ERC2020/08/12

マクレーと同じ誕生日をもつチェコ期待の新星

(c)Eric Cais

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 チェコ生まれのエリック・ツアイスがラリーに惹かれたのは当然のことだ。彼はいつもスピードに夢中で、ダウンヒルのマウンテンバイクレーサーとして競技人生をスタートさせた。しかし、10年にわたって国内ラリーに参戦していた彼の父・ミロスラフ・ツアイスが、コリン・マクレーと同じ誕生日である8月5日に生まれた息子を、成長と共にラリードライバーに仕向けたことはある意味では当然だったかもしれない。

 ツアイスは2018年に19歳のときにラリーデビュー、チェコ選手権のジュニアカテゴリーで6位でシーズンを終えることになった。キャリアのスタートが遅かったにもかかわらず、彼のステアリング操作のうまさとドライビングセンスには最初から定評があったが、昨年のERC3ジュニアカテゴリー(28歳以下のドライバー対象としたR2カーの選手権)で彼が残した成績は、リザルトもさることながら夢にむけて突き進む途切れることのない情熱を証明することになった。

 ツアイスは最初の3つのグラベルラウンドでは、ERC3選手権で最高5位に留まり、ラトビアでは大きなアクシデントに見舞われたが、そこからは4戦連続で表彰台を獲得し、シーズン最終戦のハンガリーでは優勝を飾って、同選手権を2位でフィニッシュ、ステップアップのチャンスをつかむことになった。

 21歳の彼は今年、フォード・フィエスタRally2(R5 Mk2)でERC1ジュニアタイトルの獲得を目指して参戦しており、開幕戦ラリー・ディ・ローマ・カピターレはサスペンションを壊したが、彼にとって大きなチャンスだ。

「僕は自分自身に取り組んでいる」と彼は語った。「去年のR2マシンで走り始めた時はまだ『なんでオンボード映像を見る必要があるんだろう?なんでこれをする必要があるんだろう』という感じだった。しかし今は、自分からオンボードを見たいと感じるし、常に『これをしたい』と分かっている」

「一歩一歩頂上に向かって進んでいると、モチベーションも頂上に向かっていくので、今は非常に強いモチベーションがあるし、このスポーツが大好きだ。でも、ミスをせず、プロになりたいという気持ちもある。だから派手なドリフトはしない。それは僕のスタイルではない。僕は完全にプロフェッショナルでありたい」

 ツアイスは昨年末からすでにR5マシンで4戦に出場している。デビュー戦となった昨年11月末のフランスのラリー・ドゥ・ヴァールは泥まみれのコンディションとなったが、3月に行われたスペインのロルカ・ハイランド・ラリーでは3位に入賞するなど、軽快な走りを見せた。

 しかし、コロナウイルスの影響で世界中のラリーが中止になったため、彼もまたそこからしばらく中断することとなった。しかし、彼はライバルたちがステイホームしている間に、多くのテストをこなすことができたのは幸運だったと語っている。チェコでは4月下旬から5月上旬にかけてロックダウンが緩和されたため、ステアリングを握る絶好の機会を得ている。

 母国のラリー・ボヘミアでもそうそうたるメンバーを相手に7位でフィニッシュ、ツアイスはいいフィーリングをもってERC開幕戦のローマにむかったが、残念ながらサスペンションを壊してリタイアとなっている。彼は今週末のラリー・リエパーヤではミスのない走りを目指すと語っている。

「ローマでは砂利がかきだされたコーナーでミスしてしまった。リエパーヤではミスをしないよう一歩一歩改善していきたい。リエパーヤは昨年もトラブルやミスがあったが、今年は特別なイベントになるはずだ」 

「僕は今シーズンにむけてかなりテストで走り込んできたので準備はできている。正確な走行距離はわからないが、テストを4回行なった。新しいR5を知り、セットアップを探ることが重要だった。最初の2回のテストはこのためのもので、その後はERCのためのセットアップを行ってきたた。今はマシンを良く知れたと思うし、フィーリングも素晴らしい」

 ツアイスは、これから立ち向かうERCのトップクラスでは経験が豊富なドライバーを相手に厳しい洗礼となることを覚悟しながらも、ジュニアタイトルという大きな夢にむけてチャレンジしていきたいと語っている。

「シーズンに向けての準備は十分にできていると思うが、僕はニコライ・グリアジンの走行距離の10%もR5で走ったことがないので、絶対的にステージでのクルマの動きを知る必要がある」と彼は語った。

「ヨーロッパ選手権のドライバーたちと一緒にR5を試してみないと、自分がどのような結果になるかはわからない。R5では何キロも走ることが可能だが、このラリーはまだ2回目なのでペースノートが悪ければ、結果が最悪になることもあり得る」

「タイトルを目指したいので、当然ベストを尽くすつもりだ。いくつかのイベントでは表彰台を競いたいし、そうできたら幸せだ。でも、そうできなくても、僕がR5で競うのは初めてなので問題ない」