WRC2021/10/31

ヌーヴィル、Rally1カーへの懸念はすでに解消

(c)Hyundai

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 ヒュンダイ・モータースポーツのティエリー・ヌーヴィルは、新しいハイブリッドRally1カーへのテクニカルレギュレーション導入にもっとも反対意見を表明してきた一人だが、ヒュンダイi20 N Rally1のテストを通じてこれらへの懸念は払拭され、2022年以降のシーズンがエキサイティングになると確信している。

 ヌーヴィルは、先月のアクロポリス・ラリーでも、吟味しないままで導入が決まったRally1カーは絶対に間違っていると酷評し、誰もがFIAの決定のプロセスに逆らう勇気を持っていなかったことに苛立っていると語っていた。

 Rally1についてはハイブリッド・システムによるパワーがプラスされたにもかかわらず、その重量がハンデとなり、さらにコストの問題でエアロやセンターデフ、あるいはサスペンションといったものが犠牲となっていることから、素晴らしい速さをもっていたWRカーよりもエキサイティングではなくなることを多くのドライバーたちが惜しんできた。

 ヌーヴィルはこのRally1はコストダウンを謳いながらも実際には価格も高くなる可能性があり、運転するには危険なマシンだと指摘してきたが、今回、ヒュンダイが行ったi20 N Rally1のラリー・シミュレーション・テストではこれまでの懸念の多くが解消され、このマシンでの新しいチャレンジに熱心に立ち向かっていると語った。

「もちろんRally1カーには懸念があった。しかし、そのいくつかは解消された」とヌーヴィルは語った。

「もちろん、いまのWRカーに比べて技術的な面で多くのダウングレードがあるので、その面では少し失望している。現在のWRカーはすでに非常に速く、新しいRally1もさらにパワーが向上しているので速く、実際にマシンに座っていると、非常に印象的な感じる。しかし、その一方で、基本的な走行性能を失っている。エアロダイナミクス、センターデフ、パドルシフト(ギアボックス)など、ドライバーがクルマをコントロールしやすくするための多くの機能が失われている」

「たとえば、新しいマシンでは、ディファレンシャルの選択肢がないので、3人のドライバーのために、シーズンを通して、すべての路面で、フロントとリヤのディファレンシャルにそれぞれ1種類ずつのランプ角を使用することになる。つまり、今までのマシンにはなかった妥協が必要になる。それがちょっとした違いだね」

 ヌーヴィルは、これまでのWRカーが高いレベルで洗練されたにもかかわらず、そのレベルがワンランク下がったことへの失望感を認めながらも、Rally1への新しいチャレンジに一生懸命になっていると認め、ハイブリッドマシンの未来に反対しているわけではないと語った。

「現在のWRカーは、ステージ上をとても速く走り、とても印象的だったが、マシンがとても安定していたため、アクシデントはあまりなかった。マシンが困難な状況に陥っても、ほとんどの場合、リカバーすることができた。それは、どのようなイベントでも、自分のドライビングスタイルに合わせてマシンをセットアップするのがずっと簡単だったからだ」

「しかし、僕は新しいチャレンジが好きだし、今回のハイブリッドe-キットを組み込んだマシンにも全く反対というわけではない。来シーズンは間違いなくチャレンジングなものになるだろうし、それを追うのも面白いだろう。マシンのパフォーマンスを少しずつ改善していくことで、再び現行マシンと同じような感覚を得られると確信しているよ」