世界ラリー選手権のドライバーたちは、暴言に対する罰則が容認できないほど過剰になっているとして、世界ラリードライバー協会(WoRDA)はFIAに抗議文を送るとともにFIA会長のモハメド・ベン・スライエムとの緊急協議を求めている。
ヒョンデのアドリアン・フールモーは、FIAの2025年国際スポーツ規定の付則12.2.1のガイドラインに基づき罰金を科された最初のドライバーとなった。彼はラリー・スウェーデンの最終ステージ後のテレビインタビューで不適切発言をしたとして3万ユーロの罰金が科せられ、そのうち2万ユーロは12カ月の執行猶予付きとなった。
ドライバーの発言への罰則をめぐっては、昨年のラリー・チリでも、セバスチャン・オジエと2019年の世界王者であるオイット・タナクが抗議行動を起こしている。昨年のアクロポリス・ラリー・ギリシャのオープニングステージのステージエンドで、オジエがオフィシャルに向けて発したコメントに対し、FIAが執行猶予付きの3万ユーロの罰金を科したことを受け、2人はメディアのインタビューでのコメントを拒否、沈黙を守っていたことがあった。
WoRDAは月曜日に声明を発表し、協議によって互いに納得できる解決策を模索することを求めた。
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WoRDAの声明全文
WoRDAに所属するラリードライバーおよびコドライバーは、GPDAの仲間たちに触発され、共に意見を表明し、明確さを求め、明るい未来に向けて協力するために集まった。
まず初めに、私たちは、あらゆるスポーツ同様、競技者は審判の決定に従わなければならないことを述べておきたい。この原則を尊重することに疑問の余地はない。
私たちは全員がフルタイムのプロフェッショナルではないが、同じ極限状態の中で同じ飽くなき情熱をもって戦っている。鬱蒼とした森を抜けるときも、真夜中の凍結した道路を横切るときも、危険なグラベル路のダストの中を進むときも、私たちは厳しい環境や時間と戦い、そして自分自身の限界に挑んでいる。
レースの枠を超えて、私たちの役割は広がっている。今日、ラリードライバーとコドライバーはアスリートであるだけでなく、エンターテイナーであり、コンテンツ・クリエイターであり、常にメディアに登場する存在でもある。観客のスマートフォンからWRCの公式カメラまで、競技前、競技中、競技後、夜明けから晩まで、私たちはいつでも対応を求められている。
WoRDAはこれまで、FIA会長を含むすべてのステークホルダーと建設的に協力し、この優れたスポーツを普及・発展させ、すべての人々の利益につなげるという責任とコミットメントを常に認識してきた。
しかし、ここ数ヶ月間、些細な、単発的な、意図的でない言葉の過ちに対して課される制裁の厳しさが、憂慮すべきほど高まっている。これはもはや受け入れがたいレベルに達している。
私たちは、次の点を強く主張する。
・ 一般的な口語表現は、真の侮辱や攻撃行為と同等とみなしたり、扱われるべきではない。
・その言語を母国語としない人は、その意味や含意を十分に理解せずに用語を使用したり、繰り返したりすることがある。
・ アドレナリンが極度に分泌された数秒後に感情を完璧かつ体系的にコントロールすることを期待することは非現実的である。
ドライバーたちはインタビューでの発言について、かつてないほど厳しい監視下に置かれている。
ラリーは極限状態だ。選手が負うリスク、必要とされる集中の強度、競技時間の長さなど・・・すべてが限界に達している。
こうした状況下で、発言に対して何らかのペナルティを科すことの妥当性や有効性には疑問が残る。さらに、過度な罰金は、ラリーにおける平均的な収入や 予算とはまったく釣り合っていない。
私たちはまた、このような法外な金額がファンに対し、この業界では巨額の金銭が造作なく動いているかのような印象を与えることも懸念している。
また、これらの罰金で得たお金はどこに行くのかという根本的な疑問も生じてくる。透明性の欠如は懸念を増幅させ、制度への信頼を損なう要因となっている。
こうした罰金による否定的な印象は、言葉の誤りによる影響をはるかに上回るものであることは間違いない。
私たちは、FIA会長とWoRDAメンバーが直接話し合い、互いに合意できる解決策を早急に見つけることを強く求める。
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この声明文には、セバスチャン・オジエ、カッレ・ロヴァンペラ、オイット・タナク、ティエリー・ヌーヴィル、マルティン・ウィデーゲ、ヨンネ・ハルトゥネン、マルティン・ヤルヴェオヤ、ヴァンサン・ランデ、アドリアン・フールモー、アレクサンドル・コリア、エルフィン・エヴァンス、スコット・マーティン、グレゴワール・ミュンスター、ルイ・ルーカ、勝田貴元、アーロン・ジョンストン、マルティン・セスクス、フランシス・レナーズ、サミ・パヤリ、マルコ・サルミネン、ジョシュ・マクアリーン、エオイン・トレイシー、ダニエル・ソルド、カンディド・カレーラ、ガス・グリーンスミス、ヨナス・アンダーソン、ヨハン・ロッセル、アルノー・デュナン、オリヴァー・ソルベルグ、エリオット・エドモンソン、ジュリアン・イングラシアらが署名した。