WRC2017/07/02

ヌーヴィルが今季3勝目、タナク無念クラッシュ

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 FIA世界ラリー選手権(WRC)第8戦ラリー・ポーランドは、ティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)とオット・タナク(フォード・フィエスタWRC)が3日間に渡って抜きつ抜かれつの激しい攻防を繰り広げたが、タナクが最終日2番目のSSでクラッシュにより無念のリタイア。その結果、ヌーヴィルが第4戦コルシカ、第5戦アルゼンチンに続いて、今季3度目の優勝を飾った。2位にはチームメイトのヘイデン・パッドン、3位にはMスポーツのセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)が続いた。

 ヌーヴィルはポーランドの二日目を首位で終えたものの、2番手タナクとの差はわずか3.1秒にすぎない。最終日は、11.15kmのオージェシュと18.68kmのパプロツキを2回ループするわずか4SS/59.66kmの一日だが、優勝を争う2人が僅差であることから、逆転も十分可能。この日も雨が降ったり止んだりで、ウェットでトリッキーなコンディションがクルーたちを待ち受けていた。

 この日の最初のステージは、全体を通して非常に高速セクションが多いSS20。ステージを走り終えたドライバーたちが「恐ろしい。本当に滑りやすい」「あまりに滑る」と口々に叫ぶなか、タナクが気迫の走りで驚異的なタイムを叩き出す。このステージでタナクはヌーヴィルを4.9秒上回り、総合でヌーヴィルを抜いて首位に立つ。しかし、差はわずかに1.8秒でしかない。

 一方のヌーヴィルは「このコンディションだから、無理してコースアウトしたくなかった。自分のリズムを保ち続けて走って、それで何がもたらされるのか期待しよう」と、危険な路面状況で無理をせず、堅実な走りに徹したことを明かした。

 波乱は、続くSS21で起きた。優勝のために激しくプッシュを続けたタナクはコースオフ、フロントフェンダーなどにダメージを負って1分あまりをロスした。タナクはどうにかステージを走り終えたものの、この日は日中のサービスを挟まないため、残る2ステージを走ることは不可能。無念のリタイアとなった。

 タナクは「森の中の唯一マッディなところで起こったんだ。リヤでバンクにヒットしてフロントが木に向かって引っぱりだされてしまった。勝利したいと思ったら、プッシュする必要があるんだ」と、リスクを負ってプッシュした結果のクラッシュだったことを説明した。

 タナクのリタイアを受けて、後続に対して十分なギャップを築いていたヌーヴィルは、以降のステージを危なげなく走り切って、表彰台の頂点に立った。

 「最近の5つのイベントでは、最後のステージまで接戦が続いた。それは本当にタフだ。ここではギャップが少し大きかったので、少しリラックスして最後のステージを終えることができて良かった」と、ヌーヴィルは喜びの言葉を述べた。

 2位には、週末を通して安定したドライビングを続けたヘイデン・パッドンが入り、一年ぶりの表彰台を達成、ヒュンダイ・モータースポーツの1-2フィニッシュに貢献した。

 たびたびトラブルに見舞われるなど苦しい週末となったオジエは、ラトバラやタナクの脱落で総合3位に入ったものの、1度もステージのトップタイムを刻むことがなく、見せ場がなかった。「僕たちは表彰台に相応しくはないが、こういうことは時にあるし、受け入れなくてはならない」と、オジエは述べた。

 選手権のリーダーはオジエだが、前戦サルディニアの終了時で18ポイントあったリードは、ヌーヴィルが優勝したことで一気に11ポイントに縮まっている。

 ヌーヴィルは「僕たちの主な目標はオジエに対してポイントを稼ぐことだったが、2戦続けてその目標を達成できた。チャンピオンシップのギャップが縮められたことは素晴らしい成果だ。選手権の最後がどうなっているか、非常に楽しみだよ」と、オジエを猛追する様子を隠さない。

 土曜日にテクニカルトラブルによってデイ・リタイアとなったヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)は、最終日にラリー2で再出走。最終ステージで最速タイムを刻み、5ポイントを獲得した。選手権では3位につけているものの、オジエとは48ポイント差、2位ヌーヴィルとの差は37ポイントもあるためトヨタ初年度でのタイトル獲得は厳しくなってきたが、次戦母国ラウンドでの巻き返しが期待されるところだ。

 新しいリヤデフのホモロゲーションを取得するなど必死の巻き返しを図ったシトロエンだが、今回も運に恵まれなかった。不振が続くクリス・ミークに変わって本戦に出場したアンドレアス・ミケルセン(シトロエンC3 WRC)は9位、チームメイトのクレイグ・ブリーンは11位に沈んでいる。その中で、シトロエン勢の中ではたびたび最速タイムを刻むなど、成長の様子を見せたステファン・ルフェーブルがトラブルなく完走して5位に食い込んだ。

 また、初めてWRカーで参戦したMスポーツのテーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)は、ステージを1つ残して総合5位につけていたが、最終ステージでのミスにより総合6位となった。

 WRC次戦は7月27〜30日に行われるラリー・フィンランドとなる。