WRC2023/04/24

ラリー後会見、「クレイグが一緒にいてくれた」

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クロアチア・ラリーのラリー後の記者会見が行われ、1年半ぶりに優勝を飾ったエルフィン・エヴァンスは、ゴールした瞬間に勝利への喜びよりも先に友人でもあったクレイグ・ブリーンを失った悲しみがこみあげてきたことを認め、どんな感情でいたらいいのかわからなかったと明かした。また彼のコドライバーのスコット・マーティンは、かつてブリーンのコドライバーとして悲願だった勝利をともに夢見た時代を共有しており、今週末に彼を偲ぶのにふさわしい結果を達成できたことを喜んだ。(以下、会見全文)

―クロアチアでの優勝、おめでとうございます!この1週間は非常に感情の忙しい1週間でした。ラリーを終えて今の気持ちはいかがですか?

エルフィン・エヴァンス:「複雑だね。ラリーの間は集中していたが、その集中を終えて、現実に戻ったような感じだ。正直なところ、どんな感情でいたらいいのかわからない。スポーツの面では、もちろんほっとした気持ちもある。何度か惜しいところまでいっては実現できずにいたが、久しぶりの勝利だ。だから、その面では間違いなく良かった。しかし、その反面、先週のニュースが思い出され、現実に引き戻されたことも確かだ」

―それは当然のことです。もうひとつ良かった点は、次の勝利はいつかと記者に聞かれることがなくなったことですね。今週末のあなたのペースと、その成果に対する満足度について教えてください。

エヴァンス:「まあまあ満足している。正直なところ、ここの道路で5番手出走からスタートというのは少し難しい条件だったと思う。金曜日の最初のステージのタイムを見て、路面の汚れの多さから難しい仕事になることは明らかだったが、ありがたいことに他のマシンがかなり早い段階でトラブルに見舞われたので、優勝争いをするチャンスが得られた。残念ながら土曜の朝にティエリー(・ヌーヴィル)がリタイアしてしまい、そのあとは僕自身、満足できるペースとは言い難く、もっと速く走るべきだった場所もあったと思うが、トラブルを回避し、マシンをコース上にとどめ、パンクを可能な限り避けることもラリーの一部だと思う。もちろん運も必要だが、この週末は運が味方につき、うまくいった」

―ここ数年、パワーステージはトリッキーでしたが、今回はドライなコンディションであるにもかかわらず、さらにトリッキーでした。

エヴァンス:「走る前に少し話し合ったんだ。もちろん目標は常にポイントを獲得することだが、しばらく優勝していなかったので当然ながら優勝したかったし、ポイントをいくつか追加するためにあのようなステージですべてを賭ける覚悟はなかったので、ただ通過することにした。すべてを賭けるか、(ポイントを)気にせず安全にドライブするかどちらかのステージで、僕たちは最終的に後者を選んだ」

―チャンピオンシップはすべてが変化していますが、信じられないほどの接戦です。ファンにとってワクワクする展開で素晴らしいことですが、次のラリー・デ・ポルトガルでは、あなたが一番手出走になるのでしょうか?

エヴァンス:「(チャンピオンシップの)首位から5位までのポイントは非常に接近しているので、数ポイントのアドバンテージを得るために、藁にもすがる思いで走った。でも結局のところ、7つのグラベルラリーを走ることになるので、まだ今後のラリーで順位が何度か入れ替わることは間違いない。予想通りドライであれば、ポルトガルを早い出走順で走るのは難しいことだろうが、いつも通りベストを尽くすつもりだ」

―スコット、素晴らしい勝利でしたが、それと同時に、今週末は親友であり、数年間コックピットに一緒に座っていた人物を偲ぶことになります。ラリーを終えて、どのような気持ちですか?

スコット・マーティン:「すべてを言葉にまとめるのは難しく、最後はとても感情的になったが、信じられない気持ちだ。僕は幸運にもクレイグと特別な年月を共有することができた。僕たちはWRCでの彼の初表彰台と僕の初表彰台を共にした。今週末に優勝という結果を届けられたことは、(彼を偲ぶのに)ふさわしいと思う。彼が今週末、僕たちと一緒にいてくれたことは間違いない。彼は僕たちみんなと一緒にいてくれたと思うが、もしかしたら僕のことを少し多く応援してくれたのだろう。(ブリーンの死の)すべてを昇華するには、かなりの歳月、数週間、いや、数カ月はかかると思う。この週末は厳しいものだったが、サービスパーク全体を特に誇りに思う。みんなよく団結し、お互いを支え合っていた。この週末が少し落ち着いても、まだまだ難しい日々が続くだろうから、これからもそうしていかなければならない。実は、パワーステージに入るまで、ここで勝てばチャンピオンシップのトップに立てるという計算をしていなかったので、いかにチャンピオンシップが団子状態かということがわかる。エルフィンが言ったように、これから7つのグラベルラリーがあるので、まだまだどう転ぶかわからない。ポイントを獲得して、ずっとタイトル争いを続けられるようにしたい」

―トップ5人のドライバーの差が11ポイントというのは何年もなかったことです。この週末、皆が集中力を保ち、やるべき仕事をこなしたことは本当に尊敬に値しますが、チャンピオンシップが僅差であることは前進するためのモチベーションの一つとなっていますか。

マーティン:「もちろんだ。皆が素晴らしい仕事を成し遂げたのを見ることができて、本当に良かった。特にヒョンデは、チーム全員をまとめて今週ここに来ることは非常に困難だったに違いないので、よくやったと思う。クレイグを偲ぶ素敵な演出がいくつもあり、それを一緒に行うことができて本当によかった。僕たちが戦いに戻れたこともうれしい。2020年と2021年は、最後までタイトルを争っていたんだ。昨年は、何らかの理由でポイントを逃し、シーズン序盤から劣勢に立たされ、なかなか立ち直ることができなかった。シーズンのスタートとしては良い形なので、これからもプッシュしていくつもりだ」

―オイット、2位を獲得し、チャンピオンシップのための良いポイントを手にしました。スコットにも言ったのですが、(チャンピオンシップが)これほど接近しているのは素晴らしいことです。ターマックでのパフォーマンスには満足していますか、それとも、エルフィンが使った言葉だと思いますが、「まあまあ満足」ですか?

オイット・タナク:「初日に改善が見られたことは間違いない。昨日は、もう少しで届いて競えそうだと思えるようなステージもあったが、いつも何かが原因で、また落ちてしまう。サービスでは夜遅くまで作業していたが、いくつか期待できるものもあった。しかし、週末を通して安定した信頼性を確保するために、すべてのパッケージをまとめるために多くの作業が必要なのは確かだ。(Mスポーツの本拠地である)ドヴェンバイにいるみんなも、ここのエンジニアのコンテナにいるみんなも、間違いなくそれをやり遂げる意欲を持っていると思うので、少なくともやってみるつもりだ」

―今日のどの時点で、彼の25秒のリードに追いつくことができないと思いましたか。それとも、何か起こるかもしれないと考えていましたか?

タナク:「今日も良いフィーリングを持つことができず、まだ少し苦戦していたので、大きな波乱なく乗り切ることに集中し、パフォーマンスは重要視していなかった」

―次のポルトガルは、長丁場で、ドライバーにとって大きなチャレンジとなるイベントです。準備はどの程度できていますか?

タナク:「ポルトガルは楽しいイベントで、グリップレベルが高く、高速だ。僕たちに何ができるか楽しみだ。グラベルでの走りをもう少し改善する必要があるが、来週はテストを行う予定なので、さらに前進できることを願っている」

―EP、総合3位おめでとうございます、今週末は表彰台に上がることを強く望んでいたようですが、それを実現することができました。最後にどんな気持ちですか?

エサペッカ・ラッピ:「ホッとした気持ち、それとチームとしての誇りという感じかな。少なくとも僕のモータースポーツのキャリアの中では、最もタフな1週間だったと思うし、まずはここに来ることができて、僕個人としてだけでなく、チームのメンバー全員に感謝したい。僕たちが走れるようにしてくれた、彼らの多大な努力の賜物だ。この週末、そして一週間は、僕たち全員にとって山あり谷ありの日々だった。この結果は僕たちにとっては素晴らしいものだ」

―金曜日の最初のステージはいつも難しいものになりますが、それは全体的にそのようなものになりました。しかし、一日を通してあなたのペースは上がり、そして午後には素晴らしいタイムを記録し、満面の笑みで表彰台の一角を争っていました。でも土曜日になると悪い方向に進んでしまった、何が変わったのですか?

ラッピ:「正直言って分からないよ。ちょっと調べてみる必要があるようだ。土曜日の午後には確実にまたペースを掴むことができていたから、何が悪かったのか、それとも僕自身のメンタルの問題だったのか、どうか分からないけど、なにか見つかることがあるかどうか。結局、いくつかいいタイムもあれば良くないタイムもあるが、それでもラリーを通してかなり安定していたし、トップのペースに到達することはなかったけど、最後には功を奏したので、いい戦略だったと思う」

―クロアチアは本当に複雑なイベントで、見ている人たちは本当にそれを理解している、どんな天気のコンディションであっても、ステージではトリッキーなことは変わりないということでしょうか?

ラッピ:「まずは第一に、正しいタイヤ選択をするのが難しい、たとえドライだったとしても、ソフトよりもハードの方がいいのか、乾いて日差しがカンカンでも、はっきりと分からない。ターマックは非常に滑らかで、汚れが多くなるとトリッキーになる。そして確実に湿った路面、ウェットな状態のインカットでさらにトリッキーになって、コースにとどまるようにしないとなんだけど、そこがまた最もトリッキーな部分の一つだ、少なくとも僕にとってはね。トリッキー、トリッキーだ」

―ヤリ-マティ、あなたの話に移りたいと思いますが、この一週間はここクロアチアの現場にいる人々皆にとって非常にエモーショナルな一週間だったという話を先ほどしました。トヨタは勝利をおさめ、それをずっと待ち望んでいたエルフィンの姿が見られました。あなたは先日のミート・ザ・クルーズで、エルフィンの顔に笑顔が戻り、よりリラックスしているように感じたとおっしゃっていましたが、今週末はこれまでと違ったエルフィン・エヴァンスを見ることができました?

ヤリ-マティ・ラトバラ:「そうだね、それは感じたよ。すべてのドライバーにとって、こうした状況の中でイベントをスタートするというのは非常につらいものだった、そして金曜日の夜にエルフィンの顔に笑顔が戻っているのが見えて、私はその瞬間から、彼が自信を取り戻し、それがしっかりとそこにあることを確信したんだ。土曜日のエルフィンは、ティエリーにプレッシャーを与えるような強さがあった。もちろん、彼がコースから外れることは絶対にあってほしくない。でもラリーだからそういうこともあるし、彼はトップに立っていた。オイットからはいい感じにプレッシャーを受けていたが、土曜日の最後にはエルフィンがいいステージタイムを出すことができていたので、明らかに違う彼を見ることができたし、私自身、長い間、イベントで優勝していないと、そのことを少し考え込んでしまい、自分でプレッシャーをかけてしまうことがあった。そしてそういうプレッシャー、その重荷がエルフィンの肩から取り除かれたということ、それは残りの選手権へのとても強力な、メッセージとなる」

―そしてもう一つ、選手権からの強力なメッセージは、すべてのドライバーの間が非常に接近しているということ、誰か一人がトップを独走していないということですか?

ラトバラ:「そう、その通りだ。ここで計算していたんだ。オイットは私がいろいろ計算するための専用ウェブサイトを使っているのを見ていたよ。2001年には5人のドライバーが8ポイント圏内で選手権を終えていた、もう20年以上前なる」

―それはすごい統計ですね、となるとオールライブで統計の特別解説者としてあなたを起用しないとですね。

ラトバラ:「ありがとう、それはとても光栄に思うよ!」

―ではヤリ-マティ、次のポルトガルのグラベルですが、イベントとしては大きなチャレンジであり、また誰もが多くの経験を積んでいるところで、ここ何年、何人もの勝者がいます。

ラトバラ:「オイットが言っているように良いイベントで、楽しいイベント、ドライバーとして私もいつも楽しんでいた。攻めていけるイベントだが、また一方でタイヤが重要となり、それによって違ってくるので、いかにタイヤを温存できるか、また岩にぶつかったりしたらどうなるか、という要素もある。それでもほとんどのドライバーは楽しんでいると思う。あまり暑くならないことを願うよ、その方がより楽しめるからね。正直に、自信を持って臨むことができると感じているよ。ラリー・メキシコに向けてクルマを改良して、それが功を奏して、今はこうしたグラベルラリーで、我々のクルマは良くなっていると思う」