WRC2018/02/19

ヌーヴィルがスウェーデン初優勝、選手権首位に

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 2018年世界ラリー選手権第2戦スウェーデンは、ヒュンダイ・モータースポーツのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)がリードを守り抜いて、優勝を飾った。スカンジナビア人以外で同ラリーを制したのは、セバスチャン・ローブ、セバスチャン・オジエに続いて3人目となる。昨年、ヌーヴィルは勝利をほぼ手中に収めながらも、土曜日夜のスーパーSSでクラッシュして勝利を逃したが、その雪辱を今回、見事に果たした。

 最終日は、わずか3SS/53.36kmという非常に短い1日だ。SS17、SS18が21.19kmのリケナス・ステージを2回走行。そしてパワーステージとなるSS19は、トースビーのサービスパーク近くに置かれた9.56kmのショートステージ。このステージは金曜にも使用されており、この日が2回目の走行となる。

 2日目を終えた時点での順位は、首位ヌーヴィル、22.7秒遅れの2番手にシトロエン・レーシングのクレイグ・ブリーン、そこから9.3秒後方にヌーヴィルのチームメイト、アンドレアス・ミケルセンと、ヒュンダイ勢がポディウム圏内に2台、さらに4番手には同じくヒュンダイのヘイデン・パッドンがつけており、ヒュンダイ勢がめざましい活躍を見せている。

 最終日のオープニングステージとなったリケナスは、1970年代から使われているラリー・スウェーデンの伝統的なステージ。このステージでは、トヨタGAZOOレーシング WRTのオット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)がトップタイムを刻む。続いてエサペッカ・ラッピ、ヤリ-マティ・ラトバラと、2日目まで出走順が早めでなかなか本来のパフォーマンスを発揮できないでいたトヨタ勢がステージのトップ3を奪う。これにより、ラッピは6位から5位にポジションアップし、さらに前方にいるパッドンまで7.4秒差と詰め寄る。

 ヌーヴィルはこのステージで11番手タイムでブリーンに対するリードが14.8秒差に縮まったものの、「今回はかなり慎重にいった。2回目の走行に備えてペースノートの確認作業をした」と、コントロールの範囲であると述べた。

 SS18となるリケナス2回目の走行では、ラッピが「(1回目よりも)もっとコンディションがトリッキーになった。とにかくクリーンに走ることを心がけた。もしかして慎重すぎた?」とやや納得のいかない走りであったようだが、ステージ1番時計を刻み、総合4番手のパッドンまで2.9秒とギャップを縮めてきた。

 総合2番手のブリーンは、「本当に楽しくて仕方ない、ただただ最高の気分だ」と、自らも満足する走りをしたが、ヌーヴィルがそれをわずかに上回り、ヌーヴィルはブリーンに対するリードを16.2秒に増やしてパワーステージへ臨むことになった。

 そして、迎えたパワーステージでは、「ボーナスポイント獲得のためにプッシュするのか」と聞かれて「もちろんそれはない。ない、ない、ない」と安全に走ることを強調していたヌーヴィルが、予定通りの安定した走行でステージ4番手タイムでフィニッシュ。見事に優勝を飾った。

 ヌーヴィルは、「信じられないほどの週末だった。僕たちはここ1年でこれほどまでに速くなるとは思っていなかったが、チームとマシンが僕たちに勝利のために戦うチャンスを与えてくれた。僕たちは昨年勝利に相応しかったが、今年はさらに相応しかった。チームには200人以上の人が働いていて、彼らは皆、一生懸命に僕たちに全力を注いでくれた。僕はこの週末に本当に満足しているし、今後のイベントも非常に楽しみだ」と、チームへの感謝を述べた。

 総合2位にはブリーンが入った。この1年、なかなか納得のいくドライビングができず、よい結果を出せていなかったものの、スウェーデンで自己最高となる順位を獲得し、低調気味のシトロエンに復活の兆しをもたらした。アンドレアス・ミケルセンは、最終日も終始あぶなげない走りを披露し、ヒュンダイに加入して以来初めての3位表彰台を獲得した。

 トップ3が想定通りのオーダーであったのに対して、総合4位の座をめぐっては、パッドンとラッピが激しいバトルを繰り広げていた。最終ステージを走り終えたラッピは、「一つのミスを除いては本当に良い走りができた」と渾身のドライビングでステージ最速タイムを刻んだ。対して、パッドンはクレストで一時ストールして11.5秒を失う。結果、ラッピがトヨタ勢としては最上位となる総合4位に浮上し、パッドンは5位と順位を落としてのフィニッシュとなった。

 今回、シトロエン・レーシングから出場したマッズ・オストベルグは、一時、パッドン、ラッピと三つ巴で4番手争いをしていたものの、2人のバトルに着いていくことはできず総合6位でゴール。それでも、「素晴らしい週末だった。シトロエンに戻れてとてもよかった。本当に楽しんだが、このマシンでの経験は不足していると感じた。今後のことが上手くいくよう願っている。僕はこのマシンでもっと多くのラリーを走りたい」と、シトロエンからのさらなる出走を願う。

 7位でフィニッシュしたのはラトバラ。昨年のように優勝とはいかなかったものの、「厳しいラリーだったが、僕たちはフィニッシュし、ポイントを得た。そのことが最も重要だ」と、彼は選手権全体を考えていることを強調したが、今回の結果には納得していないことをこわばった表情が物語っていた。

 8位には、今回がWRカーで3度目の出場となるテーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)、9位はトヨタのオット・タナクが入賞している。タナクは、初日に2番手出走でステージコンディションの影響を受け、2日目はトラブルが発生したクリス・ミークをコース上で抜こうとしてコースオフし、順位を落としていた。総合10位には、Mスポーツ・フォードWRTのエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタ WRC)が入り、ここまでがポイント圏内となる。

 また、最終ステージを前に総合10位に付けていたセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタ WRC)は、パワーステージで4番手の出走が予定されていたものの、出走の時間になってもステージに現れず、遅着してWRC2ドライバーの後にスタートすることになった。遅着により4分10秒ものペナルティを受け、オジエは総合11位に後退したが、パワーステージで2番手タイムをもぎ取り、4ポイントを選手権に計上。失った1ポイント(総合10位)の代わりに得たパワーステージでの4ポイントで、計算上は3ポイント多く稼げたことになる。

 オジエは、「これはチームの戦略だった。僕たちの出走順ではチャンスが無かった。僕たちは作戦を練って、好ましい出走順を得ることにした。パワーステージではグリップが多いことに慣れておらず、いくつかミスしたが、最終的に目的を果たし、ポイントを獲得することができた」と、スタート順を遅らせることがチームとしての戦略であったことを説明している。

 次戦は、3月8〜11日に開催されるラリー・メキシコ。ステージが2000メートル以上の高地にあるため、エンジンパワーが20%も失われる。今回の優勝により選手権リーダーとなったヌーヴィルが、先頭出走を務める。