の出場経験をもつ名コドライバーのドゥニ・ジロウデという強力なメンバーが、ソルベルグのアイスノートクルーを務めている。

 3位につけているオジエは11度目のモンテ勝利を狙ってきたが、木曜日に続いてこの日もフロントランナーとして後方のための路面クリーニングの作業に手こずっており、さらに遅れること覚悟している。「後方からはまだ速いマシンが迫ってくるだろう。路面はこのあと大きく改善されるだろう。マシンを路上に維持するには、本当に大変な努力が必要になるよ」とオジエは語った。

 だが、つづくSS5サン・ナゼール・ル・デゼール〜ラ・モット・シャランソンでソルベルグにトラブルが襲いかかる。いたるところにアイスパッチが待ち受ける峠が連続するこのステージの終盤のダウンヒルで、ソルベルグは左フロントタイヤをパンク、トレッドが完全に剥離した状態でフィニッシュしている。ベストタイムを奪ったエヴァンスはここでソルベルグとの差を27.2秒縮めており、ソルベルグのリードは43.5秒に縮まってしまった。

「空気圧の警告がでたが最初はセンサーの故障かと思った。感触は良く、何もぶつけていないと思ったから、安心していたら、タイヤの空気圧が抜けてしまった。どこでこうなったかは分からない。ステージのコンディションそのものは良かったけどね」とソルベルグは首を横に振る。

 次のステージはこの日の朝、もっとも雪が残るセクションで始まるため、スタッドタイヤを1本失ったことは不利にならないかという質問に対して、彼は自信のコメントを残して走り去っている。「ステージ6は大丈夫だろう。今朝稼いだタイムは全て失ってしまったが、いまは朝と同じ状態に戻ってしまっただけだ」
 
 エヴァンスは好調な走りを維持し、ここでもオジエに4.8秒差をつけるベストタイムをマークした。

「走りとしては十分クリーンで、特に問題はなかった。ただ、タイヤ選択の判断はとても難しく。かなり路面が汚れているセクションもあれば、スリックを使えるような部分もあるからね」

 この日も全ドライバーはスタッド付きスノータイヤを4本チョイス、オプションの2本は選択が分かれ、トヨタ勢がスタッドレス2本、ヒョンデ勢はスーパーソフト2本を選んでいるが、このステージではトヨタ勢のタイヤ選択が正しかったようだ。

 オジエは3.6秒差まで近づいてきたヌーヴィルとの差を28.8秒差へと広げて3位をキープ、トヨタが1-2-3体制を維持している。ステージ途中でヒヤリとする場面に見舞われたヌーヴィルは、少し慎重になり過ぎたようだと振り返った。「ここは本当にコースオフしやすい。とにかく走りをきっちり、きれいにまとめていく必要があったが、少し慎重になり過ぎた」

 朝のループの最後のステージ、SS6ラ・バティ・デ・フォン〜アスプレモンは、序盤の峠からかなり湿った雪が路面を覆うエリアが続くが、やがてシャーベットが消えて路面のラインがだんだん現れたかと思えば、カットによってコーナーはひどく汚れている。 

 しかし、ここでもふたたびソルベルグがベストタイム、前のステージではパンクによって27.2秒失ったが、ここではエヴァンスに20.7秒差をつける素晴らしい走りをみせてリードを1分4.2秒に戻している。

「雪なのにスタッドが3本しかなかったので、クレージーな走りで、リヤタイヤがあちこちに飛んでいく時もあった。でも、明らかに湿った雪は(フロントランナーたちのおかげで)きれいになっていた。その一方で泥があまりに多くて、結局皆同じような状況だったと思う」とソルベルグはご機嫌そうに笑みをみせたあと、自らを戒めるように語った。「でも、まだ先は長いし、今日の午後はさらにひどくなりそうだ。ここでプッシュすると、常にリスクが伴う。少し落ち着こう」
 
 エヴァンスはソルベルグには引き離されたが、朝の3ステージともにオジエより速いタイムを重ね、その差を35.7秒へと広げたことは大きい。「このループ全体としてはまずまず満足しているよ。コンディションは非常に厳しく、判断が非常に難しかったからね。路面は常に変化しているし、今朝はすでにかなりカットがあったので、このあとも決して楽ではないだろう」とエヴァンスは予測した。

 オジエはこの走行ポジションでこれ以上ペースを上げることは困難だったと認めたが、午後なってカットが多くなればさらに大きな課題に直面すると語っている。「このような路面で先頭を走っている時は、本当に何もできない」とオジエは率直に語った。「幸いにも、今日は先頭を走った2台が雪に少しラインを引いてくれたが、それでも路面状況は後方にはかなり有利だからね。午後になっても状況は変わらないかもしれないが、泥は間違いなく多いだろう。午後はターマックというよりグラベルラリーになるだろう」
 
 ヌーヴィルはオープニングステージに続いてここでも2番手タイム、3位のオジエに16.7秒差に迫っている。ヒョンデが昨年秋のターマックラウンドを犠牲にして取り組んできたエボカーの改善はうまくいっていることは明らかで、ヌーヴィルはパフォーマンスへの不満を口にすることはなくなっている。「ここまで来られてよかった。クリーンな走りができた。路面はかなり掃除されてきて、ああいった低速コーナーでは、これからどんどん良くなっていくと思う」

 Mスポーツ・フォードのジョン・アームストロング(フォード・プーマRally1)はRally1デビューにもかかわらず、好調を維持して5位につけていたが、朝のループではアドリアン・フールモー(ヒョンデi20 N Rally1)に抜かれて6位へと後退している。フールモーは優勝を狙いたいとスタート前に語っていたが、前夜の濃霧のステージでゴール目前のコーナーで視界を失って大きくタイムをロス、この日もシャーベット状の路面に苦戦して首位からは2分28秒もの遅れとなっている。

 一方、勝田貴元(トヨタGRヤリスRally1)は路面コンディションの変化に苦しんでおり、前ステージに続いてこのステージでもパンクに見舞われてしまい、7位を維持しているものの、トップからは4分24秒あまりも遅れている。その後方にはリスクのない走りに徹しているヘイデン・パッドン(ヒョンデi20 N Rally1)が16秒差に近づいている。

 ラリー・モンテカルロは、ギャップのミッドデイサービスを挟んで午後のループを迎えたが、ソルベルグの圧倒的な支配は続いている。サン・ナゼール・ル・デゼール〜ラ・モット・シャランソンの2回目の走行となるSS7は、小雨が降っているが、気温も7度と暖かいため雪にはなりそうもない。それでも路面はフルウェットでカットによって泥がコースを汚す難しいコンディションとなっている。ソルベルグは「本当にトリッキーでどこも泥だらけだ」と訴えながらも、オジエに1.9秒差をつけるベストタイム、エヴァンスは2.8秒遅れの3番手タイムで続き、ソルベルグのリードは1分7秒となっている。

「どこもかしこも泥だらけだ。タイヤの状態では簡単ではないが、ベストを尽くしている。非常に慎重に運転しているが、他のドライバーも同様に慎重に運転する必要がある。とにかく自分をコントロールしようとしている」とソルベルグはステージフィニッシュで語った。
 
 オジエもステージエンドで「とにかくトラブルを避けることだけを考えている。何が起きてもおかしくないからね」と語ったが、ここではこの日初めてエヴァンスの
タイムを上回り、その差は34.8秒となっている。

 フールモーはハンドブレーキが効かないため、ヘアピンでは曲がりきれず、リバースで切り返しをしなければならず1分3秒をロス、勝田は追い上げる絶好のチャンスにも見えたが、彼もディッチに右フロントタイヤを落とした際にパワーステアリングを壊してしまい、顔を歪め、叫び声を上げながらステアリングと格闘、1分4秒遅れてフィニッシュ、パッドンに7位を譲ることになってしまった。

 ラ・バティ・デ・フォン〜アスプレモンの2回目の走行となるSS8は夕闇が近づくなかでの走行となった。雨は降り続いており路面はフルウェットでカットによってマディなコーナーが待ち受ける。朝のステージで問題となったアイスパッチは標高の高いところでもなさそうだ。
 
 オジエがこの週末2つ目のベストタイム、エヴァンスが16.2秒遅れの2番手タイムで続いたものの、エヴァンスとオジエの差は18.6秒に縮まってきた。それでもオジエはナイトポッドランプを装着しなかった自らの判断ミスを悔やみ、木陰などでは暗かったと訴えた。
 
 ソルベルグはオジエからは17.6秒も遅れた3番手タイムとなった。ソルベルグのリードは1分5.6秒と大きなマージンを築いたままだが、ステージの暗さと雨に苦しんだ彼はスタート時間の不公平さを訴えた。「ステージ序盤から中盤にかけては、ものすごい雨が降っていた。暗くて夕暮れの薄明かりしかなく、彼(オジエ)の時と比べると何も見えない。本当に不公平だよ」

 4位につけるヌーヴィルはこの日のオープニングステージではオジエに3.6秒差まで迫って、トヨタから表彰台の一角を奪う勢いがあるようにも見えたが、そのあとはじわじわとペースダウン、ウェットとなった午後のループではさらにガタッとタイムを落とし、その差は1分7秒まで広がってしまった。

 強い雨が降っているこの日の最終ステージのラ・バティ・デ・フォン〜アスプレモンは完全に日が沈みナイトステージとなった。序盤の7kmにぬかるんだ雪が残っており、そのほかはフルウェットのコンディションだ。

 首位のソルベルグはこの日の最難関を巧みに切り抜け、トップタイムを奪ったオジエから9.3秒遅れの2番手タイムでフィニッシュ、2位のエヴァンスに対するリードを1分8.4秒として金曜日を終えることになった。
 
 ソルベルグはステージエンドで、これまでロードセクションなどでオジエからアドバイスを受けていたと明かしていたが、今、オジエはプレッシャーを感じているようだ。「セブはあまり僕に話しかけてこないね」とソルベルグは冗談めかして言っている。「とにかく走り切りたかった。色々なことが起こっていたからね。タイヤの選択は良くなかったけど、この日を乗り切り、リードを広げることができて本当に嬉しいよ」

 2連続でベストタイムを出したオジエは、「路面が泥だらけだったので、サバイバルの方が重要だった」と説明したが、いまや2位のエヴァンスとの差はわずか6.5秒にすぎない。

 エヴァンスはシャーベットの轍のなかで勇気が足りなかったと認めたが、「この難しい状況のなかでは全体的にはまずまずの一日だった」ふりかえっている。

 エヴァンスが言うとおり、このステージではさまざまな予期せぬトラブルが起きていた。前夜のナイトステージでクラッシュしたジョシュ・マクアリーン(フォード・プーマRally1)はリスタートに回って堅実なペースを刻んでいたが、1.6km地点で雪に乗ってスライド、ディッチに落ちてしまい、またも暗闇のなかでリタイアとなってしまった。

 さらに4位につけていたヌーヴィルもシャーベットが残る2km地点でコースオフ、ファンに助けだされてどうにかコースに戻ったが、3分30秒あまりをロスしてしまい、フールモーにポジションを明け渡して、1分差の5位と後退してしまった。

 フールモーは4位とはいえポディウムポジションまでは3分50秒もの大差をつけられている。SS7でのハンドブレーキの不具合、さらに燃料ポンプの問題からSS8のスタートに3分遅れてチェックイン、30秒のタイムペナルティを受けるなど、技術的な問題に彼は翻弄されることになった。「サービスを出てから、技術的なトラブルが立て続けに起きたんだ。僕たちにとってはトリッキーで、かなり厳しいループだった」
 
 アームストロングはトラブルを抱えたフールモーを抜くチャンスもあるかに見えたが、SS8で右フロントタイヤをパンク、3分あまりも失いながらも、どうにか6位をキープしている。7位にはトリッキーなステージを走りきることに専念しているパッドンが続いている。

 勝田は合計60km近くもパワステを失ったまま走り続けることになり12位へと後退してしまった。「なんとかフィニッシュできたが、手がかなり痛い。でも大丈夫だ。仕方ない。まだ2日残っている」

 前の日のナイトステージで凍結した橋にクラッシュしたサミ・パヤリ(トヨタGRヤリスRally1)はステージに復帰したものの、難しいコンディションのなかでトップのペースに全く追いつくことができず、彼にとってモンテカルロは経験を積むための試練となっている。「明日は自分たちの問題を改善していきたい。明日は新しい一日で、明日は新しいことを試みたい」

 明日の土曜日は、4SS/78.22kmという短いルートを走ったあとモナコへと帰還する1日となる。今夜から明日にかけて雨が降ると天気予報は伝えており、山岳エリアでは雪が降る可能性もありそうだ。オープニングステージのラ・ブレオール〜ベラフェールは現地時間の8時31分、日本時間の16時31分のスタートが予定されている。