WRC2025/10/19

ロヴァンペラがセントラル・ヨーロッパを独走

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 2025年世界ラリー選手権(WRC)第12戦セントラル・ヨーロッパ・ラリーは、トップ争いを演じていたセバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリスRally1)がクラッシュでリタイアするという波乱のなか、カッレ・ロヴァンペラ(トヨタGRヤリスRally1)がトップをキープしており、2位にはオイット・タナク(ヒョンデi20 N Rally1)が浮上したものの、トップからは36.3秒遅れだ。

 セントラル・ヨーロッパ・ラリーの土曜日もドイツとチェコを舞台とした6SS/103.64kmの一日だ。ドイツ・レーレンバッハ近郊のフライウング・グラフェナウ地区(FRG)に新設されるオープニングステージのメイド・インFRG(14.30km)のあと、チェコに向かいケプリー(21.95km)と歴史的なボヘミアの街、クラトヴィ(15.57km)のステージを走る。クラトヴィのリグループとタイヤフィッティングゾーンのあと、チェコの2ステージ、ケプリーとクラトヴィを走り、ドイツに戻ってメイド・インFRGの2回目の走行で締めくくる。

 チェコの西ボヘミアのステージでは早朝から雨が降っているとの情報がもたらされており、ほとんどのドライバーがソフトタイヤをメインにウェットタイヤ2本をスペアに選んでコースへと向かっているが、この日のオープニングステージのSS9メイド・インFRGは完全なドライコンディションだ。

 いきなり目が覚めるような素晴らしい速さをみせてスタートしたのはロヴァンペラだ。金曜日を終えて、首位のオジエからわずか0.6秒差につけていた彼は、かき出された泥や砂で汚れたコンディションとなったこのステージでベストタイムを奪い、0.7秒差ながらオジエを逆転して首位に立つことになった。

「悪くないね。今日はいつもと違う展開だ。こんなクリアなステージでも、後方からのスタートだし、路面コンディションも悪く、トリッキーな場所も多い。(暫定トップ?)こういうスタートならいいけど、長い一日になるね」とロヴァンペラは語った。

 一方、オジエはロヴァンペラより1.3秒遅れの3番手タイム。「あまりいい感じではなかった。いくつかのコーナーは思っていたより汚れていた。タイム差は1.3秒しかなかったし、まだかなり接近している」とオジエは語った。選手権リーダーの彼はロヴァンペラに現時点では21ポイントの差をつけているため、無理してリスクを追う必要はない。

 エルフィン・エヴァンス(トヨタGRヤリスRally1)が3位をキープしているが、タナクが2番手タイムを奪って1秒差まで迫ってきた。「クリーンなステージだったと思う。今日はたぶんここが一番走りやすい区間だね。(次のステージは雨?)そうだねどうなるのか想像がつくよ」
 
 タナクから5.6秒差の5位には勝田貴元(トヨタGRヤリスRally1)が続いており、彼も表彰台圏内まで6.6秒差の好ポジションにつけている。

 SS10ケプリーは雨は上がっているもののフルウェットのコンディションとなった。路面はつぎはぎだらけのバンピーなターマックであり、森のなかのセクションは濡れた落ち葉に覆われてグリップを惑わせる。
 
 それまでチームメイトのロヴァンペラとスリリングな首位争いを繰り広げていたオジエが中間スプリットではベストタイムを奪ったロヴァンペラのタイムを0.4秒上回っていたが、17.8km地点の右コーナーでアンダーステアを出してしまい、そのまま正面から立木に激突してしまう。路面から滑り落ちたマシンは左フロントタイヤがちぎれて吹き飛んでおり、彼はリタイアとなってしまった。

 オジエはクラッシュした直後、「そんなのありえない!」と絶叫していたが、なにが信じられない出来事だったのか、その後、彼は説明を加えている。「不運なことにコーナー手前で突然、左のフロントタイヤがパンクしてしまい、コースオフを避けることができなかったんだ」。事実、吹き飛んだ左フロントのウェットタイヤは無惨に裂けていたことが判明している。これまでもタイヤが鍵になってきたシーズンだが、それに起因するアクシデントはオジエのチャンピオンシップに大打撃を与えるとともにタイトル争いの様相を一変させることになりそうだ。

 首位のロヴァンペラは連続してベストタイムを奪い、大きなリードを手にすることになった。38.4秒の2位にはエヴァンス、タナクが3.3秒差の3位、さらに15.4秒差で勝田が4位で続いている。

 
 SS11クラトヴィは雲間から青空が覗いており、ほとんど路面は濡れておらずドライコンディションだ。

 昨年もこのステージでベストタイムを奪っている勝田がこの週末初のベストタイムを刻んで、朝のループを締めくくることになった。「(最速タイム?)それは良かった。かなりバンピーだし、決して簡単なステージではないけど、必要ならもう少しプッシュできるかもしれない。ただオイットやエルフィンも前のステージでいい走りをしているし、様子を見ながら2回目ループに向けて自分の良いペースを掴んでいきたいと思う」と勝田はやっと笑顔をみせた。

 朝からペースを上げてきたタナクが2番手タイムを奪い、2位のエヴァンスに1.3秒差に迫っている。旧スペックのi20 N Rally1は誤った選択だったのではないかとの憶測も囁かれてきたが、タナクは金曜日から調整を続けたことでかなり乗りやすくなってきたと自信をみせた。「少なくともチームメイトと比べると、マシンの調子はかなり良くなってきていて、より自信を持って走れるようになった。チームメイトは少し苦戦しているようだが、僕はより安定したドライビングができた」とタナクは語った。

 エヴァンスはタイムを落とした原因がチームメイトのリタイアが影響しているのかと聞かれたものの、何も変わりないと静かに答えている。「何も変わらないよ。このステージはあまり良くなかっただけだ。いくつかの場所でタイヤを十分にプッシュできず、少し慎重になりすぎたのかもしれないが、ここではプッシュしすぎてミスをするのも非常に簡単だ。楽な朝ではなかったよ」
 
 ロヴァンペラは2.6秒遅れの3番手タイム、エヴァンスとの差をわずかながら広げて39.2秒として朝のループを終えている。「本当にセブには残念だった。僕たちはとにかく集中を保つようにしている。ここは無茶なリスクを取る必要はない、クリーンな時はドライビングを楽しむだけだ」
 
 大きなリードを築いているため、このあとの午後のループでも大きなリスクを負う必要はない。しかし、チェコのターマックステージは予期せぬコンディションの変化が予想されるため、彼は油断できないとコメントを付け加えた。

「朝のドイツのステージは非常にシンプルで、コンディションも良好だった。しかし、チェコの最初のステージは非常に難しいコンディションになった。最後尾からスタートしたため、落ち葉や泥が路面に巻き込まれてしまった」

「それに、グラベルクルーのノートもけっして正確ではない。彼らは泥がどこから来るのかを推測することしかできないが、それは常に推測であり、予想は非常に難しい。彼ら(ユーソ・ノルドグレンとヤンネ・フェルム)が良いノートを書いてくれることを願っているよ」とロヴァンペラは説明した。

 この日もミッドデイサービスは設けられず、クラトヴィのリグループとタイヤ交換のあと、ラリーカーはケプリーの2回目の走行へと向かう。さきほどオジエがクラッシュしてリタイアとなったこのステージは森のなかにはまだ湿ったところがあるものの、オープンなエリアではほぼドライコンディションとなっている。
 
 ほぼ全てのドライバーはソフトタイヤ5本を選んでこのループをスタートしているが、それでも明日の最終日に状態のいいソフトタイヤを残すための戦いは始まっており、ロヴァンペラとエヴァンスはこのループでは新品ソフトタイヤは2本のみ、あとの3本はユーズドのソフトタイヤだ。
 
 タナクがベストタイム、エヴァンスを1.9秒差で抜いて2位へとポジションを上げている。「頑張ったけれどあまり自信がなかったので、どうなるかな」とタナクはやっと笑顔をみせることになった。それでも彼は「トランスミッションから変な音がしている」と懸念をみせている。
 
 勝田は朝のクラトヴィ・ステージのベストタイムのあとリズムも良く、いい走りで4位をキープしているが、クラトヴィの2回目の走行となるSS13でもふたたびベストタイムを刻み、3位のエヴァンスに18.5秒差に迫っている。「素晴らしいタイムですね」の問いかけに、勝田は「このステージ? 非常にバンピーで、ずっと頭が揺れていて何も考えられなかったから、それが理由かもしれない。僕はもっとヘッドバンキングしたほうがいいのかもしれないね!」と、明るく笑った。

 ロヴァンペラは、前ステージではタナクの最速タイムからわずか0.8秒遅れのタイムで続き、「ペースを落とす理由はない。今はすべてが順調だ。このコンディションは、僕たちが全力でプッシュするのに役立つ」と語っていたが、このステージではダーティなセクションではリスクを避けるクリーンな走りで勝田から3秒遅れの6番手タイム、それでもリードは38.2秒という大きなものだ。

 2位のタナクが2番手タイム、エヴァンスとの差をまたもじわりと広げて3.3秒差としている。エヴァンスは前ステージのあとでセットアップを微修正したが、この試みは失敗だったと認めた。「マシンにいくつか変更を加えようとしたが、間違った方向に進んでしまった。以前のセットアップに戻らなければならない」とエヴァンスは語っている。

 チェコのステージを終えて、ラリーカーはドイツに戻ってメイド・インFRGを最後に走る。すでに日が沈み、全車がナイトポッドランプを装着してステージに臨んでいる。前夜のナイトステージでアンチカットの反射板がナイトポッドの強力なランプを反射して危険だと訴えるドライバーが続出したことから、主催者はアンチカットの向きを変えて対応したが、完璧な解決には至らず、突然反射したり、どこにアンチカットがあるのか見えにくいところもあった。
 
 ロヴァンペラは、このトリッキーなステージではわずかにアクセルを緩めて4.4秒遅れのタイムでフィニッシュしたが、2位のタナクに36.3秒差を築いてラリーをリードしている。

「今日は良い一日だった。午後はフィーリングの面で少し難しかった。このステージもコンディションは良く、プッシュしたい気持ちもあったけれど、暗くなったこともあり、簡単ではなかった。明日は接戦になるだろう」とロヴァンペラはコメント、どこまでスーパーサンデーを狙いに行くか、明日の戦略が気になるところだ。

 タナクはこのステージでもエヴァンスを上回り、8.4秒差をつけて明日の最終日に向かう。「今日の結果には満足している。昨日よりも良い結果になった。全力を尽くしたし、かなり満足している。明日も同じペースを維持できるように努力する。これ以上何もすることはないよ」とタナクは総括した。

 エヴァンスは多くのポイントがかかった最終日に、タナクよりフロントでスタートするためにペースを落としたようにも見えるが、彼はそのような戦略はなかったと語った。「もちろん、わざとスローダウンしたわけではない。明日ももちろんトライするが、今週末は何かが欠けていた。簡単ではなかった」とエヴァンスは答えた。

 オジエの予想外のリタイアでドライバーズ選手権のタイトル争いは、より接戦になりそうだ。土曜日までの順位での暫定ポイントでは、エヴァンスが237ポイントで新しいリーダーとなり、ロヴァンペラが9ポイント差、オジエが13ポイント差、タナクが39ポイント差となる計算だ。トヨタは日が沈む前にクラッシュしたオジエのマシンの修理を完全に終えており、8度のチャンピオンは最終日に復帰して最大の10ポイントを狙って来るだろう。
 
 土曜日には2つのベストタイムを記録した勝田はエヴァンスから13.6秒遅れの4位につけており、表彰台まであと一歩のところに近づいている。「長い一日がようやく終わったけれど、明日もまた長い一日になりそうだ。プッシュを続けるよ」

 フールモーは勝田とエヴァンスを追撃して表彰台圏内でのフィニッシュを目指したいと語って土曜日をスタートしたものの、トヨタ勢に比べてペースは上がらず、朝の時点で勝田とは10秒差だったが、一日を終えて39.5秒へと拡大してしまった。

 サミ・パヤリは午後のループでただ一人だけソフト4本とウェットを2本選んだが、彼に期待に反して森のなかの路面もそれほどマディではなくなっており、13.9秒差だったフールモーとの差は21.2秒へと広がってしまった。
 
 前日のパンクで大きく遅れたティエリー・ヌーヴィル(ヒョンデi20 N Rally1)がこのナイトステージではベストタイムを奪って7位で続いている。ジョシュ・マクアリーン(フォード・プーマRally1)はウェット路面となったケプリー・ステージの1回目の走行となるSS11でストローベイルにヒットして位置を大きく動かしたとして5秒のペナルティを科されている。これはSS1でエヴァンスがペナルティを科されたのと同じ状況だ。彼は暗闇の最終ステージでもジャンクションでワイドになり左リヤをヒットしてしまったが、学び続けるという姿勢を守って8位で続いている。

 セントラル・ヨーロッパ・ラリーはドラマチックな土曜日を終え、残されたのは最終日のみとなった。最初のステージとして設定される、「国境を越えて」と名付けられたおなじみのビヨンド・ボーダーズ・ステージは現地時間8時25分、日本時間15時25分のスタートが予定されている。