WRC2017/05/01

ヌーヴィル逆転勝利、0.7秒差でエヴァンスを下す

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 2017年世界ラリー選手権(WRC)第5戦ラリー・アルゼンチンは、最終ステージでヒュンダイ・モータースポーツのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)がそれまで3日間にわたってラリーをリードしてきたエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)を逆転、わずか0.7秒差で前戦コルシカに続く今季2勝目を飾ることになった。

 最終日に残されたのは3SS/55.28kmのみ。しかし、戦いの舞台となるのは、過去幾多のドラマを生んだエル・コンドル、ミナ・クラベーロ〜ジュリオ・セザレというWRCでも屈指の難関ステージだ。オープニングSSは、巨大な岩の間をすり抜けるようにして下るエル・コンドル。霧や雨になると視界が奪われてひどく困難なステージになることもあるが、今年の空は青く晴れ渡っており、完全なドライコンディションだ。

 11.5秒差の2位でこのステージをスタートしたヌーヴィルは、「かなり滑りやすいコンディションだし、それほど思い切ったプッシュはしなかった」と無理をせずにセーフティに走ったとゴール後に明かすことになった。だが、首位のエヴァンスはブレーキに問題を抱え、その差は9秒へと縮まってしまう。

 ステージ前半で効かなかったブレーキペダルは信じられないことに中盤で元に戻り、エヴァンスのロスは幸運なことにわずか2.5秒にすぎなかった。だが、SS17でエヴァンスのブレーキにふたたび問題が襲い掛かる。ベストタイムを叩きだしたヌーヴィルに続いてエヴァンスは2番手タイムを奪うも、ここで8.4秒を失うことになり、ついにリードはわずか0.6秒となってしまった。

 そして迎えた最終ステージ、先にステージを走り終えたヌーヴィルはそれまでに走ったオット・タナクの記録を3.2秒も上回るベストタイム。だが、その後方から彼を追い掛けたエヴァンスは最初のスプリットでヌーヴィルを3.1秒上回ることになり、この時点で計算上は3.8秒のリードを築き、初勝利に近づくことになった。

 だが、その直後、エヴァンスはキャニオンにかかる鉄橋を渡る際に橋の入り口でワイドになって欄干にリヤをヒット、必死に追い上げるも0.7秒差でヌーヴィルの逆転を許すことになった。

 ゴールしたエヴァンスのマシンに駆け寄って、素晴らしい健闘を讃えたヌーヴィルは、「エルフィンは最初のスプリットでは僕より速く、それを眺めているのは僕の人生で最悪の時間だった。だがセカンドスプリットで僕の勝利が決まった。本当に全力を尽くしたよ」と勝利の喜びを語っている。

 一時は1分以上もリードを広げたエヴァンスは、最後まで死力を尽くしながらも、ワンミスで初勝利が手のひらからこぼれてしまったことを悔やんだ。「真ん中で橋をヒットしたので、恐らくそれが差となった。こんな僅差で負けてしまってがっかりだよ。今は受け止めるのが難しいが、僕たちはもっと強くなって帰って来る」

 いっぽう、ヌーヴィルから15.3秒遅れで最終日をスタートしたタナクは、オープニングSSで最速タイムを奪って14秒差に迫ることになった。「最終日にはすべてが起こりうる」と語った彼だが、最終的には着実な走りで3位表彰台を決めることになった。

 セバスチャン・オジエは二日目に一番手ポジションでの路面掃除から解放されたにもかかわらず、さまざまな不運に見舞われてチームメイトのタナクの逆転を許し、最終的には54.8秒もの遅れた4位でゴールすることになったものの、選手権リーダーをがっちりとキープすることになった。

 ヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)は初日に2位につけながらも、メキシコと同様にエンジンの水温上昇に悩まされることになったが5位でフィニッシュすることになった。

 ヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20クーペWRC)にとってエル・コンドルは一年前に素晴らしい走りで劇的な初優勝を飾った思い出のステージだが、今年はパワーステアリングに問題を抱えてスロー走行、6位が精一杯だった。

 ユホ・ハンニネン(トヨタ・ヤリスWRC)は初日からエンジンパワーが上がらないトラブルに見舞われ、最終日も油温上昇の問題に悩まされたが7位で完走を果たしている。

 WRC次戦は5月18〜21日に行われるラリー・デ・ポルトガルとなる。