WRC2015/02/18

トヨタ・ヤリスWRC、モンテカルロでテスト

(c)TMG

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 ラリー・スウェーデンが行われた先週、トヨタ・モータースポーツGmbH(TMG)はまるで世界の目から逃れるようにラリー・モンテカルロのステージにひっそりとテストチームを送り、ヤリスWRCのテストを行った。

 2017年から世界ラリー選手権へ復帰することを発表したトヨタは、2年後に迫っている参戦にむけてあまり時間が残されてないことをはっきりと認識しているようだ。トヨタ・チームは、ライバルとの距離を完全に縮めて復帰戦を迎えるつもりなのだろうか、新制トヨタ・チームは、4日間にわたり、早くも全開モードでむけて始動した。

 ラリー・スウェーデンのレッキが始まった先週火曜日、トヨタ・チームは純白のヤリスWRCテストカーを南フランスにもちこんで、ステファン・サラザンのドライブによってテストを開始した。このマシンがこれまでのテストカーとまったく異なっているのは明確だ。このマシンがトヨタの公式なラリーカーであることを証明するかのように、そのノーズには初めて「トヨタマーク」のエンブレムが付けられているからだ!

 火曜日のテストステージはわずか数週間前に2015年の開幕戦ラリー・モンテカルロが行われたコースのほど近くに位置する、かつてこの伝統の一戦のステージにも組み込まれたことがあるクラシカルなステージを舞台だという。

 トヨタ・チームが今回のテストのベースをモナコの裏山、アルプマリティムにおいた意図は鮮明だ。同じキャラクターのステージで同じ路面コンディションにおいて実戦にも匹敵する過酷なテストを行うことには大きな意味がある。あれほどのさまざまなドラマが生まれたトリッキーなステージを経験して、その走りを検証するには、まさに今のシーズンしかないからだ。

 ウェットコンディションとなった火曜日、サラザンは狭く、ツイスティで、そしてコーナーには土と泥がかきだされて汚れているステージで新しいヤリスWRCテストカーをまるでこれがシェイクダウンであるかのようにゆっくりと感触を確かめるようにドライブした。

 水曜日、トヨタ・チームはモンテカルロに出場したクルーたちがホストタウンのギャップを目指すときと同じルートをたどって北上、今年まさしくナイトステージとして行われたSS1で使用されたアントルヴォーのステージの最初の3kmをつかってテストを行った。今年のモンテカルロでは積雪のあったステージは、朝はややウェットだったものの、日中はドライコンディションとなったため直接の比較は困難となったが、それでもサラザンは初日よりもペースを上げてヤリスWRCを走らせている。

 チームは木曜日にさらに北上、雪とアイスのコンディションでテストを行った。スタッド付きのスノータイヤを初めて装着したヤリスWRCをサラザンはドライブ、サスペンションやブレーキのチェックを行いながらステージを繰りかえし走行を行い、午後になって、ラリー・スウェーデンのレッキに参加したエリック・カミリーがチームに合流してきた。

 カミリーはこの日はサラザンの横でコクピットドリルを受けたあと、コドライバーシートでヤリスWRCの走りを経験するだけにとどまったが、チームは翌日、さらに深く雪が積もったステージへと移動し、この日はカミリーを中心としたテストプログラムになったという。

 カミリーは今年のモンテカルロにフォード・フィエスタR5で出場しており、その記憶が鮮明なうちに同じようなステージを走ったことはチームにとっても貴重な情報となったはずだ。彼はトヨタのWRC復帰発表後、このときのモンテカルロの参戦がTMGによる支援によるプログラムだったことを明かし、世界を仰天させているが、チームは今年、同じようにカミリーに実戦とテストを同じ舞台で走らせて、より濃密なテストデータを得ようとしているのかもしれない。

 ヤリスWRCテストカーはダンパーの制御に課題があるかのようにギャップでナーバスな動きを示し、そしてコーナー出口でトラクションをかけたときのキックもライバルたちに比べれば劣っているように見える。しかし、トヨタ・チームは2年間にわたるテストのまだほんのゼロ地点に立ったにしかすぎない。

 新しい車両規定の発表もまだこれからとなり、このヤリスWRCで2017年から正式には参戦できるがどうかは定まったわけでない。それでもトヨタ・チームはまるで止まっていた時間を取りもどすかのように、いま本気でここに始動したのだ。