WRC2017/02/12

ヌーヴィル悪夢、ラトバラが首位で最終日へ

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 2017年世界ラリー選手権(WRC)第2戦のラリー・スウェーデンのDAY2は、それまでの高速ステージで安定した速さをみせて首位をキープしてきたヒュンダイ・モータースポーツのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)がこの日最後のカールスタッド・スーパーSSでクラッシュ、TOYOTA GAZOO Racing WRTのヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)が首位で最終日を迎える波乱の展開となった。

 11日土曜日は、14年ぶりに復活した30.70kmのクノンのステージからスタート、15.87kmのハグフォース、コリンズクレスト・ジャンプで有名な18.60kmのヴァルゴーセンの3ステージをトースビーのサービスを挟んで2回ループしたあと、初日と同じカールスタッド・スーパーSSで締めくくる一日となる。

 そのオープニングSSではMスポーツのオット・タナク(フォード・フィエスタWRC)が素晴らしい速さをみせてベストタイムで発進することになった。タナクは金曜日、ギヤシフトの問題からデイサービスでトランスミッションの交換を強いられており、首位から49.7秒差の3位で土曜日をスタートすることになった。しかし、彼はこのクノンのステージに続いて、続くSS10ハグフォース、SS11ヴァルゴーセンのステージと3連続でベストタイムを刻み、朝のループを終えて首位のヌーヴィルに42秒差、ラトバラまでわずか9.2秒差まで迫ることになった。

 いっぽう、首位のヌーヴィルはこの日の朝、高速ステージのSS9を走り終えたあと、やや慎重に行きすぎたかもしれないと語ったが、スペアタイヤを2本搭載してペースの上がらないラトバラをじわじわと引き離し、スタートの時点で28.1秒だったその差を32.8秒へと広げて朝のループを終えることになった。

 しかし、この朝、タナクによって平均速度137.8km/hのハイスピードが記録されたクノン・ステージの2回目の走行となるSS12が安全性に問題があるとしてキャンセルされ、午後のループの最初のステージとなったSS13ハグフォースでラトバラが逆襲を開始する。

 ヌーヴィルに引き離されたばかりか、3位のタナクにも猛追されたラトバラは、安全策を止めて午後のループはスペア1本でスタート、さっそくこのSS13でベストタイムを奪取、タナクとの差を10.3秒へと広げて逃げ切ることへの強い意志をみせた。

 だが、ラトバラはこのステージで予想以上にスタッドタイヤにダメージを負っており、SS14ヴァルゴーセンではペースダウンを余儀なくされてしまう。このステージを終えて、彼はヌーヴィルに43.3秒差をつけられるとともの、タナクには4.3秒差まで迫られてしまった。

 土曜日に残されたのは、1.9kmのカールスタッドのスーパーSSのみ。ここまでクリーンな走りで首位を堅持してきたヌーヴィルがこのまま首位をキープして一日を終えるかに見えたが、まさかの事態が発生する。なんとヌーヴィルはマシンをスライドさせてしまいコンクリート壁に激突、ステアリングを壊したために走行を断念、ここでリタイアすることになってしまう。

 ヌーヴィルは前戦ラリー・モンテカルロでも51秒差をつけてリードしていながら土曜日の最終ステージでクラッシュ、優勝を棒に振っており、まさかの2戦連続の悪夢となってしまった。

 これで首位争いはまったくわからなくなった。トヨタのラトバラがオーバーナイトリーダーに立ったものの、このステージで3番手タイムを奪ったタナクがわずか3.8秒差にピタリとつけ、さらにワールドチャンピオンのセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)も16.6秒差という十分逆転可能なタイム差で続いている。

 初日は一番手で雪かきに苦しんだオジエは、この日の朝、SS9でクリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)を抜いて4位に浮上したものの、終始、チームメイトのタナクのペースに追いつくことができなかった。それでも彼はSS14ヴァルゴーセンでタナクとの差をやっと2秒あまり縮めることに成功、リズムを掴んだだけに最終日に恐い存在になることは間違いなさそうだ。

 ミークはオジエに抜かれたあともペースをつかめず、なんとかタイムを縮めるためのトライを続けたものの、15秒差でむかえたSS14の7.7km地点でコースオフ、観客たちに助けられてなんとかコースに復帰したものの、5位から12位まで順位を落としてしまった。

 スーパーSSでトップタイムを奪ったダニエル・ソルド(ヒュンダイi20 クーペWRC)が4位、前日のパンクのあとノーミスで走ることを誓ったクレイグ・ブリーン(シトロエンC3 WRC)はリヤのグリップに苦しみながらも5位、DMACKタイヤのエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)が6位で続いている。

 昨日まで6位につけていたヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20 クーペWRC)にとっては残念なスタートになっている。彼はSS9でパワーステアリングのトラブルに見舞われ、3つのステージで連続してペースダウンを余儀なくされて10位までポジションダウン、午後のループで7位まで挽回している。

 日曜日の最終日はリケナスの伝統のステージが復活する。21.70kmのリケナスのステージを2回走り、金曜日に一度行われたトースビーをふたたび走る、わずか3SS/58.81kmという一日となる。3.8秒差のラトバラが逃げ切ってトヨタに劇的な初勝利をもたらすことができるか、世界中が注目する一日になりそうだ。