WRC2017/11/18

ヌーヴィル、20秒をリードして最終日へ

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 世界ラリー選手権最終戦ラリー・オーストラリアの二日目はラリーリーダーのアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)がリタイアするという波乱が発生するなか、ティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)が首位に立っており、2位のヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)に20.1秒差をつけて明日の最終日を迎えることになった。

 48.89kmというこのラリー最長となるSS9ナンバッカ・ステージは、高速で流れるような連続した高速コーナーやクレストを含んでおり、多くのドライバーが世界でもっともドライブが楽しいステージの一つとして挙げるほどだ。だが、ステージは早朝の激しい雨によって最初の10kmは完全でウェットでマディなコンディションだが、終盤の15kmはドライコンディションという難しいステージとなった。

 ほとんどのドライバーがソフトコンパウンドを中心としたタイヤを選択したが、ミケルセンがハードとソフトのミックスだったのに対して、ヌーヴィルは4本ともソフトを装着、その差が二人のタイム差となって表れた。

 20.6秒をリードして二日目を迎えたミケルセンは、ベストタイムを奪ったヌーヴィルから4.5秒遅れの3番手タイムにとどまり、リードは15.6秒差に縮まることになった。「僕は全開だったけど、僕たちは異なるタイヤ戦略なので、このあとどうなるのか見極めていくことになる。ここでは最適ではなかったみたいだが、ソフトタイヤをこの後のためにセーブしなければならなかった」

 だが、ミケルセンはそのタイヤ戦略を次のステージで後悔することになる。SS10ニューリー(20.87km)のステージで、ミケルセンはスタート直後の2km地点でワイドになってバンクにヒット、左側のフロントとリヤタイヤの2本をバースト、リヤフェンダーは吹き飛んだ状態でフィニッシュすることになった。彼はスペアタイヤを1本しか持っていないためステージをゴール後にリタイアとなった。

 ミケルセンのリタイアによって首位にはヌーヴィルが浮上したものの、彼もこのステージではあわやの瞬間を経験したほか、1速ギヤに入らないトラブルに見舞われることになる。「いい戦いをしていただけに、アンドレアスは本当に残念だね。彼がパンクしたのは、トリッキーな場所でそこでは僕もオフしたよ。僕らも少し問題を抱えている。1速ギヤがはいらなくなり、ヘアピンで注意して走らなければならなかった。どうにか走りきったが、サービスで新しいギヤボックスに交換しなければならない」

 彼の後方にはSS9で2番手タイムを刻んでクリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)を抜いて3位へと浮上したヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)が激しく追い上げている。ラトバラはSS10でベストタイムを叩きだし、とうとうヌーヴィルの6.3秒差に迫って朝のループを終えることになった。
 
 大接戦となったトップ争いだが、サービスで新しいギヤボックスに交換したヌーヴィルが午後のループでは速さを取り戻す。スタートして7kmがウェット、そのあとドライが続き、最後の3kmあまりがウェットでマディという難しいコンディションとなったSS12ウェルシュズ・クリーク(33.49km)で、彼はラトバラとの差を9.9秒も広げるベストタイムを叩き出した。さらにヌーヴィルはSS13アージェンツ・ヒル(12.24km)で2.8秒の差をつける2連続ベストタイムを奪い、リードを19秒へと拡大することになった。

「走りだしたらタイヤはいいフィーリングだったので、攻めることを決めた。その走りを続けてドライなセクションになったら本気で攻めたよ」とヌーヴィルは語っている。

 ラトバラは誰もが慎重にならざるをえなかったトリッキーなステージで決死の覚悟でヌーヴィルとの差を縮めようとしたが、SS13では3番手タイム、SS14では2番手タイムに終わり、差は縮まるどころか、反対に大きく広がることになった。「ティエリーとの戦いは厳しくなった。彼は非常に強い。僕は努力しているが、彼はどうやってか、それ以上のことを達成してくる。勝てるか分からないが、まだステージは残っているので、最後のステージの最後の瞬間まで諦めないつもりだ」

 だが、この日残された最後のロングステージであるSS15のニューリー(20.87km)は橋が壊れてしまったためにキャンセルとなり、前夜と同様にコフスハーバーのウォーターフロントで行われる1.27kmのショートステージの2回の走行が行われるだけとなった。

 ラトバラとしては少しでも差を縮めたいと考えていたようだが、そのチャンスは失われだけでなく、ヌーヴィルは2回のシートステージでともにラトバラを上回り、20.1秒をリードして土曜日のゴールを迎えることになった。「いいリードを築いたが、注意する必要がある。明日に雨が降ったら、ステージは非常に難しくなるだろうからね」

 2位のラトバラもまだけっして諦めたわけではない。今夜からコフスハーバーは雨になると天気予報は伝えており、彼は「雨なら明日は難しくなるので集中しなければならない。まだすべては可能だよ」と語っている。

 3位につけていたミークは、午後のループの最初のステージとなるウェルシュズ・クリークで橋に右リヤをヒット、タイヤが曲がった状態でステージをゴールしたもののサスペンションが修理不能な状態であることを悟り、表彰台を諦めてリタイアを決意することになった。

 これでオット・タナク(フォード・フィエスタWRC)が3位へと浮上することになった。彼はこのステージで2番手タイムを刻んだものの、タイヤを1本パンクしていたことが発覚、スーパーSSのためのスペアとして残していた新しいソフトタイヤ1本をSS14で使わざるをえなかったが、幸いなことにSS15がキャンセルとなったため、大きくタイヤを摩耗させることなくこの日を走りきり、4位のクレイグ・ブリーン(シトロエンC3 WRC)に対して24.6秒をつけている。

 ニュージーランド出身のヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20クーペWRC)にとってはほぼホームイベントといってもいいが、彼にとっても今年のオーストラリアはリラックスできないイベントになっている。タイヤチョイスもうまくいかず、ブリーンから15.9秒遅れの5位となっている。

 ワールドチャンピオンのセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)は朝のループではジャンクションでミス、追い上げるはずだった午後のループでもSS13でスピンしてバンクにヒット、フロントのバンパーとスプリッターを失ったことでパッドンとブリーンを捕らえる計画は大きく狂うことになった。彼はここで26秒を失い、さらに続くSS14でも12秒をロス、パッドンから27.1秒遅れの6位で二日目を終えている。

 明日の最終日は64.64km/5SSと短い一日となるが、雨によってトリッキーなコンディションになることも予想されている。ヌーヴィルが逃げ切るのか、それともラトバラが追いつくのか、オープニングSSのピルバラ・リバースは現地時間7時38分(日本時間5時38分)のスタートが予定されている。