―今夜は少し変則的な形式のインタビューとなっています。それぞれに、舞台裏でチームを支えるメンバーを連れてきてもらいました。まずはMスポーツ・フォード・ワールドラリーチームのみなさんです。それぞれ、誰を連れてきたのか、そしてその人物を選んだ理由を教えてください。
グレゴリー・ミュンスター:「こちらはジョージナだ。彼女は基本的にドライバーの面倒を全部見てくれる。ホテルから会場への移動バスの手配もそうだし、キャナルバッグ(機材バッグ)やその他の荷物も全部管理してくれる。僕はいつも荷物を忘れてしまうから、彼女がいてくれて本当に助かっている。彼女は理学療法士でもあって、ステージ中に体調が悪かったり、筋肉を痛めたりしたときにもすぐに対応してくれる」
―なるほど。荷物や何かを忘れても、彼女が回収してくれるから安心というわけですね。
ミュンスター:「そう、その通りだ。彼女は本当に周りの人や物のことをよく気にかけていて、そういうことが得意なんだ。僕はすごく苦手だから、とても有り難い」
―ジョシュ、あなたの隣にいる女性の名前と、彼女を連れてきた理由を教えてください。
ジョシュ・マクアーリン:「こちらはサムだ。彼女はMスポーツのスポーツ・コーディネーターで、基本的に何でもやっていて、コドライバーへのタイムカードの配布からチームメンバーの調整までこなしている。彼女にいくつか質問してみるといいと思う」
―そうしたいのですが、「あまり突っ込むな」と言われているので・・・。
マクアリーン:「彼女はちゃんと話せるよ」
―そうですね。こんなことを言うと職を失いそうですが、本当はジョージナにもいろいろ聞きたかったんです。でも、黙っているように言われたので・・・。サム、あなたはニュージーランドという遠い国から来ましたが、どうやってWRCのスポーツ・コーディネーターになったのですか?
サム:「私はもともと選手で、ずっとラリーに関わってきて、実はここには休暇で来たけれど、そのまま巻き込まれる形で仕事を始めて離れられなくなった」
―なるほど。さっきジョシュがタイムカードの話をしていましたが、サムはその仕事が得意なのですか?
エオイン・トレイシー:「一流だ。サムはラリーの間ずっと僕たちの面倒を見てくれて、競技に関するどんな小さな疑問にも答えてくれるし、タイムカードも全部管理してくれる。すごく頼りになる存在だ」
―彼女がいなければ困る?
トレイシー:「絶対に困る」
―素晴らしいですね。マルコムに伝えて、ぜひ給料アップしてもらってくださいね。次にマルティンシュ、あなたが連れてきた人物は何度も見たことがあります。彼を選んだ理由を教えてください。
マルティンシュ・セスクス:「彼、グリムショーは、僕がシャシーの魔術師とかマジシャンと呼んでいる人だ」
―それはどういう意味ですか?
セスクス:「彼は僕たちのマシンエンジニアで、ラリー中、僕たちが最も頻繁に会話し、最も多く意見を交わす相手だ」
―ステージエンドで「フィーリングがない、セットアップを変えたい」とあなたが言うとき、電話の向こうで対応しているのが彼というわけですね?
セスクス:「その通りだ。その時には彼はすでにステージはどうだったか、セットアップはどうだったか、タイヤの空気圧をチェックするのを忘れるな、というメッセージを送ってきているはずだ」
―大変な仕事ですね。目を合わせてくれませんから、どうやらこの場はあまり楽しんでいないようですね。
セスクス:「でも、チームの中でこうしてスポットライトをあまり浴びない場所で活躍している人たちの存在をきちんと紹介していくことは、とても大事だと思う」
―素晴らしい考えですね。私もこの新しい取り組みは、とてもいい企画だと思います。
―オイット、あなたがチームから連れてきた特別な人について教えてください。私は彼のことを長い間知っていますが、彼がチームでどんな役割を担っているのか教えてもらえますか?
オイット・タナク:「ショーンは、僕の父がまだ僕のことなんて考えもしなかったような時代から、すでにラリーの世界にいた人物だ。だから、あなたの言う通り、彼は本当に長い歴史を持っている。ショーンはいつも僕たちの誰よりも先に現地入りして、レッキの間もずっと僕たちの面倒を見てくれて、ラリー中はタイヤの管理をし、終わった後は次の目的地に向かうために荷物のパッキングまで全部やってくれる。本当にたくさんの時間と労力を注いでくれている。彼自身、ラリーの裏方仕事に深く関わってきた。だからこそ、彼にはインタビューするべきではないと思う。彼の言葉はかなり率直だからね(笑)。でも、本当に素晴らしい人物だ」
―そうですね、彼は素晴らしい人です。でも、今はFIAから罰金が科されるかもしれないから、インタビューはやめておきましょう。
タナク:「そうなんだよ。でも、彼は僕の大切なクルーの一人だ」
―ヌーヴィル、あなたが選んだ人を紹介してください。
ティエリー・ヌーヴィル:「彼の名前はハンネスだ。エストニア出身で、僕たちの『天気の神さま』なんだ。ただ、今週末は雲ひとつない晴天だから、彼は仕事がなくて困ってる(笑)。だから彼をここに連れてきたんだ。誰か、彼を週末だけ雇ってくれる人がいればいいんだけど(笑)。冗談はさておき、ハンネスは本当に僕たちの『天気の神さま』だ。彼はイベント前にこのあと天気がどうなるか必要な情報を提供してくれるし、ラリー中も毎日の最新情報や各ステージの天候情報を全部伝えてくれる。たとえ今週末のように雨が降らなくても、気温や地面の温度、日差しの角度、太陽の位置、逆光になる方向、ダストの可能性、風の強さや風向き、そういった細かい情報まで全部把握している。彼はまさにWRCの天気クルーのような存在だ。彼が数年前にWRCに加わってから、他のチームもハンネスに対抗するために新しい人材を確保しなくてはならなくなった。それくらい彼はレベルが高い」
―すごい経歴ですね。
ヌーヴィル:「本当のことだ」
―あなたがステージエンドのインタビューで、天気の情報が外れていたと不満を言うときは、それはハンネスの責任ということになりますか?
ヌーヴィル:「間違えることは常に誰にでもある。もし僕がミスしたら、それは僕の責任だ。でも勝てなかったのなら、同じように彼にも責任があるはずだ」
―フールモー、あなたの連れてきたマルティナも、チームに長く在籍しています。彼女を選んだ理由を教えてください。
アドリアン・フールモー:「ここはイタリアだからね。僕たちフランス人がフランス料理にこだわるのと同じように、イタリア人は食にうるさいから、マルティナを選んだんだ。彼女は僕たちの食事全般を管理してくれている。正直、僕たちドライバーは少し面倒くさい存在で、ある日はこれが食べたい、翌日は別のものがいい、なんてことを言い出す。さらに彼女はスケジュールの調整も必要だ。僕たちはサービスパークに戻るとすぐに『今すぐ食べたい!』ってなるけど、いつ戻ってくるかわからないから、彼女は本当に大変だ。それでも、彼女のおかげで、僕たちにはいつも十分な食事が用意されていて、週末を通して素晴らしい食事でエネルギーを保つことができている。本当に感謝しているよ。ありがとう、マルティナ」
―次にトヨタGAZOOレーシング・ワールドラリーチームのみなさんに登壇いただきましょう。さて、みなさんにとっての特別な人、ここに連れてきてくださった方たちがどなたなのか、それぞれに紹介してもらいましょう。コドライバーの皆さんにも当てていきたいと思います。まずはタカ、私は知っていますが、ぜひファンの皆さんにこの方のこと紹介してください、どなたなのか、なぜ彼女をここに連れてきたのかを。
勝田貴元:「彼女はうちのチームのメンバーで・・・」
―まずは名前を!
「そうだったね。ごめんなさい、彼女はキャトゥリン(・グラウディン)、このチームをいろいろ支えてくれている。チームの初期からお世話になってます。2017年からずっとね。そして僕のソーシャル・メディアの管理も手伝ってくれている。ソーシャル・メディアや面白いビデオをファンの皆さんにも見てもらっていると思うけど、彼女には本当にお世話になっているので、ぜひ皆さんに知ってもらいたいと思って紹介したいと思ったんだ!」
―では、カッレ、あなたが連れてきた人について、少し教えてもらえますか?そしてその理由もお願いします。
カッレ・ロヴァンペラ:「彼はヴィル(・カリニエミ)、チームのタイヤ・マネジャーで、あと数人とともに僕たちのタイヤに関する作業を担ってくれているんだ。それこそ本当に重要な役割で、彼は僕たちのクルマが適切なタイアを装着していることを確認し、使用後もしっかりとそれをチェックしている。それをまた使う必要があるなら、良いコンディションに保てるようにして、どのタイヤがまた使用可能なのかどうかなどの管理をすべて行なっている」
―ということは、あなたが少し手こずっているあのハードタイヤにも彼が特別なマッサージを行なっているということですかね?
ロヴァンペラ:「まあ、彼にちょっとは追加料金でタイヤに適切な処置をしてもらうことにしたよ」(笑)
―ヨンネが何か言いたいことがあるみたいですね。
ヨンネ・ハルットゥネン:「この人はラップランド出身で、僕たちがフィンランドのラップランドに行く時はいつも彼がボディガードになってくれるんだ」
―サンタクロースでもあるのでは?
ハルットゥネン:「いや、ボディガードのみだ」
―ではコドライバーの方から紹介してもらいましょうか。スコット、コドライバーとして、ここで注目を浴びたいと思っていますよね?エルフィンがドライバー、あなたがコドライバーということで、どなたを連れてこられたのでしょうか?
スコット・マーティン:「実は、僕のドライバー、エルフィン・エヴァンスを連れてきたんだ、って言おうと思っていたのに、あなたに先に言われてしまったよ(笑)いやいや、そうじゃなくて、彼が、ルイ・ソアレスだ。ルイのことはみんな良く知っているよね、僕よりも全然有名だと思う。彼は僕たちのエンジニア、カーエンジニアだ。基本的に、そう、とにかくたくさんの仕事を、本当に多くの作業をいつもやってくれているんだ。エンジニアやメカニックたちが裏方でどれだけ頑張ってくれているか、信じれないくらい、夜遅く、そして早朝も。そして戦略を策定したり、そういったことすべてを含めて、本当にチームがどれだけ大きな仕事をしてくれているかということを考えると、本当にすごいと思う。ルイはいちばん最初から僕たちとともに仕事をしてくれていると思う、2020年からだったかな?ずっと一緒にやってきた。本当に彼がいてくれて本当に良かったし、日曜日の夜にもいてくれると最高だね」
―セブ、あなたが連れてきた人物は、Mスポーツ時代から一緒に仕事をされてきたこの方ですね。このスポーツの『レジェンド』といえる彼のこと、よく教えてください。
セバスチャン・オジエ:「実際にあなたがそう言っているのは興味深い、だって彼はミック(・モウンダー)だよ。彼とはもう長年一緒に仕事してきたけど、いまだにこの人が何をしている人なのかを把握できていないんだ、なんてね(笑)」
―彼はまだ、『シェフのミック』って呼ばれているのですか?
オジエ:「いや、それはない。まあ確かに、最初はシェフだったんだけどね、Mスポーツ時代には。当時のMスポーツでは実際、調理以外にもいろんなことをやっていたよ、確かにマルコムは、スタッフにいろいろな仕事をお願いしていたからね。でも今の僕たちにとっては、基本的にシッターさんだね。これがいちばんしっくりくる表現だと思う。このクレイジーなクルーたち全員の面倒を見る子守役というのは、簡単な仕事ではないはずだ。いつも後ろで僕たちを気にかけ、面倒を見てくれる存在、僕たちに必要なものをすべて揃え、どこに行くにもしっかりと時間厳守で到着できるようにしてくれる。すべて彼がいてくれるおかげでうまくいっているんだ、数年前、マルコムから奪ってしまった。こんなに素晴らしいところは自分が次にいくチームにも欲しかったから、彼を連れてきたんだ」
―では、サミ、あなたはどなたを連れてきましたか?
サミ・パヤリ:「ここにいる彼はリク(・ハマライネン)、僕たちのクルマを担当してくれているナンバー1メカニックで、マルコと同様、一緒に仕事をするようになったのは比較的最近なんだ。いずれにしても僕たちは皆、若くて、容姿端麗、才能もある。(笑)まだそんなに時間は経っていないけど、僕たちには合っている。彼は基本的には、物理的に、クルマが正常に走行し、すべての車輪が回転していることを確実にする役割を負っている。かなり大きな部分が彼に掛かっているからね。素晴らしい仕事をしてくれているんだ」